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中沢明子

天才ピアニスト、ラン・ランの曲を自動演奏!最先端ピアノSPIRIO rに驚愕

  • 中沢明子

2019.12.20

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ラン・ランが製作に加わったスペシャルなピアノ「Lang Lang BlackDiamond」

 

Lang Lang(ラン・ラン)●1982年、中華人民共和国・藩陽生まれ。3歳から藩陽音楽学院でピアノを学び始め、5歳で中国の東北地方の音楽コンクールで優勝。9歳で3000人の受験生の中からトップの成績で中央音楽学院付属小学校ピアノ科に進学。14歳でアメリカの名門・カーティス音楽院に入学。裕福な家庭の出身ではないため、家族一丸となり、天才児のラン・ランの才能を育てるために苦労したサクセス・ストーリーは内外によく知られている。2007年、グラミー最優秀クラシック器楽部門賞に中国人初ノミネート、全米レコード芸術科学アカデミー会長功労賞を受賞。後進の音楽教育にも熱心で、2008年、グラミーとユニセフの援助のもと、ニューヨークにてラン・ラン国際音楽財団を設立。日本では映画『のだめカンタービレ最終楽章前・後編』サウンドトラックへの参加が話題を呼んだ。世界中でソロ・コンサートを開催するだけでなく、多くのオーケストラに招かれている。さらに、ジャズの巨人、ハービー・ハンコックなど、クラシック音楽以外の世界とのコラボレーションにも積極的。文字通り、中国が生んだ世界的スーパースターのひとり。2002年より、スタインウェイ・アーティスト。

公式サイト(英語)

ユニバーサルミュージックジャパン公式サイト

 

超絶技巧をサラリと駆使し、感情豊かな演奏で世界中のファンを沸かせている天才クラシックピアニスト、ラン・ラン。“中国のモーツァルト”と称され、北京オリンピックの開会式でも華麗な演奏で華を添えました。クラシックの名曲を弾かせたら当代随一、天下一品の彼ですが、ジャズやポップスなど他ジャンルのアーティストとも頻繁にコラボレーションし、音楽のジャンルも国境も軽々と越えた活躍を見せる、まさに中国が生んだ世界的スーパースターです。若い頃からほぼ変わらない愛くるしいルックスと陽気な人柄も人気の秘密。私、ライター中沢も大好きなアーティストのひとりで、仕事をしながら、よく彼の作品を聴いています。クラシック音楽に詳しくなくても、ラン・ランという名前と顔は知っている人がきっと多いのではないでしょうか。

そのラン・ランがいつも使っているグランドピアノは「スタインウェイ&サンズ」の物で、2002年からは「スタインウェイ・アーティスト」として活躍。そして、このたび、スタインウェイ&サンズとコラボレーションした限定モデル「Lang Lang BlackDiamond(ラン・ラン ブラックダイヤモンド)」が日本でも発売開始されました。

スタインウェイ&サンズといえば、ピアノを習う人が憧れる老舗ピアノ・ブランドのひとつ。1853年にニューヨークでドイツ人ピアノ製作者、ヘンリー・スタインウェイが設立した会社で、現在もスタインウェイの故郷、ドイツとアメリカの2拠点でピアノを製作しています。スタインウェイ&サンズの特徴は昔も今も革新的なグランドピアノを生み出していること。老舗の名前に胡坐をかくことなく、未来を感じるピアノを世に送り出す社風がラン・ランの志向性とピタリと合うのかもしれません。

この限定モデルを作り上げるまで、忙しい合間を縫って情熱を注いだラン・ラン。ようやく完成した特別なピアノをいたく気に入り、なんと先日、ツアーで来日していた本人自ら“ラン・ラン ブラックダイヤモンドの素晴らしさ”を伝える(!)試聴パーティが東京で開かれました。なんでも「ラン・ランの“生演奏”をラン・ランがいなくても弾くピアノ」だというのですが、えーっと、それってどういうこと!? 謎が深まる特別なピアノについて、ラン・ラン自身が説明してくれる機会なんて、もう二度とないはず。というわけで、試聴パーティに参加してまいりました。そして、限定モデルのピアノのすごさとラン・ランの気さくすぎる人柄に驚愕してしまいました!

 

最先端のハイテクなピアノ自動演奏機能「SPIRIO r」

 

目の前で演奏してくれた、ラン・ランさん。

 

「ラン・ラン ブラックダイヤモンド」は著名な家具デザイナーのダコタ・ジャクソンがデザインを担当し、スタインウェイ&サンズ、ラン・ランとのトリプルコラボレーションとなった特別エディション。間近で見るとツヤツヤというより、キラキラと輝いて、確かにダイヤモンドのよう! 重厚感もあり、見た目がとても美しいグランドピアノです。しかし、このピアノの“すごさ”は見た目だけではありません。音色も当然美しいのですが、世界最高峰のハイレゾリューション自動演奏ピアノ「SPIRIO r」が搭載されたハイテクピアノでもあるのです。

スタインウェイ&サンズが開発した「SPIRIO」は歴代のスタインウェイ・アーティストがスタインウェイ&サンズのスタジオで録音した音源のライブラリーを自動演奏で楽しめるシステム。ラン・ランはもちろん、巨匠ホロヴィッツからビル・エヴァンスまで、現在3600曲以上が収録されており、毎月どんどん新しい曲が追加されています。そんな「SPIRIO」に録音・再生機能まで追加されたのが「SPIRIO r」。自分が弾いた演奏を録音し、その音をピアノで100%再現できるので、鍵盤の強弱やタッチなどを耳と目でしっかり確認できるとか。

「ラン・ラン ブラックダイヤモンド」の美しさとハイテク仕様について、現物を前に大きく身振り手振りを交えて熱弁するラン・ラン。とはいえ、機能が新しすぎるからか、いまひとつ、ピンときません。すると、会場の「どういうこと?」という空気を察したラン・ランが「説明するより、実際に弾いてみたほうがわかりやすいですよね(笑)」とピアノの前に座り、弾き始めました。ドビュッシーの「子供の領分」、メンデルスゾーンの「紡ぎ歌」、チャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」の冒頭と3曲も弾いてくれる大サービス! 時には力強く、時には繊細に。素晴らしい演奏にうっとり。さらに「エリーゼのために」を弾いたあと、「では、今の僕の演奏をまた聴いてもらいましょう」と彼がピアノから離れると、たった今の演奏をピアノが無人で弾き始めました。自動演奏ピアノは昔からありますが、今ラン・ランが弾いたばかりの音を寸分違わず、再現しているピアノに「おお……」という感嘆の声が。ラン・ランがつま弾いた通りに鍵盤が動いているのが、とても不思議な感じがしました。まさに、次世代のピアノ……!

 

「ラン・ラン ブラックダイヤモンド」を前に、このピアノのすごさと魅力を熱弁するラン・ランさん。

 

気さくでサービス精神旺盛なラン・ラン

 

「ここにサインすると、僕がシェフみたいだよね! あははは」と言いながら、みんなのメニューにサインしてくれました。気さくすぎる!

 

一同が「ラン・ラン ブラックダイヤモンド」に搭載された「SPIRIO r」の“すごさ”を理解したところで、ステージを降りると、各テーブルをまわり、本当にひとりひとりに丁寧に挨拶し、記念撮影やサインに笑顔で応じていました。ラン・ランさんのあふれんばかりのサービス精神に脱帽です!

と、ここまで「ラン・ラン ブラックダイヤモンド」をご紹介してきて、なんではありますが、ラン・ランが演奏に使ったこちらの「D-274」モデルは世界限定8台、お値段8100万円(税別)、もう少しお安い「B-211」も世界限定88台で5400万円(税別)、3750万円(税別)と、税金だけでも高いので「税別」を思わず強調してしまうほど、高額です。もちろん、価格に見合う価値があるピアノですが、現実的になかなか手に入れられるグランドピアノではないでしょう。

でも、こうした革新的なピアノを生み出す老舗ブランドのピアノはエントリーモデルであっても、卓越した技術と未来を見据えたビジョンのもとで作られています。昔、憧れの車の代名詞として「いつかはクラウン」と言われたトヨタは、今も車業界の最前線を走っています。スタインウェイ&サンズも同じではないでしょうか。天才、ラン・ランが数あるピアノからスタインウェイ&サンズを選んだのは、やはり、この革新性があるからこそ、だと思います。ラン・ランとスタインウェイ&サンズがコラボーレションした理由と意味がわかった気がしました。

 

取材・文・写真/中沢明子 提供写真/スタインウェイ・ジャパン株式会社

 

Lang Lang BlackDiamond

 

「Lang Lang BlackDiamond」

モデルD-274 ※世界限定8台

・マカッサルエボニー:81,000,000円(税別)

モデルB-211 ※世界限定88台

・マカッサルエボニー:54,000,000円(税別)

・エボニー:37,500,000円(税別)

Lang Lang BlackDiamond

スタインウェイ&サンズ東京

 

中沢明子 Akiko Nakazawa

ライター・出版ディレクター

1969年、東京都生まれ。女性誌からビジネス誌まで幅広い媒体で執筆。LEE本誌では主にインタビュー記事を担当。著書に『埼玉化する日本』(イースト・プレス)『遠足型消費の時代』(朝日新聞出版)など。

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