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佐々木はる菜

ウガンダ発【RICCI EVERYDAY】世界で唯一のハンドメイドバッグを

  • 佐々木はる菜

2019.11.07

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カラフルで美しいアフリカ布を用いたハンドメイドの布バッグやトラベルグッズを取り扱う「RICCI EVERYDAY(リッチー・エブリデイ)」。私自身も大好きなブランドで、毎日のように愛用しています。

出会いのきっかけは、ブランドのアイコンでもあるAkello Bag 4way(アケロバッグ)に一目ぼれしたこと。デザインが可愛くて、オンでもオフでも持っていると必ずと言っていいほど褒めていただきます。

アイキャッチーなだけでなく、ストラップの使い方次第で4WAYに!私が持っている一番大きなサイズは13インチのPCがすっぽり入り、丈夫なつくりなのでママバッグとして活用している方も多いそう。

そして何より心に残ったのが創業者である仲本千津さんという女性でした。
「世界中の女性が自らのポテンシャルに気づき、意志と誇りをもって生きる世界を実現すること」をブランドのビジョンに掲げ、ウガンダのシングルマザーたち、そして日本に住むご自身のお母様と共に事業を立ち上げた仲本さん。
他にはない美しいアイテムの魅力と共に、これまで歩んでこられた道のり、そしてバッグに込められたその想いについても伺ってきました!

仲本千津(なかもとちづ)1984年生まれ。一橋大学大学院卒業後、邦銀での法人営業を経てアフリカで農業支援を行うNGOに参画。ウガンダ駐在時に出会った女性たちと、日本に暮らす母と共に、色鮮やかで美しいアフリカ布を使用したバッグやトラベルグッズを企画・製造・販売する「RICCI EVERYDAY」を2015年に創業。

アフリカン・プリントとの衝撃的な出会い

初めてウガンダを訪れた際、「アフリカって砂漠だけじゃないんだ!」と驚いたという仲本さん。

「アフリカ大陸の真ん中より少し東側に位置するウガンダ共和国は、ヴィクトリア湖というアフリカ最大の湖に面し、そこからナイル川が国内をゆったりと流れている水の資源が豊富な国。赤道直下ですが標高が高いので気候が良く緑が多く、土地も肥沃で食物などもよく育つせいか、のんびりした温かな国民性も特長です。」

また縫製産業が盛んで、マーケットには壁一面天井まで色とりどりのアフリカン・プリント(布)が積みあがり、街なかには仕立て屋さんがたくさんある文化。市場で見つけてきた好きな柄の布を持ち込むとワンピースや小物など好きなものを作ってくれるそうで、それはウガンダ駐在時代の仲本さんにとって大きな楽しみだったそう。

カラフルで見たことのないような柄が数えきれないくらい並んでいる市場。初めて行った時は大興奮したそうで、たくさんの生地から好きな柄を探すのが楽しく、何時間も布を引っ張り出しては眺め、最後にはお店の人に呆れられてしまったほどだったといいます。

そしてその夢中で布を探す“ワクワクした体験”が、起業のきっかけになったとなりました。

やる気のある人がちゃんと報われる世の中を作りたい

この魅力的なアフリカン・プリントを使って日本向けに製品を作ろうと考えたものの、服飾や縫製の経験がなかった仲本さん。そんな時に出会ったのが、4人の子どもを持つウガンダ人のシングルマザー、ナカウチ・グレースさんでした。

「ウガンダでは、たとえトップクラスの大学に入ったとしても定職に就く事は難しく失業率が高いことに加え、慣習的に一夫多妻制が認められているためシングルマザーが出現しやすい環境にあります。出会った当時の彼女は友人の家の掃除などをしながら収入は月10ドルほど。子ども達に充分な教育を受けさせられないことなどに対していつも自分を責めていましたが、経済的に厳しい状況にも関わらず鶏や豚を飼うことで収入を増やす道を探るなど、グレースには他の人にはない『なんとか生活を変えたい!』という強い意志を感じました。」

「子どもたちを学校に通わせたい、私のような大人になってほしくない」と自身を否定するような彼女の言葉に胸が詰まり、自分に何かできることなないかと考える共に、この人となら一緒に仕事ができるかもしれないと感じた仲本さんは、学費を負担しグレースさんに職業訓練校で裁縫の技術を身につけてもらうことを決意。その過程で、高い縫製スキルを持つ方や革を縫う技術を持つ女性がメンバーとして加わり、最初は4人で小さな工房をスタートしました。

3人のウガンダ人女性は全員がシングルマザーで、それぞれが必死に生きようともがいていました。彼女たちのようなやる気のある人が報われる世の中を作るために、まず必要だと考えたのが「安心して働ける場所」でした。

「生活が安定しないと、長期的にライフプランを考えるような余裕がなく『今日生きることができれば良い』と短視眼的な物の見方にならざるを得ません。すると家族としてもコミュニティーとしてもなかなか豊かにならない…。彼女たちのやる気と技術を生かすためにはプロフェッショナルを育て、安心して継続的に働くことができる場所を作ることが大切だと考えました。」

もともと仲本さんがアフリカに興味を持ち、大学・大学院と国際関係を学び、その後NGOの職に就かれた元々のきっかけは、小さい頃から「人を救う仕事に就きたい」と考えていたこと。お話を伺う中で、そんな彼女の想いと行動力があったからこそ実現できた事業の形だと強く感じました。

日本でも人気を集めるデザイン性と品質の高さ

「日本の方はただ“可愛い”だけでは買ってくれませんし、せっかく買っていただいたとしても、使い勝手が悪ければタンスの肥やしになってしまいます。力を合わせて作ったバッグだからこそ多くの方にぜひ使って欲しい。デザインだけでなく使い勝手や品質には徹底してこだわり、自分自身が欲しい!というものを作りました」

こちらは私が使っているバッグ。様々な柄だけでなく裏布との組み合わせなどを含めるとひとつとして同じバックはなく、ハンドメイドだからこそ、それぞれのアイテムが少しずつ違った雰囲気を持っています。

思った以上にしっかりした素材で、底にはスナップボタンもついていてクラッチとして持つ時は留めて使うことができます。広げるとマチもしっかり!持ち手のレザー部分は高級感があり、底用のプレートも裏は皮。バッグだけでなくポーチ内にもポケットがあり、これだけでも持ち歩くことができます。



想像以上の成果に繋がった、「母娘の協働事業」

立ちあげから約半年後、日本に進出する準備が整った際に社長をお願いしたのが、それまでずっと専業主婦として4人のお子さんを育ててきた仲本さんのお母様である律枝さん。「RICCI EVERYDAY」というブランド名は、母娘おふたりの名前、律枝と千津を合わせたものでもあるといいます。

経済的な豊かさを表すRICHではなく、違ったかたちでの豊かさがあることも伝えたいと考え、「RICCI」に。

「せっかく社長をやってもらうなら、私のサポートではなく母自身にも楽しんで仕事をして欲しいと思っていましたが、まさかここまでやってくれるとは思わなかった!4人の子どもを育てながら地域の活動などにも積極的に参加していたことが、仕事にも様々な形で活きたのだと思います」と笑う仲本さん。律枝さんは、オンライン販売の商品発送もしながら百貨店等で行われる催事の販売員も務めているそうで、過去にはふと思い立ってアポイントなしで大手百貨店へ出向き、インフォメーションセンターの方にバイヤーさんを呼んでもらい出展が叶ったこともあるのだとか!

今回お話を伺った代官山店は初の実店舗として2019年にオープン。小物やアクセサリーの販売のほか、好きな布を用いてオーダーメイドのワンピースなどを作ることも。アフリカ関連のイベントや、アフリカン・プリントのハギレを使ったワークショップなども随時開催しているそうです。

店内ではウガンダの様子を映像やVRで楽しむことができます。VRは360度ウガンダの光景が拡がり、工房の様子や市場の活気に思わず大興奮してしまいました。訪れた際は是非体験してほしい!また、持続可能なものづくりを目指し、ものを余すことなく使用し廃棄物減らしたいと考えるRICCI EVERYDAYのショップバッグの袋の持ち手にも、ハギレが活用されています。

ウガンダの人の心の中に「選択肢」を作りたい

「仕事」には、人を作り、人生を変え、そしてコミュニティーを変化させる力があると思うと話す仲本さん。

「安定した仕事があり生活そのものが安定すると、自分や家族だけではなく周りで働いている人やコミュニティーのことを考える余裕が生まれます。そして仕事を通して『誰かから必要とされている』という感覚が芽生えることも、とても大切だと思います。
人は誰でも、その日を生きることに精一杯で刹那的に生きていると、自暴自棄になってしまいがちです。今の生活が続いていくことに希望が持てないと、「お金をあげるから、この銃を持って紛争に行ってこい」と言われたら、言われるがままに赴いてしまうというようなことも起こりえます。
そんな時に、大切な家族がいて働く場があり、そこでの人の繋がりがあると、ふと立ち止まって考えるきっかけになると思います。仕事を捨ててまで行くのか?家族はどうするのか?と考える『余白』ができ、短絡的な思考や自暴自棄に陥ってしまいそうな時に引き止められる要因になる。これが『選択肢』ということだと思うんです。」

一緒に働く女性たちの場合はまずお金の不安があり、子どもたちの教育に対する心配も大きい。そういった不安をなるべく取り除いてあげることも大切にしており、例えば子どもの学費等であれば無利子でお金を貸してあげるなど、会社としてもサポートすることを心がけているそう。

バッグも人生も、大切なことは「自分の手で選び取ること」

生き方の選択肢が極端に少ない、ウガンダの女性たち。仲本さんは、彼女たちの生活を向上させながら同時に、自らが手掛けた製品を誇りをもって世界に送り出すことができる「場」を提供していきたいと考えているそうです。

「日本のようにこれだけ選択肢がある事はやはり幸せなことで、日本の女性には選べることや多様性を楽しみながら生きて欲しいと思いますし、『選択肢があることは当たり前ではない』ということを知るだけでも、世界に目を向けるきっかけになると思います。」

その一方で、選択肢はたくさんあるはずなのに周りの目や様々なものに配慮をして、自分が本当にやりたいことや好きなものを選ぶことのできなかったり、環境や社会構造に阻まれ思うように能力を発揮できなかったりする、日本女性ならではの生きづらさみたいなものも強く感じているといいます。そうやって悩む女性が、このお店でたくさんのバッグの中から自分が本当に好きなアイテムを探し、それを楽しみながら使っていただくことで、自分の感性を信じ、自らの選択への自信を持つきっかけにしてほしいと仲本さんは話します。

「『幸せ』はすでにその人の手の中にあって、自分の本当に好きなものを選び自分で決断していくことが、幸せな生き方につながるのではないかと思っています。このお店でのバック選びはその小さな小さなひとつ。お店に来てひとつとして同じものがないバッグの山を目にすると、多くの方は半ば戸惑われます。そのたくさんのアイテムの中から、例えば自分は何色が好きか、どんな柄が好みか、普段どんな服を着ているか、どういうシーンで使いたいか…自分を中心に思いをめぐらせる機会になります。
バック選びに限らず、誰と会いたい何を食べたいどこに行きたい…など、本当に小さな決断を積み重ねることが大切で、それはきっと人生の岐路のような大きな決断をする時の助けになるはずだと思います。」

中には1時間以上迷う方もいらっしゃるそうですが、お客様はみんな最終的には「自分はこのバッグ!」と決断して買って行くそう。そのような場を作りたかったということが、実店舗を開いた大きな理由でもあったといいます。
そんな私自身も、お店でバッグを選んだ際は次の予定に間に合うギリギリの時間まで40分以上かけて悩みました。特に子どもを産んでからは、とにかく自分のことは何事も効率よく進めることが第一で、自分が何に惹かれるかこんなに真剣に考えたのは久しぶり!仲本さんのお話を改めて噛みしめる時間にもなりました。

これから始まるホリデーシーズンは、誰かに何かを贈る機会も増える時期。自分へのプレゼントとしてはもちろん、大切な人への贈り物にもオススメです。オンラインショップも充実しているので気になった方はまずそちらからチェックしてみても。
そして足を運べる方は、是非実際にお店に行ってみてほしい!バッグ選びを通して、自分で自分の人生を選び取る楽しさに想いを馳せてみてはいかがでしょうか?

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佐々木はる菜 Halna Sasaki

ライター

1983年東京都生まれ。小学生兄妹の母。夫の海外転勤に伴い、ブラジル生活8か月を経て現在は家族でアルゼンチン在住。暮らし・子育てや通信社での海外ルポなど幅広く執筆中。出産離職や海外転勤など自身の経験から「女性の生き方」にまつわる発信がライフワークで著書にKindle『今こそ!フリーランスママ入門』。

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