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佐々木はる菜

「船通勤」は可能か?【東京五輪などの混雑緩和に向けた社会実験・体験レポ】

  • 佐々木はる菜

2019.09.05

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皆さんは、通勤や通学に船を使おうと考えたことはありますか?
先日、朝の通勤手段として船を活用する実験に参加し、いつもならば慌ただしい朝の時間帯を船の上でゆったりと過ごしてきました。

東京五輪中の混雑を緩和?! 「船通勤」を実用化できるか検証

7月24日から8月2日の平日に行われた「真夏のらくらく舟旅通勤」。東京五輪期間中の渋滞や鉄道の混雑対策を始め、東京の水辺空間のさらなる有効活用と舟運活性化を目指して都が考案したもので、乗り心地やルートなどについて乗客からアンケートを集め、実用化できるか検証する目的で行われたそうです。区間は勝どき・日本橋間で、ラッシュ時間と重なる午前7時30分から9時までの間に15分間隔で運行していました。
東京オリンピック・パラリンピックまであと1年という区切りの時期でもあったせいか、ちょうど同じ頃、夫の会社でも全社をあげてテレワークの実験をしていましたが、同じ状況だった方も多いのではないでしょうか。

普段は気づかない、東京の魅力を感じるひとときに

私が乗船したのは勝どきで、当日は朝7時30分発の第一便を目指し、朝潮運河船着場に向かいました。

晴海トリトンスクエアの近くにある船着場。私が到着することには、すでに20名以上が並んでいました。

屋根あり、屋根なしなど船の種類は複数あったそう。私は屋根がないタイプの船で、真夏だったため乗客全員に麦わら帽子が配られました。

朝早い時間にも関わらず30名近くが乗船した船は、ほとんど満席だった印象。定刻通りに出港しました。

景色はゆっくりと楽しめる速さですが意外とスピード感もあり、前方から吹く風を全身に心地よく感じながら朝潮運河を進みます。小さな船ですが揺れはほとんど感じず快適。
そして運河を抜けると、レインボーブリッジやお台場、豊洲の街並みが!水面に近い、ここまで低い位置から東京の街を眺めるのは初めてで、普段以上にビルやタワーマンションが高く感じられ迫力がありました。

築地市場の横も通りました。去年取材でお邪魔したので、感慨深い…

船だからこその「非日常感」が魅力

工事中の永代橋を過ぎると、遠くではありますがスカイツリーの姿も…!暑いさなかでしたが、皆さんスマートフォンで写真を撮るなどしながら楽しそうに過ごしていました。そして隅田川から日本橋川へ入り、日本橋船着場へ到着。40分弱の時間でしたが、東京の名所なども多く楽しい船旅で、もっと短く感じました。

「混雑から解放された新しい通勤スタイルを是非体験してみませんか?」というメッセージと共に実施された今回の社会実験ですが、普段とは違う「船」という手段で東京の水辺を眺めながらの船通勤は解放感があり、水面や空、そして景色を眺めながらしばし日常から離れてリフレッシュできました。偶然乗り合わせた中には期間中ほとんど毎日乗船されたという方も!「とにかく、満員電車のストレスから逃れたい」という意見には深く共感しました…。



五輪を、日々の暮らしについて考えるきっかけにも

とっても楽しく大満足だった船旅ですが、一方で私の場合、実際に毎日船を使って通勤することは難しいかなと感じたのが正直なところでした。電車やバスの場合、移動にかかる時間はより短く正確で、急いでいる日やタイトなスケジュールの際はやはりそちらを選ぶと思います。
ただ、満員電車のストレスが深刻なこともまた、日本の課題のひとつ。”今日は時間に余裕があるので、ゆったり船で向かおうかな…”などその日の予定や気分に合わせて移動の手段も選ぶことができるようになれば、全体的な混雑が緩和されるだけでなく、より彩り豊かな日々になるのではないでしょうか。

また、今回の実証実験は五輪に向けた準備の一環でもあります。直接スポーツに関わることや、ボランティアなどで参加することももちろん素晴らしいですが、こういった今の時期ならではの取り組みに参加することや、それらを通して東京や日本の生活・暮らし方などについて改めて考えることも、自国開催の意義なのではないかと感じました。

2020年を前に様々な変化を見せる東京。こういった参加型の取り組みもこれからますます増えて行くのではないでしょうか。そして、私たち一人ひとりが自分のできる範囲で積極的に関わろうとすることが、五輪の成功に繋がっていくのかもしれません。
この盛大なイベントを機に、私たちの国がより暮らしやすい素敵な場所になっていくことを願っています。

佐々木はる菜 Halna Sasaki

ライター

1983年東京都生まれ。小学生兄妹の母。夫の海外転勤に伴い、ブラジル生活8か月を経て現在は家族でアルゼンチン在住。暮らし・子育てや通信社での海外ルポなど幅広く執筆中。出産離職や海外転勤など自身の経験から「女性の生き方」にまつわる発信がライフワークで著書にKindle『今こそ!フリーランスママ入門』。

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