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【NYで子育て】ニューヨーク流  小学生のイライラ解消法

  • 田辺幸恵

2019.10.24

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怒った私に娘が書いてくれたもの

ものすごく娘にイライラして怒ってしまったある時。

 

怒った私のために娘が書いてくれた紙

ふと寝室に戻ると、ベッドにノートの切れ端が1枚、置いてありました。

「ままのいらいらのかみ」

そう書かれた紙には 「いらいらするときにこのかみをくしゃくしゃにしてまたひろげる」と使い方?まで書かれています。

その日の私の地雷は、お風呂の蛇口の捻り方を娘が間違えたこと。

レバーをひねるだけでいい塩梅のお湯が出てくる日本と違い、かろうじて戦後に建てられた古い家に住んでいる私たちは、水とお湯の蛇口を自分で調整しないとちょうどいいお湯にはなりません。しかも蛇口がカタい。

蛇口のひねる方向を何度も何度も説明してるのに、間違え、「あつーい」「つめたーい」と言われても「もう何回も教えたじゃん。何度も同じこと言わせないでよー!」とフツフツ。

バスルームとリビングをバタバタと往復しながら、「そういえば、レゴまだ出しっぱなしじゃん」と他の「できてないところ」をあげつらえさらにイライラ。

そんな私をみて、娘が「いらいらのかみ」を作ってくれたのでした。

「自分で思いついたの?」と聞くと、

「いや、だってクラスで先生が怒ったりする子に紙をあげて『席に座ってぐしゃぐしゃにしなさい』っていうから、ママにもワークするかなって」

さっきまで怒ってたはずなのに、自然と笑顔になっていました。

障害ではなく「スペシャルニーズ」

娘はこの6月まで現地校の2年生。ニューヨーク市の公立小学校に通っているのですが、2年生の時のクラスが「ICT」(Integrated Co-Teaching Services の略)と呼ばれる「スペシャルニーズの生徒とそうでない生徒が一緒に学ぶクラス」でした。

アメリカでは発達障害や学習障害を「障害」ではなく「スペシャルニーズ」と言いますが、このICTクラスでは、スペシャルニーズの生徒の割合は1クラス12名以下、もしくはクラスの人数の40パーセント以下と定められており、先生は2名、そのほかに各生徒にサポートするティーチングアシスタントが授業中の生徒に寄り添います。

娘が通う小学校ではICTクラスが各学年1つあり、スペシャルニーズではない生徒はランダムに選ばれ、1度ICTクラスに入ると、その後はICTクラスに入らない決まりになっています。娘はこのランダムに選ばれた生徒でした。

昨年9月に2年生が始まり、クラス見学があった時は、体の大きな男の子が怒りっぽく席を立ったり、ずっとヘッドフォンをつけて俯いている生徒がいたのは結構な衝撃で、「先生方も大変だな。勉強は遅れずに出来るのだろうか」と思った記憶があります。

始まってみれば、そんな心配は杞憂に。

先生が2人いるので算数など主な授業はクラスを2グループに分けて行い、生徒1人1人に先生の注意が行き届きやすく、分からないところもカバーしてもらいやすいし発言もしやすい。勉強が遅れるということはありませんでした。

小学生なりのイライラ解消法

「このクラスだと自分の子供は集中できない」という理由で別のクラスに変えて欲しいと保護者が学校に掛け合い、クラスを移る子供もいましたが、娘はこのクラスで多くのことを学んだようです。それが「小学生なりのイライラ解消法」です。

紙をクシャクシャする以外に、娘たちのクラスで行われた2つの方法をご紹介しますね。

1つは「My mind is calm(私の気持ちは落ち着いています)」指遊び。「My mind is calm」と言いながら、親指を人差し指、中指、薬指、小指とそれぞれタッチしていきます。

いつでもこれを思い出せるように、先生が大きくプリントアウトした手の形に、親指にニコちゃんマーク、人差し指に「My」中指に「 mind 」薬指に「is」小指に「 calm」と書いたものをクラスに貼っていたそうです。

もう1つは、「Calming Center」。クラス内に「落ち着く場所」を作って、気持ちが高ぶったら行くことができる場所を作っていること。スペシャルニーズの子だけでなく、普通の生徒も使うことができるそう。

驚いたのは、テスト中であっても「Calming Center」に行けること。娘に「テストは時間内に終わらなくていいの?」と聞くと、「後から残ったものはやっていい」とのこと。

学年の途中であってもクラスを変えることができたり、生徒の様子に応じて対応を変える、ニューヨークらしい懐の大きさですね。



子供同士で学ぶこと

娘を見ていてすごいなと思うのは、スペシャルニーズのクラスメイトへの「偏見」などは一切ないこと。そして、自分がイライラしたことなどを子供同士で話していることです。

あるクラスメイトの女の子は、紙くしゃくしゃで落ち着いたのだとか。学習障害の生徒を「分ける」のではなく、一緒に学ぶことで子供同士で学ぶことも多いのだと感じました。

今年3月には、先生からハート型の紙をもらってきました。読んでみると

先生が書いてくれた娘のクラス内での様子

床に落ちたコーマックのクレヨンを拾ってあげたこと、椅子が倒れたセバスチャンを助けていたとクラスメイトを助けた様子が書かれていたのです。

誰か困っている人がいたら、手を貸してあげる。そんなことが自然とできるようになっていたのかと思うと、2年生スタート時には「勉強が遅れるんじゃないか」と心配していた自分が恥ずかしくもあります。今では「いらいらのかみ」とともに、ハート型の紙は、私の大事な「お守り」としてダイニングルームに貼ってあります。

9月からいよいよ3年生になった娘。「心」がどう成長していくのか、見守っていきたいです。

近所のイーストリバー沿いは家族のお気に入りスポット。遠くに見えるマンハッタンを眺めながら、自転車で走る娘を追いかけます(笑)

田辺幸恵 Sachie Tanabe

ライター/ライフコーチ

1979年、北海道生まれ。スポーツ紙記者を経て2006年にアメリカへ。2011年にニューヨークで長女を出産。イヤイヤ期と仕事の両立に悩みコーチングを学び、NPO法人マザーズコーチジャパン認定講師に。趣味は地ビール探しとスポーツ観戦。夫と娘(8歳)の3人家族。

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