映画ライター折田千鶴子のカルチャーナビアネックス

神秘的な性愛シーンに魅入られる!北欧ミステリー×ダークファンタジー 『ボーダー 二つの世界』の監督にインタビュー

原作は『ぼくのエリ 200歳の少女』の作者による短編

もう随分長いこと、日本でも北欧ミステリーが人気です。私も、かつて小説「ミレニアム」三部作にハマり、ハリウッド版ではないスウェーデン/デンマーク製作のオリジナル版『ミレニアム ドラゴンタトゥーの女』(09)にはじまるシリーズに熱狂して以来、ずっと北欧ミステリーに目が釘付け状態です。

冷たい湿り気を帯びた暗さ漂う、静謐で神秘的な北欧の世界観。そんな風景に、哀しみのような詩情が混じり込んだ空気感……そこで展開される人間ドラマが色濃く滲んだミステリーに、どうにも心惹かれずにはいられないのです。

そんな北欧ミステリーの魅惑に満ちた、ダークファンタジー映画『ボーター 二つの世界』が公開されます!

本作でカンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリを受賞した新鋭アリ・アッバシ監督に、スカイプ・インタビューする機会を得たので、色々と聞いてきました! なんとイラン出身で最初は工科を学んでいたという、異色のキャリアの持ち主です。

アリ・アッバシ監督
1981年、イラン生まれ。工科大学での研究をやめ、建築を研究するためスウェーデンのストックホルムに移住。07年、建築学の学士を取得。その後、デンマーク国立映画学校に入学。初長編監督・脚本作『Shelly』(16)がベルリン国際映画祭でプレミア上映される。

 

とても哲学的なものの見方をされる鬼才という印象ですが、お話をすると非常に気さく。処女作の『Shelly』は日本未公開ですが、不気味で怖くて、でも優しくて……その静謐な世界観に魅せられずにいられない面白さなんです!! ジャンルに分けると、これはホラーになるのかもしれませんが、すごく文学の香りのする作品というか……。

さて、『シェイプ・オブ・ウォーター』のギレルモ・デル=トロ監督が大絶賛した『ボーダー 二つの世界』は、“え、こんな世界、わたし覗いていいの!?”と微かに頭をよぎる、人間世界に異世界がフッと流れ込んでくる不思議で悲しくて美しい物語。原作は、日本でも映画が大きな話題になった『ぼくのエリ 200歳の少女』(08)の原作者(原作小説は「モールス」というタイトル)ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストさん。なるほど、北欧テイスト満載も当然ですね!!

 

ヒロインは、税関職員のティーナという女性です。
“特殊”と言えるほど鋭敏な臭覚の持ち主で、違法物を持ち込む人間を嗅ぎ分ける仕事をしているティーナは、異形とさえいえる、あまり美しくない容姿のせいで、孤独な人生を送ってきました。ある日、税関を通ったヴォーレという男性に何かを感じて呼び止めますが、彼は違法なものは何も持っていませんでした。数日後、ヴォーレを夕食に招いたティーナは、少しずつ惹かれていくのですが――。

 

「ボーダー 二つの世界」
監督:アリ・アッバシ
原作・脚本:ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト『ぼくのエリ 200歳の少女』
2018年/スウェーデン・デンマーク/スウェーデン語/110分/ R18+
配給:キノフィルムズ
公式HP:border-movie.jp 
TWITTER:border_movie_JP
©Meta_Spark&Kärnfilm_AB_2018
10月11日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて公開

――一瞬たりとも目が離せない不思議な物語でした。中盤でヴォーレが人間を敵対視する衝撃の展開がありますが、どうしてもヴォーレを憎めず、ヒドいことをしても嫌いになれませんでした。

アリ監督「実は、僕が個人的に最も共感できるのがヴォーレなんだ。思い入れが強いキャラクターで、彼がどんなことをしようとも、愛して欲しいと思っていたから、その反応は嬉しいな。ヴォーレには、ティーナが彼の側か別の側かを選び難いような行動をさせたい、という意図もありました。人から酷い扱いを受け、それが積み重なっていけば、相手を傷つけるという行動や芽生える憎しみの感情は、ごく自然なことですよね」

――ティーナは初対面でヴォーレに“何か”を嗅ぎ取り、興味を持ちます。そこから惹かれていくわけですが、“同族”としての“生理的・本能的”な共感や親しみが強かったのでしょうか。それとも純粋に男女が劇的な恋に落ちる激情が走ったのでしょうか。

「脚本の段階で、それについても話し合いました。確かにティーナは同族である匂いを感じ取ったには違いない。でも同時に、互いが未知の存在であり、それゆえ怖いという感覚も覚えたハズ。誰かに惹かれるとき、その感情の組み合わせは、これ以上ないほどのものだよね!? 気になるが怖い、という。でも黒人と白人と黄色人種が惹かれ合うことに何ら不思議がないのと一緒で、同族か否かはそれ以上、大きな意味はないと思います」

「この物語におけるヴォーレの役割は、ティーナに“初めて愛される経験を与える”存在、且つ真実までの道のりへと導く存在でもある、ということなのです」

 

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