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津島千佳

発酵天国・日本! 『Fermentation Tourism Nippon』で全国の発酵食品に出合おう

  • 津島千佳

2019.05.16

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少し前に流行った塩麹。今、注目を集めている甘酒。そして最近、私の周囲には味噌を手作りしている友人がチラホラ。いずれも日本を代表する発酵食品。醤油や酒は料理に欠かせないし、日本発ではないけれど、チーズやヨーグルト、ワインも好きな私はふと思いました。「日本に発酵食品っていくつあるの?」と。
そんな私の疑問に応えるイベント『Fermentation Tourism Nippon 〜発酵から再発見する日本の旅〜』が渋谷ヒカリエ8階にあるd47 MUSEUMSで開催中。47都道府県の発酵食品が大集合とのことで取材に行ってきました。

日本は世界有数の発酵食品大国!

このイベントのキュレーターを務めるのは、発酵の研究を続ける発酵デザイナーの小倉ヒラクさん。小倉さんが全国津々浦々を旅して見つけた「これは!」と思う発酵食品を紹介するのが本イベントの柱です。会場に入ってまず思ったのは「日本、発酵食品ありすぎ!」ということ。

北や南に行くほど、食品が想像できない名前ばかり。東北の『ごど』、『あざら』、九州の『むかでのり』、『なり』って何?

多湿で海に囲まれた日本は発酵に適した環境のため、世界有数の発酵大国。そのため食材も加工術も様々にあり、発達したとのこと。だからといって本イベントでは、ただ有名なものをピックアップしているのではありません。

●食品が被らないこと(兵庫で紹介した清酒は他の地域では紹介しないなど)
●最低3代ぐらいは地元で受け継がれている、その地に根付いたもの

というルールに則ってセレクトされています。
さらに地域によってそれぞれ特徴があるとのことで『海』、『山』、『街』、『島』の4カテゴリに分けて紹介しています。

3年かけて猛毒を抜く! 日本らしい水辺の加工文化

「こんなものまで発酵させるのか!」というもののオンパレードだった『海』カテゴリ。かつては肉食ができず、海に囲まれた日本らしい魚介の加工品がバリエーション豊富に揃います。
北海道の生魚を凍らせるルイベは知っていましたが、塩漬けにして発酵する『山漬け』というものもあります。

保存性を高め、食中毒のリスクを減らすだけでなく、野菜に代わるビタミン補給源でもあったとか。
また名前の印象とは全く違うのが、宮崎の『むかでのり』。

海藻を天日干しにして味噌漬けにしたもので、虫を想像させる名前に反し、見た目はお漬物やこんにゃくのよう。地元でも知る人が少ないとのことで、見かけたらぜひご賞味を。
3年かけて猛毒の部分を解毒し、食べれるようにした石川の『フグの卵巣糠漬け』も強烈。

3年もの長い年月をかけて、わざわざ猛毒の部分を食べるのか。でも試食してわかりました。これ、おいしいわ。日本人の食への探究心のすごさというか、食いしん坊ぶりに圧倒されました。

『山』には地域に根ざした加工品がズラリ

日本の地域性が出た発酵食品が並ぶ『山』カテゴリ。ここには山形の『煎じきうり』なる、一部の家庭でしか作られていない発酵食品も紹介されています。

今も発酵させており、会期が進むに連れ、どんどん完成形に近づいていくとのこと。イベント終了直前には会場が発酵した香りに包まれているかも?
高知の『碁石茶』も独特。

茶葉をカビ付けする一次発酵、茶汁を加えての二次発酵を経た日本には珍しい発酵茶。ルーツには中国の少数民族が作るお茶があるようで、なぜそんなお茶が高知の山奥に伝わったのか、歴史的な観点から見ても興味深い。



おなじみの発酵食品が続々な『街』

経済を回すため、貿易を目的として作られていた酒や調味料といったものが『街』カテゴリに属します。

このカテゴリにある奈良の『奈良漬』もそうですが、実物の匂いを嗅げるのも本イベントの楽しみの一つ。

先人のアイデアに感服する『島』

究極の閉鎖環境である島。恵まれた環境でないことが多いため、奇想天外な珍味が大集合しているのが『島』カテゴリです。
鹿児島の『なり』は、台風などによる飢饉がよく発生していたため、災害の備えとして作られていた奄美諸島の麹。

ソテツの身から中毒成分を抜いた麹で、これで味噌を仕込むなどしていたそう。ソテツの身から麹を作るという発想に脱帽。脱帽といえば、長崎の『せん団子』も、その手間のかけ方に驚いた保存食。

ざっと作り方をご紹介します。

(1)収穫したサツマイモを生のまま砕いて、水に浸して1カ月ほど発酵させる

(2)イモを水から引き揚げ、袋にくるんで発酵させてから柔らかくする

(3)柔らかくなったイモを団子状にして野外に置くと、カビ類や細菌類がつく

(4)カビが付いた団子をまた水にさらし、灰汁を取り除きながら熟成させていく

(5)熟成が進んだ団子を濾してでんぷん質を沈殿させ、でんぷんを小さな団子状に成型し直して軒先で乾燥させる

「千の手間がかかる」ことが名前の由来になっているだけあって、大変すぎる……。でもそうやって昔の人が懸命に生きてきたから今があると考えると、発酵食品の歴史の奥深さがビンビンに伝わってきます。

発酵食品の展示とともに、それぞれが生まれた背景などのエピソード、レシピも紹介されているので情報量が多く、じっくり見学することをおすすめします。途中でお腹が空いたら、同フロアにあるd47食堂にて期間限定で提供している『発酵定食』を食べても。

『発酵定食』第一弾の『麹づくし定食』は〜5月14日(火)までに提供。次の提供は5月27日(月)〜『珍味づくし定食』となります。

さらに会場で紹介しているものをはじめ、様々な発酵食品も売られています。

醤油は全国各地のいろいろなものが小瓶で売られているので、味比べをしてもいいかも。

発酵大国・日本のすごさを体感しに、ぜひ足を運んでください。

『Fermentation Tourism Nippon 〜発酵から再発見する日本の旅〜』
会期:〜2019年7月8日(月)11:00〜20:00(最終入館19:30)
場所:東京都渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ8F d47 MUSEUM
入場料無料
http://www.d47museum.com

津島千佳 Tica Tsushima

ライター

1981年香川県生まれ。主にファッションやライフスタイル、インタビュー分野で活動中。夫婦揃って8月1日生まれ。‘15年生まれの息子は空気を読まず8月2日に誕生。

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