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松崎のり子

教育資金の贈与に税金がかからない制度が延長に

  • 松崎のり子

2019.04.30

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2019年3月31日までの時限制度とされていた「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」が、延長されることになりました。

この制度は、祖父母などから教育資金を贈与された場合、1500万円までなら贈与税がかからないというもの。余裕資金がある世代から、子ども・孫世代に資産を渡し、活用してほしいという狙いがあったものです。一時的な措置として始まった制度ですが、文部科学省などから期限延長の要望が出ており、それが認められて2012年3月31日までと2年延長されることになりました。

しかし、条件や内容が変更されているので、確認しておきましょう。

一つには、所得制限が設けられたこと。贈与を受ける子・孫世帯の年間所得が1,000 万円を超える場合には、制度を利用できません。これは、元々裕福な家庭にはこの制度による支援は必要はないだろうという考え方。お金持ちだけ優遇されるのではという批判を避けるためもあります。次に、30歳までとされていた贈与を受ける側の年齢が、在学中であることを条件に40歳まで継続になりました。教育資金には学校教育法で定められた学校等への入学金・授業料が入りますから、大学院や各種学校も含まれるので、社会人になって以降のいわゆる学び直しにも使えることになりそうです。ただし、教育費とされる範囲も見直しになっています。これまでは、学校等に納める授業料などのほかに、塾やスポーツ、芸術に関わる習い事も認められてきました。それが、贈与を受ける人が23歳以降の場合は、こうした習い事は原則対象外になっています。

延長はされたけどデメリットもあり

この制度を使いには注意点がいくつかあります。

まず贈与である以上、その証拠を残しておかなくてはいけません。そのため、専用の口座(孫名義)を信託銀行などの金融機関に開いて、そこからお金の払い出しをする必要があります。また、教育資金以外に使ったお金や、30歳までに(今回は在学中に限り40歳まで延長されましたが)使い切れず残った金額については、贈与税がかかってしまいます。

わざわざこの制度を使わなくても、祖父母から教育費を援助してもらうことは可能です。肉親(例えば祖父母が子どもである孫の親へ)から生活費や教育費としてその都度直接出してもらっても、税金はかからないからです。なお、贈与をする祖父母世帯も、あとから老後資金が足りなくならないとも限らないので、贈与する金額をいくらにするかは慎重に考えたほうがいいでしょう。こうしたメリットデメリットを理解したうえで利用するべき制度です。

松崎のり子 Noriko Matsuzaki

消費経済ジャーナリスト

消費経済ジャーナリスト。雑誌編集者として20年以上、貯まる家計・貯まらない家計を取材。「消費者にとって有意義で幸せなお金の使い方」をテーマに、各メディアで情報発信を行っている。

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