LIFE

津島千佳

高齢者との対話から自分自身を見つめ直す「ダイアログ・ウイズ・タイム」

  • 津島千佳

2019.08.05

この記事をクリップする

あと30年弱で前期高齢者になる私。正直、先行きが暗いニュースばかりで年齢を重ねていくことに期待が持てません。

高齢化は恐怖ではなく、肯定的な財産と捉えることを目的としたイベント「ダイアログ・ウイズ・タイム」に参加し、改めて加齢をはじめ、人生にまつわる様々について考えてきました。

70歳以上の老人にアテンドされ、年齢を考える旅へ

暗闇の中を視覚障がい者が案内する「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」、静寂の世界を聴覚障がい者がアテンドする「ダイアログ・イン・サイレンス」に続く試みが「ダイアログ・ウイズ・タイム」。70歳以上の高齢者たちのアテンドにより、様々なプログラムを体験・対話しながら自身について考えるイベントです。

エントランスには、アテンドする方々の写真が掲げられていました。

会場に到着すると、謎のペンダントを渡され、プログラムスタート。

このペンダントが、のちのち重要なアイテムになるのです。

「ダイアログ・ウイズ・タイム」にはいくつかの部屋にわかれ、最初は年齢に対する自身の固定観念を揺さぶってくる質問が並んだ部屋へ。

「65歳以上になった時のプランを立てている?」「人は何歳になっても成長ができる?」と、先延ばしにしがちな問いかけが続きます。ここを眺めながら思ったのは、私は自分の年齢をあまり意識していないということ。2018年の日本女性の平均年齢は87.32歳で、私はあと40年弱でその年齢に達します。40年って結構短くないですか?

そろそろ逆算しながら生きていく年齢になったのかな、と思うと、もう少し年齢を意識した方がいいかもしれません。

おもりを装着して疑似高齢者体験!

続く部屋は真っ黄色! これは80代になるとほぼ100%発症する白内障の方の視野を再現したもので、アテンドのIXY(イクシー)さんが待っていました。


IXYさんの案内で足首や腕に装着するおもり、音が聞こえづらくなるヘッドフォンなど疑似高齢者体験ができるアイテムを身に着け、歩くことに。

いつもより手足が重いので歩きづらいですが、高齢者に比べれば、私はまだ筋肉があるので力を入れたら普段のように歩行できます。でも全体的に筋肉量が低下した状態で移動するとなったら……。

30代も後半だし、これからは痩せることより筋肉をつけることを意識した方がいいかも。

もちろん他人にも、それぞれの人生がある

次は青い照明の部屋。ここでIXYさんのこれまでをお話してもらいます。


終戦直後に生まれたIXYさんは就職のために上京。その後、結婚して4人のお子さんを育てます。と、ここまではわりとよくある話かもしれません。

育児を終えた51歳で離婚し、自宅を改装してカフェをオープン。そして昨年、破産というどん底を経験しながらも、自宅は残ったし、自分の誕生日に友人が集まってパーティができたと、不運だと見られがちなこともポジティブに捉えながら話してくださいました。

高齢者と一括りにしがちですが、一人ひとり紆余曲折があって人生は違う。当たり前のことかもしれませんが、人生のディテールはそれぞれとじっくり話さないとわからないことでもあります。どうしても同世代と話す機会が多いので、高齢者だけでなく、10代などの若い世代とも交流して考えが凝り固まらないようにしないと。



私だけが退場。「なんで!?」でいっぱいに

続くピンクの部屋ではIXYさんとメンバーでジェンガを踊ります。

実はプログラムの途中で、急な別れを告げられる場面があります。急に倒れて、そのまま亡くなる人ってこういう気分なのかもしれません。
最後はこれからどう生きたいかなどを話し合い、プログラムは終了。

我が家は核家族のため、息子は曾祖母(私からすると祖母)と日常的に触れ合えません。
私が子どもの頃は祖母に戦争をはじめとする体験談などを聞いていましたが、息子にはそういう経験がなかなかできないのが現状。自身を振り返るイベントですが、子ども世代が昔の貴重な話を聞く機会としてもいいかもしれません。

残念ながら「ダイアログ・ウイズ・タイム」の会期は終了しましたが、2020年には「ダイアログ・ウイズ・タイム」「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」「ダイアログ・イン・サイレンス」のプログラムが体験できるミュージアム「対話の森®」が東京・浜松町にオープン予定。ミュージアムオープンに向け、現在クラウドファンディングに挑戦しているとのこと。多様な視点を持つため、親子で遊びに行ってください。

「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」の公式サイトはこちら!

https://did.dialogue.or.jp/

「対話の森®」クラウドファンディングのサイトはこちら!

https://readyfor.jp/projects/dialogue

津島千佳 Tica Tsushima

ライター

1981年香川県生まれ。主にファッションやライフスタイル、インタビュー分野で活動中。夫婦揃って8月1日生まれ。‘15年生まれの息子は空気を読まず8月2日に誕生。

LEE公式SNSをフォローする

閉じる

閉じる