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飯田りえ

なぜプログラミングを学ぶの?どうして必要? オリィ研究所が教えてくれたこと

  • 飯田りえ

2019.08.31

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子どものプログラミング教室がずっと気になっています。息子はレゴやロボットを作るのが大好きなので、その辺りから入っていけそうだけど…と、調べてみるも、2020年の必修化が追い風となって、巷には思考を凝らしたさまざまなプログラミグ教室が増えています。正直、どれがわが子に必要な教室なのか、余計に わからなくなってしまいました。

そもそも「なぜプログラミングを学ぶの?」 ここがはっきりしないと、踏み込めないのも事実。子どもに訊ねられたら…なんと答えますか?

論理的思考能力が必要だから? 遊び感覚でできるし、将来役に立ちそうだから? ITの人材不足が見込まれるから?

(子ども自身がやりたい!と言い出したらまだしも)この大義名分がはっきりしていなければ、たとえ教室に通っていても「方法論を学んでいるだけになってしまうなぁ」とモヤモヤ。しかし、そんな思いを解消してくれるワークショップが夏休み中に開催されました。主催したのは分身ロボットで有名な「OriHime(以下、オリヒメ)」を開発したオリィ研究所です。

オリヒメとは、離れた場所にいる人がそばにいるような存在感を伝える新感覚のロボット。すでに数多くの社会課題を解決しているロボットで、ご存知の方も多いと思います。例えば、テレワーク時も顔を合わせて会議しているような一体感を得られたり、長期入院や自宅療養中で学校に通えなくても教室で授業を受けている感覚になれたり、医療の現場でも発話が困難な病気や障がいをお持ちの方のコミュニケーションツールになったり…。そんなオリィ研究所だからこそ、この「なぜ学ぶのか」という部分を解明してくれるはず!ということで夏休みに開催されました子どもプログラミングに参加してきました。

玄関でオリヒメが「こんにちは!」とお出迎え

8月上旬、オリィ研究所内で3日間開催されました。これまでにも企業や団体向けには開催されていましたが、個人向けに開催されたのは今年が初めてなのだとか。以前からオリヒメに興味・関心のある親御さんから「『オリヒメ子どもプログラミング』はどこに行ったら受けられますか?」と問い合わせが寄せられていて、今回、初めてオリィ研究所内で開催されることに。対象は小学3〜4年生を中心に5~6人の少人数制。あっという間に定員一杯になったそうです。

実際に研究所内での体験とあって、この臨場感がたまらないですね。すぐお隣ではオリヒメの開発者である吉藤オリィさんはじめ、エンジニアの皆さんが実際にお仕事されているので、普通のプログラミング教室とは雰囲気も違います。実際にオリヒメを目の前にして、早速興奮気味の子どもたち。初めてのお友達と一緒にチームを組んで、プログラミング教室スタートです。

ロボットって何のためにあるの?プログラミングって?

まず「知っているロボットについてなんでもいいから教えて!」と、ドラえもんからペッパーくんまで身の回りのロボットを思い出しつつ「ロボットってなんだろう」「プログラミングってなんだろう」と、基本的な所から解説してくれます。プログラミング自体はコンピューターへ動作指示を出すことができて、それを使うことで人工知能やロボット、ゲームやアプリなどが作動することができるんだよ、とサラッと説明されましたが、さすがデジタルネイティブな子どもたち。この辺りの理解は大体出来ている様子です。そのあとは目の前にあるオリヒメについて。実際にどんな使われ方をしているのか動画を見ながら紹介がありました。

ここで大事なこと。オリヒメは何のためにプログラミングを使っているかというと『ひとりぼっちをなくす=孤独の解消を解決するため』なのです開発者の吉藤オリィさん自身、幼い頃から体が弱く3年間学校に通えない時期がありました。その時に感じた無力感や孤独感、それと同時に「人は誰でも、人に必要とされていたい」という人としての尊厳…、その課題観から今日のオリヒメが誕生したのです。

「オリヒメは誰かの孤独を解消するため、プログラミングを使っているんだ。あくまでもプログラミングは目的ではなく、手段なんだよ」と講師の先生がおっしゃっていたのが印象的でした。

ひと通りのお話の後、実際に腕や顔を動かして、オリヒメに触れてみます。ちょうど両手に乗せて持ち運びできる大きさが可愛らしいです。この存在感がありながら情報量を与えすぎないこのフォルムは、色・大きさ・形が何度も試行錯誤を重ねて到達した形なのだそう。まだ動かないオリヒメは無機質ですが、これがどんな動きを見せて、これから発表される課題について、どうやって解決するのでしょうか。いよいよ、チーム毎の取り組みが始まりました。

「入院している友達と花火大会に行くことになりました」どうやって楽しむ?

お題は3つから選ぶことができ「オリヒメを使って表現しよう!」という課題です。

①入院している友達と花火大会に行くことに。どうやって楽しもう?

②火星人の友達のところへ遊びに行くよ、言葉が通じなくても楽しませるには?

③夏休みの課題を忘れていて怒られそう。お父さんとお母さんにどうやってあやまる?

なんと難しい課題でしょう…! かなり想像力を働かせないと、アイデアが思い浮かびません(苦笑)。もちろん正解はないので「自分だったらこうしたい!」「オリヒメを使ってこんなことを叶えたい!」という素直な気持ちでアイデアを出し合う必要がありそうです。

それにしても、ある課題に対してオリヒメを使った結果、誰かの役に立つ。これは日ごろオリィ研究所のみなさんが取り組んでいることと同じですね!プチお仕事体験にもなっているなんて、さすがです。



アイデアとそれを形にするプログラマー…役割分担が!

長男のチームはいろいろ悩んだ結果、①の課題を取り組むことに。初めてあった4年生のAちゃんとペアで、彼女はお家でも通信講座で少し取り組んでいるそうなので、組み立て方がとてもお上手でした。一方、長男はそこまで慣れていないので、キーボードの操作にも四苦八苦しながらでしたが、アイデアはいろいろ出てくるので「ヒュ〜バンバン!みたいに、打ち上げ花火を動作で表現できないかな」「目をパチパチさせることでキレイな感じが伝わるかも?」とオーバーアクションで伝えます。すると、横でAちゃんがそのアイデアを形にしようと、どんどん相談しながらプログラミングしています。

初めて会った二人ですが、なんだか得意分野がそれぞれ活かされていて、とってもいい感じ!トライ&エラーを繰り返しながら、思った動きにならず失敗しても、その動きに大爆笑しています。「こうするにはどうしたらいい?」「角度が違うのかな〜」「もうちょっとこうしたいな」どんどん質問内容も具体的になって、とにかく相談しながら作り上げる作業がとにかく楽しそう。なるほど、プログラミングのやり方を教えてもらうのではなく、自分たちのアイデアを形にするために手段として使うプログラムなのですね!

チームごとに発表、そしてこれから自分が解決したい課題が見つかれば…!

最後はチームごとに発表です。こだわったところ、表現したかったこと、できなかった所なども発表し、実際に動かしてみせました。それぞれ、同じ課題でも表現の方法がいろいろあって「なるほど、そう考えたかぁ」と、ほかのチームの発表も刺激になりつつ、みんなの作品を認め合えるのが良いですね。今回は時間が足りず、発表が終わってからも理想の動きに到達したい一心で、残って作業していました。

何よりも子どもたちの楽しそうなこと! 目の前で自分たちがやりたかった通りにオリヒメガ動いてくれる、しかもそれが誰かの役にたつ…その喜びを十分体感できたのではないでしょうか。それにしても、子どもが主体的にやりたいことを見つけた時のアイデアやパワーってすごいですね!改めて、我が子が何を得意としていて、どこを活かしてあげればいいのかが客観視できた気がします。

こういった経験を通して「自分の考えたことで何か解決したい。そのためにプログラミングを学びたい!」と思えるようになった時でも遅くはないのかな?と思いました。その「何か」が見つけるのはあくまでも子どもたち本人。”手段”よりも”目的”を自分自身で見つけるには、やっぱり好きなことを追求したり自分の大切にしていることを考えたり、多様な社会を見せ、人と出会って体験していくことなのかなぁ…と。

今回、撮影のために特別に私も入らせてもらいましたが、親御さんたちは教室の外からオリヒメでワークショップの様子を見学されていました。通常開催ではないので、ぜひ気になる方はオリィ研究所のHPのこどもプログラミングページをこまめにチェックしてくださいね。

飯田りえ Rie Iida

ライター

1978年、兵庫県生まれ。女性誌&MOOK編集者を経て上京後、フリーランスに。雑誌・WEBなどで子育てや教育、食や旅などのテーマを中心に編執筆を手がける。「幼少期はとことん家族で遊ぶ!」を信条に、夫とボーイズ2人とアクティブに過ごす日々。

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