FOOD

イタリアのちょっと贅沢な食材。本物の「グラナ・パダーノ」&「パルマハム」とは

  • スーザン史子

2020.01.09

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普段はクルマの話題を中心にお届けしていますが、今回は本場イタリアのチーズと生ハムのお話です。

ここ数年、食や旅の取材などもしている関係で、EU協力キャンペーン「ヨーロッパから届くしあわせ イタリアのグラナ・パダーノとパルマハム」というイベントに参加してきました。日本にヨーロッパの名産品を紹介しようという試み、その様子をリポートします。

「パルマハム」ってどんなハム?

パルマハム ©ヨーロッパから届くしあわせ

「パルマハム」という名前を耳にしたことのある人は多いと思います。骨付きの肉のカタマリを前にすれば、「いわゆる生ハムのことでしょ?」と言いたくもなるのですが、実は生ハム=パルムハムというわけではないんです。

生ハムのなかでも、イタリアで育ったブタとシチリア産の塩を使った、添加物や保存料を使用していない100%ナチュラルな生ハムを「パルマハム」と呼び、一般的なプロシュットとは一線を画しています。

原材料となるブタは、イタリア北部と中央部10州の認定養豚所で生まれ育った、ラージホワイト種をふくむ3種類に限られているほか、餌には規定された穀物ブレンドやシリアル、パルミジャーノ・レッジャーノチーズの製造工程でできる乳清を使い、ブタの健康状態に配慮しながら育てられているんです。屠畜するのは、9カ月を経て、140kgの体重に成長したブタのみ。

そんな明確なルールがあるなんて、ビックリじゃありません?

しかも歴史はかなり古く、イタリア北部のエミリオロマーニャ地方で、紀元前のローマ時代からつくられていたとか。

一般的にハムやソーセージといった類は、添加物が入っているものが多いんですよね。ウチの冷蔵庫に入っている安い生ハムにも……あ、やっぱり入ってる。

化学物質を一切つかわない伝統的な製法が、パルマハムの命なんですね。

「グラナ・パダーノ」ってどんなチーズ?

EUを代表するトップブランドで、イタリアでもっとも親しまれているチーズがグラナ・パダーノです。

このチーズは、北イタリアの修道僧たちが生乳を生かすためにハードチーズにしたのが始まりで、1135年頃に誕生したといわれています。日本でいえば平安末期ぐらいですね。

「グラナ」というのは粒状という意味を持っていて、そのシャリシャリした食感からいえば、パルミジャーノ・レッジャーノに近いですね。

原材料は「グラナ・パダーノ生産地域」で生産された生の半脱脂乳。凝固がはじまったところで、ちいさな粒状に切り刻み、熱して型枠にいれ、塩水に漬けるといった工程を経て、最終的に熟成を行います。

熟成過程は9カ月~24カ月以上。9~16カ月、16カ月以上、20カ月以上と、熟成の度合いによって3つのグレードに分けられますが、なかでも熟成期間が20カ月以上となったものを「リセルヴァ」と呼び、ラベルの形や色も、ほかのグレードとは違うものが採用されています。

驚くのはその生産量で、2018年の1年間で約490万ホール! 重さにしておよそ1憶9000万トンと、PDOというカテゴリーのなかで世界一売れているチーズなのだそうです。

ミシュラン1つ星シェフ考案のメニュー

徳吉洋二シェフ ©ヨーロッパから届くしあわせ

今回は、イタリア・ミラノで活躍する徳吉洋二シェフがこの2つの食材をつかって、前菜からデザートまで、さまざまな料理を披露しました。徳吉シェフの料理は、レクサスがオフィシャルパートナーを務める『ダイニングアウト』というイベントでいただいたことがあるのですが、アーティスティックな感性に富んでいて、驚きの連続だったのを覚えています。

今回もシェフならではのアイデアの光るメニューが並びましたが、なかでも家庭でも楽しめるメニューとして取り入れたいのが、次の2品です。

まぐろの漬パルマハム巻

パルマハムを使った「まぐろの漬パルマハム巻」は、徳吉シェフがお寿司屋さんで思いついたメニュー。魚とお肉の組み合わせというと、ちょっと不思議な感じもしますが、口にいれると、トロッとした食感のまぐろと、少し塩気のあるやわらかなパルマハムとの相性はバッチリ。しかも、切りたてのハムはふわっとして口の中でとろけるよう! いくらでも食べられそうでした。

リゾット徳吉スタイル ©ヨーロッパから届くしあわせ

一方、グラナ・パダーノを使った「リゾット徳吉スタイル」は、チーズをかつおぶしの出汁感覚で使用したあっさりタイプのリゾット。チーズを粉にして水に溶かすと、油、水、プロテインという3層に分かれますが、うわずみとなった油と水だけをつかっているので、チーズの香りはするものの、後味はすっきり。チーズリゾットというとこってりした濃厚な味わいを想像しますが、すごく新鮮でした。



PDOって何?

ところで、さきほど「PDO」というカテゴリーがあることを紹介しましたが、グラナ・パダーノとパルマハムの製品には、必ず「PDO」というロゴが付いています。コレ、何のことかわかりますか?

「PDO」とは、原産地名称保護(PROTECTED DESIGNATION OF ORIGIN)といわれるEUの認証システムのことです。特定の地域で伝統的な手法によってつくられた高い品質の食品を保護するもので、模倣品とを見分ける手立てとなるものなんですね。

日本にもPDOと同じように地理的表示があり、「GI」(JAPAN GEOGRAPHICAL INDICATION)といいます。GIに認定された48品目のなかには、松阪牛や八丁味噌がありますが、これらの食品はEUでも守られていて、逆にPDOに認定された一定の品目は日本国内でも守られることになっています。

つまり、これらは日本とEU間で、“名前やブランドを守りましょう”と約束をしている食品ということなんですね。

左から、イタリア・ミラノ『RISTAURANT TOKUYOSHI』の徳吉洋二シェフ、パルマハム協会のキアラ・イアスオロさん、グラナ・パダーノ保護協会のエドアルド・ペドゥトさん、アンバサダーを務めるコラムニストの中村孝則さん。徳吉シェフは、2019年2月に、東京・神保町に『Alter Ego』をオープンさせている。©ヨーロッパから届くしあわせ

グラナ・パダーノチーズやパルマハムは、日本のイタリアンレストランではすでにポピュラーな食材。自分では買ったことがない、という人も実は、レストランで口にしている場合も多そうです。ぜひ、レストランやショップで注目してみてください。

©ヨーロッパから届くしあわせ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スーザン史子 Fumiko Susan

カージャーナリスト

出版社にて雑誌編集に携わった後、自動車ジャーナリストに転身。女性誌や専門誌、web等で、主に車関係の記事を執筆。10年に息子を出産、ママ目線での車の使いやすさにも注目するかたわら、安全運転講習の講師を務めるなど、クルマ生活に役立つ情報を提供している。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

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