藤原千秋

観客も物語を生きる「イマーシブシアター」!京都・南座に咲く『サクラヒメ』、純矢ちとせさんに会いに行こう

演じる人と観るわたし

客席に人が入って、やっと舞台は完成する…そう、役者の方が言われているのを目にしたり、耳にしたりすることがあります。でも、どこか「本当にそうなのかなあ?」っていう思いが、わたしにはありました。

たとえ空間は同じくしていても、結局、観客は観客でしかないんじゃないか、って。

客席にいるわたしたちが舞台上に及ぼせる影響は微々たるもの。むしろなにかへんな存在感を与えてしまいでもしたら、せっかくの演目を台無しにしてしまいかねない! そんなの怖い! くらいの気持ち。

それでも「なま」の舞台というのが、とても特別な場だというのは確かだと思うのです。その一回性、二度と同じ空間が共有されることはない稀少性、ゆえにある祝祭的な空気感…。

それがいかにロングランの演目であっても、「それ」はある。何度も同じ内容をリピートする映像作品などとは、決定的に一線を画す、プライスレスな価値がそこにはある。だから舞台は良い…! いいんです、大好きなんです。

とはいえ。

実のところわたしがまあまあな頻度で、そんな「なま」の舞台に足を運べるようになってからの日は、まだ浅くて、ほんの3年にも満たないくらい。

末の娘が小学校に上がり、かすかに生じた心の余裕。間も無くひょんなことから「宝塚」に垂直落下したときから、観劇の日々は始まりました…(この「ひょん」の詳細を語ると長くなりすぎるので、そこはまた別の機会に!)。

わたしの、仕事育児家事の三輪を回すのに必死だった人生に、加わったこの「なま」の舞台の観劇という一輪。

すると何が起こったか…? すさまじい気分転換効果がもたらされ…ものすごくわたしの人生が安定し出したのです! 不思議!

考えてみれば三輪より、四輪駆動の方が地に足付くし馬力も出ますよね。なるほどの道理。ただそうはいってもわたし自身は、ふかふかの座席で数時間の夢を見させてもらってるだけ。邪魔にはなりたくないけど役にも立ててない。物語の前では傍観者。まあ、それが普通の、観劇ではあるわけなんです。

「イマーシブシアター」という、最新型の演劇

いっぽう。ウエストエンドやブロードウェイでは、いま「イマーシブシアター」という新しい演劇手法が話題です。ご存知でしたか? わたしは、「うわさには聞いていたけれども…」くらい。未知の世界。

この「イマーシブ」というのは、「没入型の/のめり込むような、引き込まれるような」という意味をあらわしています。そこでは、観客は一方的に舞台を鑑賞するのではなく、演者と同じ空間に立ったり(ええっ)、物語の一部として参加し(ていいの?)、毎回の結末をも左右する役割を担う(まさかのマルチエンディング!)のだそう(※いただいた資料による)。びっくり。

まさに一回性、稀少性、祝祭感のきわみ! 「なま」の舞台を好む人であれば、「なにそれ面白そう!」と目を輝かせてしまう要素に満ちています。でも、いったいどんな「舞台」になるんだろう…ちょっと想像が及ばないところがありますよね。

そんな今春、京都・南座という、歴史を遡れば出雲阿国まで辿れる、歌舞伎発祥の地・京都に立つ日本最古の歴史を持つ劇場で、このもっとも新しい演劇が開演されます。

イマーシブシアター 『サクラヒメ』~『桜姫東文章』より~

これを演じる役者たちは、日舞、剣舞、タップ、ストリートダンス、アクロバット、歌唱といった、各ジャンルにおいて日本の今をときめく、トップクラスのパフォーマーたち!

フルフラット化されて客席と舞台との境目のなくなった1階エリア(移動体験型座席なので椅子はないのだそうです)の観客は、「都人(みやこびと)」として、なんと羽織を纏って舞台上を行き来、このパフォーマーたちの演技を間近で体感することができます。

いっぽう2、3階エリアの観客は、「雲上人(うんじょうびと)」としてこの演者たちの織りなす物語を俯瞰できるだけでなく、「サクラヒメの運命の相手を裁決する」という役を果たすかたちで物語に参加します。

またこの2、3階エリアにも特設アクティングステージが設けられ、どこで観ても、観る度に別の新しい経験ができるしくみになっています。

そんな、きわめて先進的な試みの多いこの舞台において、「日舞」のトップパフォーマーとしてタイトルロール「サクラヒメ」を演じるのは、2019年7月21日に宝塚歌劇団を卒業されたばかりの、元宙組娘役スター、純矢ちとせさん。

東京都出身。2003年に宝塚歌劇団に入団し、宙組の娘役スタートして活躍。 日本舞踊と歌唱力に定評があり、数々の舞台でヒロイン、エトワール、大役を務める。2019年7月『オーシャンズ11』で惜しまれながら退団。 幼少期から日本舞踊を習い、2003年に西川流名取となり西川鯉せいを名乗る。2008年には西川流師範となる。

じつは「宝塚」でも、特にわたしが大好きだった「89期」…「美人の期」のタカラジェンヌ、せーこちゃん(愛称)! 日舞だけでなく、エトワール(歌姫)を何度も務められた確かな歌唱力、幅広い年代の女性だけでなく男性まで演じた高い演技力を兼ね揃えた、宙組のレジェンドです。

この制作発表会にお伺いし、さらに純矢ちとせさんへのインタビューの機会をいただきました。わたくし、恥ずかしながら途中からちょっとおかしなテンションになってしまい、「イマーシブシアター」を観る前なのに、ひとり没入状態に…。かろうじてちゃんとお話しできたところを抽出、純矢ちとせさんの素敵さを、少しでもお伝えできればと思います。

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