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飯田りえ

女子高生が起業!自分たちの課題を解決する 「放課後マネキン」ってどんなサービス?

  • 飯田りえ

2020.03.08

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女子高生起業家。

そう聞いて、まず脳裏に浮かんだのは「大人がちゃんと付いているんでしょう…」と。しかし取材してみると、正真正銘、女子高生の、女子高生による、女子中高生のためのサービスでした。(ひねくれた大人で…本当にごめんなさい!)

昨年9月に登記した株式会社Nadieは、高校2年生の3人で立ち上げた会社で、憧れの洋服をレンタルして遊びに行ける「放課後マネキン」というサービスを展開しています。制服のままだと街で遊べなかったり、新しいスタイルに挑戦したくてもお小遣いでは買えなかったり、そして何よりも、制服によって”自己表現”ができなかったり…。そんな、自分たち女子中高生の課題解決に応えつつ、実際に自分たちが”歩く広告塔”となり、街やSNSでファッションや個性を発信することでブランド側のニーズにも応えようと、ビジネスを立ち上げました。取り扱っているブランドも女子中高生の実際の声を拾い、MERONG SHOPをはじめ10代から絶大な人気を誇るブランドが中心。この2月9日〜29日までの間、実際に原宿のCOLORS LOUNGEでポップアップショップを展開していました。

それにしても、どうして高2で起業をしようと思ったのでしょう? 実際はどうやって運営しているの?今後の進路はどうするの??あと、どうしたら主体的に課題解決をできるような子に育つの…?など聞きたいことがたくさん。古城栞さん、宇賀神桃子さん、白井花さんの3人にお話を伺ってまいりました。

起業のきっかけは…高校生向けの探求型学習講座

古城栞さん(代表取締役)渋谷教育学園渋谷高校 ダンス部 2年

__最初に3人で起業に至ったきっかけを教えてください。

古城:高1の時に、「ELCAS(エルキャス)」という京都大学が実施している、高校生向けの探求型学習講座があることを知り、応募しました。桃ちゃんとは学校が同じだったので顔見知りでしたが、花とはそこで初めて出会いました。

__そのプログラムに参加したのはどうして?

古城:私はこれまで、自分自身に“何も取り柄がない”のがコンプレックスで、「何か自分の強みになるものを見つけたい」と思い通うことに。隔週で半年間ELCASに通い、自分たちのビジネスプランを考えていると、とても面白くて。最後に3人でプレゼンをして「このサービスが実現できるんだったら絶対、起業したい!」と。

白井:父が起業した経験があるので、小さな頃から起業に興味がありました。小学生の時に女子高生社長の本を読んで影響受けましたし(笑)。半年のプログラムの最後にプレゼンして、自分たちのビジネスモデルが選ばれた時は「実際に起業してカタチにしたい!」と思いました。

__授業の中で、どんな風にこのビジネスの手がかりを?

古城:一回目の授業の時に「社会にある解決されていない問題」や「隠れた真実」を洗い出す作業をしました。その時に自分たちの中で”個性”がキーワードになりました。私たち中高一貫で6年間制服ですから、制服に飽きていたのです。「制服って”個性”奪われない?」という課題が浮上し、洋服をレンタルする発想に。

__初回からもう、その課題観に気づいたのですか…!

古城:はい。これまでも原宿や渋谷に遊びに行っており、いろいろなファッションにチャレンジしたいな、と思っていました。一方で、アパレル側としたら、女子高生がブランドの服を着てSNSにアップし、実際に街を歩いてくれればPRに繋がるのかな…と。若者の「ファッション離れ」と言われていますが、ファッションの話題がない訳じゃない。そこは私たちがもっとPRできるんじゃないかな、と。2回目ぐらいの授業の時に、もう今の形がほぼ見えていました。

宇賀神:あと、私たちは親に服を買ってもらう立場なので、自分がちょっと挑戦したい服があってもなかなか挑戦できない、そんな潜在的な悩みもあって。大人っぽいセットアップとか、友達との双子コーデとか、お小遣いではなかなかできないので、そういう悩みも解決できるかな、と。

__なるほど、そういう視点もあるのですね!

女子中高生にリサーチして、気になるブランド100社以上に声がけ

宇賀神桃子さん(取締役) 渋谷教育渋谷高校 クイズ研究部 2年

__そこから、実際に起業へ向けてブラッシュアップし、カタチにしたのですね。協力してくれているブランドさんはどこから?

宇賀神:はい。まず、昨年12月に女子中高生とオープンミーティングをして、そこでお気に入りブランドをリサーチしました。そこに浮上してきた100ブランドのWEBのフォームから連絡をして、「放課後マネキン」というサービスに共感してもらえたブランドさんにプレゼンさせて頂き、商品をご提供いただきました。

__この「放課後マネキン」って言葉いいですね。発想はどこから?

古城:私たち女子高生が街でオシャレをして遊びながら「生きているマネキンになる!」という気持ちを、そのままサービス名に込めました。

__実際に会社を立ち上げて、今回のポップアップに至った訳ですがスタートしてみてどうですか?

白井:1月中旬ぐらいからブランドに声をかけ始め集めたので、実質、1ヶ月ぐらいの準備期間だったので、もっと時間をかけてポップアップの準備をするべきだなって思いました。

__すごい、1ヶ月で洋服も集めたのですか?ちなみに売り上げ目標値とかはありますか?

白井:今回のポップアップの目的は「女子中高生のファンを増やしたい」というのが目的なので、売り上げというよりは、サービスに共感してくれる子が増えたらいいな、と。

__世の中にあるビジネスモデルで参考にしたものはありますか?

白井:特にありません。私たちは女子高生であるということが強みなので、大人からみた女子高生向けのサービスではなくて、当事者目線を大事にして発信していきたいのです。

古城:女子中高生の6年間ってぎっしり詰まっているので、そういう価値観を大事にしたい。

__今回の3週間のポップアップの期間はどうやって?

古城:2月の上旬が私立の入試休みで、後半が都立の入試休み。そこで利用してもらえたら、と思ったのですが、ブランドさん的には冬物と春物の服の入れ替え時期で「提供できる商品がないので…」という声が多く、これは学びでした。

__確かに、この時期はそうなりますよね。業界の方からアドバイスは?

白井:協力してくださっているアイエント株式会社はアパレル業界なので、専門的な知識やアドバイスをたくさん頂いています。一方で、私たちが考えた意見が業界的な常識とは少し違っていたとしても、「自分たちで当たって砕けろ!」と見守ってくれているのかと(苦笑)。

__なるほど!見守る姿勢は、成長に欠かせないですからね!

自分たちのビジョンに共感してくれる仲間がボランティアで参加

白井花さん(取締役)都立国際高校 国際ボランティア部 2年

__ちなみにNadieが掲げているビジョンってありますか?

宇賀神:大切しているビジョンが3つありまして、①女子中高生の価値観を大切にする②あたり前を変える③サステナブルな社会への貢献です。ここに共感してくれている女子中高生が本当にたくさんいてくれるので、ボランティアで運営に参加してもらっています。もちろん、「放課後マネキン」というサービスに魅力を感じてくれている子もいます。

白井:みんな、何か一歩踏み出したいけれど、どこから手をつけたら良いかわからない。なので、一緒にNadieに企画や運営に加わってもらって、何かに踏み出すきっかけになればいいな、と。

__それが社会でビジネス展開しているのが素晴らしいですね。誰か大人がアドバイスをしているのかなと、勝手に思っていました。本当にごめんなさい…!

白井:いや、本当に自分たちで試行錯誤して悩みながらなので、本当に泣けてきますよ(笑)。

__打ち合わせはどこで?

古城:それぞれの家とか、ポップアップの前は泊まりがけでした。意見がぶつかって、気まずくなることもあります。でも、意見をぶつけ合ってより良いものができるなら、思っていることは隠さない方がいい。

__ここまでの道のりで難しいなぁって思ったことはありますか?

古城:私たちに圧倒的に足りていないのが人脈です。ここまで、京都大学とアイエント株式会社にバックアップしてもらって、ここまで来れたけれど…。なかったら苦しかったです。

白井:あと周りの反応はすごくいいですが、実際に集客となると難しい。

古城:今回のポップアップはお試し的な要素もあるので、ここからブラッシュアップして、次は長いスパンでやりたいです。



普通の女子高生から、起業家へ。自分の変化と周囲の変化

__起業をしてから何か自分の中での変化はありました?

白井:今までは部活やって、疲れて帰って寝て…と言う普通の高校生活でした。起業してからは毎日渋谷に行って、3人でミーティングして、時間の使い方が変わりました。大人と話す機会がすごく増え、自分の中での”仕事モード”ができました。

__仕事モード!すごい。周りの友達の反応は?

白井:プログラムに通っていた時は周りの友達にあまり話していませんでした。みんなとやっていることが違うし、なんか「真面目なことをやっている」ことが理解してもらえないかな、と思って。今は、すごく応援してくれています。想像以上に声をかけてくれることが多くて、すごく嬉しい。

__ご両親や学校はどうでした?

古城:自分のやりたいことや挑戦することを大事にしてくれる両親なので、反対も一切なく応援してくれています。ELCASには学校から6人参加していたので、学校の先生も知っていました。登記した日が始業式だったので、全校生徒の前でプレゼンさせてもらいました。

__ 始業式でプレゼン!すごく理解のある学校ですよね。

古城:プレゼンした時は、さすがにザワつきましたが。それまで部活も現役バリバリにやっていたので、顧問の先生とかもびっくりしていました。

__男子の反応はいかがでした?

古城:男子の反応もすごく多くて「Nadieの今後どうなるの?」「男子版つくってよ」みたいに声もかけてくれますよ。

高校生最後の一年、これからの進路は…三者三様

__4月からは高3ですよね?これからの進路はどうされる予定ですか?

古城:これは3人に共通する悩みでもあり、それぞれ考え方が違っています。私は、勉強よりは事業を優先して取り組みたいです。資金を出資していただいた株式会社なので、私はこのサービスを最後まで続けていきたい。大学を1年遅らせることもできるし、今、高校生で大人を巻き込めている、この環境を最大限に活用したいです。そうしないと、あとで後悔すると思う。

白井:私も今こそ頑張るべきなのかなと。3人でも何回も話し合って、誰か抜けるとしたらそのタイミングでどうするか、また話し合わないといけない。

宇賀神:私は大学受験をしようと思っています。いろいろなことに興味があるので、大学に行って興味分野を研究したいと考えています。だから、このポップアップが終わったら一旦休業して受験勉強に専念し、また戻ってくる予定です。

__それぞれ個人の考えが尊重されているのですね。興味のある分野とかも変わりました?

古城:最初は数学が得意だったので、理系に進もうと考えていましたが、プロジェクトに参加した時に「経営って面白い」と思い、文系に進路を変えました。今、こうして経営の知識がない中でやっているので、今回の事業をやりながら、改めて大学で経済や経営をしっかり学びたい。

白井:私は海外の大学に行きたいです。分野としては経営や経済を学びたい気持ちもあるし、今の事業をやる上でも「社会に影響を与えたい」という思いがあるので、環境問題や社会貢献も興味があります。今の事業もシェアリングエコノミーですから。

宇賀神:大学での学ぶ機会を大事にしたいので、経済学部とか商学部、他にも環境問題とか教育問題とかも興味があります。あとは、相談にのるのが好きなので、困っている人に対して助けになれたらな、と思っています。とにかく自分自身、興味の範囲がとても広いので、大学で学ぶことを大事にして、自分の突き詰めたい分野を見極められたらな、と。

__一度、経営に携わってから大学で学ぶと、さらに深い学びになるでしょうね。素晴らしいです!

自己実現ができる子になるには…親御さんはどんな教育を?

__それぞれ、仕事をする上で役割は決まっていますか?

古城:私は代表なので全体を統括し、将来なども考えます。

白井:私は女子中高生のコミュニティを担当しています。ボランティアメンバーへの連絡とか、SNSを通じたユーザーとの関わりなど私が中心に動いています。

宇賀神:私は実務担当です。ブランドさんとの話や、運営に必要な準備とか会計などですね。

__イメージ通りですね!それぞれの得意分野が生かされている感じ。

白井:3人ともタイプが違うし、服の好みも全然違うし…、このプログラムがないと、仲良くならなかったと思います(笑)。事業をする上では、個性が違っているからこそ、それぞれの長所を活かしていけるのかなと。

__最後に子育て世代として伺いたいのですが、皆さんはどんな風に育てられましたか?自分たちのやりたいことに挑戦できる人になってほしいのですが。

古城:中学時代は原宿や渋谷で遊んでいました。今思うとそれがきかっけでファッションも好きになったし、メイクも楽しんでいたし…。その時遊びすぎていたからこそ、”自分に何もない”のがコンプレックスになり、起業セミナーに参加するきっかけになりました。私がそうやって過ごしていても、両親は何も咎めませんでした。門限もなく、遊び疲れて体調悪くなったところで「あ、これじゃいけない」って気づきました。

__遊びつくすとこまで遊んだから、自分で「これじゃいけない」って気づけたのですね。遊んでいても親御さんからは信頼されていた、ということですよね。「あれダメ」「これダメ」って否定されたことは?

古城:一切ありません。これは3人の親の共通点ですが、制約が全くなく、とにかく自由だった。小学校の頃とかも自分がやりたい習い事5〜6個やらせてもらい、最終的にバレエを続けていました。

白井:やりたいこともやらせてくれるし、絶対に否定しないし、対等に話してくれる。とにかく肯定してくれます。

宇賀神:私も色々挑戦していていく中で「やるからには一生懸命やり遂げなさい」って言われていました。

__小さな頃からやりたいことを自由に、応援してもらっていたんですね。だからこそ、こうして高校生でも起業する行動力がついたのですね。ありがとうございました!

自分が高校時代を思い出しても、学校と部活に明け暮れていたので、大人と対等に話す機会もなかったし、ましてや「起業」なんて言葉すら知らなかったと思います。しかし、取材時も名刺交換の挨拶から始まり、言葉遣いも対応も大人顔負けで、女子高生と思えない立ち振る舞いでした。一方で、自分たちのやりたいこと、将来について話す様子は、あどけない表情でパッションに溢れていて…、サポートしてあげたくなるまっすぐさ。これは誰もが応援したくなりますね。デジタルネイティブたちはSNSを使いこなして自ら発信でき、デザインやHPも自分たちで作れる、ある意味、自己実現自体がしやすくなった環境ではあると思います。でも、自分たちの課題に対して、実現させるまで動けるかどうかは、彼女たちの自己肯定力なのだと思います。とにかく子どもたちのやりたいことをやらせてあげる。これに尽きるのかもしれませんね。

こんな時代だからこそ、若いエネルギーに満ち溢れた意欲のある若者にたくさんのチャンスを与えてあげたいです。Nadieの皆さん、これからも頑張ってください!応援しています!

Nadie HP

 

 

飯田りえ Rie Iida

ライター

1978年、兵庫県生まれ。女性誌&MOOK編集者を経て上京後、フリーランスに。雑誌・WEBなどで子育てや教育、食や旅などのテーマを中心に編執筆を手がける。「幼少期はとことん家族で遊ぶ!」を信条に、夫とボーイズ2人とアクティブに過ごす日々。

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