FASHION

ビショップ出西店を訪ねて、ふらっと出雲の旅へ。

  • 中沢明子

2019.03.22

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シンプルでありながら、機能美を備えたアイテムが豊富に揃うセレクトショップのビショップ。新店を島根県・出雲でオープンとのニュースを聞き、詳しく話を聞いてみたら、最近、器好きの間で人気の高い民藝の窯元、出西窯(しゅっさいがま)の近くに出店するとのこと。とっても素敵なロケーションの予感。行ってみたい……。

というわけで、私・ライター中沢がプレス内覧会に参加してまいりました! せっかく出雲の国へ行くならと、前から訪れたかった出雲大社にも立ち寄って、「一泊二日出雲ぶらり旅」に。ビショップ出西店を訪ねたプチ旅ルポをお届けします。

 

豊かな出雲の自然の中にひょっこり現れる、ビショップ出西店

 

出雲に着くなり、なぜかオムライスを食す

東京・羽田空港から1時間ちょっとで出雲“縁結び”空港に到着。目的地・出西窯までは車で約20分ですが、内覧会スタート時間まで余裕があったため、途中でいったん降り、まずは腹ごしらえ。出雲といったら出雲そばが定番でしょうが、私は昔、オムライスがおいしい店を訪ねる会をやっていたほどなので、出雲そばの誘惑を振り切り、オムライスが評判の洋食店「クルトン」へ。ふわっふわな卵がとろけるオムライスと濃厚でどこかほっこりする味わいのプリンをいただきました。ふほー、大満足。

 

どこか懐かしい味のふわとろオムライスとプリン。

 

クルトンからてくてくのどかなあぜ道を10分ほど歩き、日本で唯一のキルト美術館という「出雲キルト美術館」に到着。古布を使った和キルト作家として有名な八幡垣陸子さんの作品が、美しい古民家にゆったりと飾られた趣のある美術館でした。ついさっきオムライスとプリンを食べたばかりなのに、喫茶スペースでつい、おいしそうなお抹茶と和菓子のセットをオーダーしてしまう私。手の行き届いた中庭と八幡垣さんのキルトを眺めながら、しばし休憩。美術館の方に車を呼んでいただき、いざ、旅の目的地、ビショップ出西店と出西窯がある「出西くらしのvillage」に向かいました。

 

出雲キルト美術館では、簡単に作れるキルトセットや古布なども購入できます。お抹茶と和菓子をいただきながら、ショップを眺めてみてはいかがでしょうか。

 

いよいよ、ビショップ出西店のある「出西くらしのvillage」へ。

「出西窯? あの窯の目の前に明日、何かおしゃれなお店がオープンするそうですよ」と語るタクシーの運転手さん。おお、ビショップ出西店、地元の方の間で噂になっている! 「もうすぐ着きますよ。ほら、あそこです」と運転手さんが指さした先には、山と空と畑が広がる風景にしっくりと馴染みつつ、一方で、今の風を感じさせる、キリっとした佇まいの新しい建物がありました。

「すごい場所にお店をオープンしたなあ」。

おそらく訪れた誰もがそう思うでしょう。駅に近い商業施設に入店しているケースが多いビショップにとっても、大きなチャレンジであるはず。ショップに入ると不思議な感覚がありました。「オーシバル」や「ダントン」「ジムフレックス」「ファルケ」などの商品が並ぶ店内と窓から見える豊かな自然は、ギャップがあるだろうと思いきや、全然なかったのです。まるで、ずっと前からここにお店があったように……。機能的な良い意味で流行に左右されないアイテムを多数扱うビショップの哲学と出西という場所が響き合い、心地よいハーモニーが生まれていることが、とても興味深いと思いました。さりげなく服と一緒に飾られている出西窯の器も居心地が良さそう。日々使い込まれるからこそ際立つ機能美を備えている点が共通しているからでしょうか。

 

出西窯、くらしの陶・無自性館、ビショップ出西店、ル コションドール出西が集まっている。

 

店内のあちらこちらに飾られた出西窯の器が素敵。

 

目の前には、ビショップでも取り扱っている民藝の窯元「出西窯」があります。希望すれば工房を見学できるということで、出西窯の多々納真さんに案内していただきました。日常使いにふさわしい丈夫さと、ぽってりとした風合いが魅力の出西窯の器は55年前に作られた登り窯で焼かれます。1200度から1260度で2昼夜、松の割木400束を使って火を焚き続け、2日間、冷まして窯から出すそう。ただ、昨今、松が減少し、最適な割木が貴重になっているのが窯元の悩みの種。登り窯で焼く回数を減らしたり、別の木で火を焚いてみたりと、工夫をしているそうですが、需要に供給が追い付かない状況が続いています。

 

熱い口調で説明してくださった出西窯の多々納真さん。一枚、一枚、職人さんが丁寧に型をとり、仕上げていく。若い職人さんも修行しながら、ものづくりに集中していました。

 

出西窯の隣には、明治初期の米蔵を譲り受けて移築・増改築をした展示販売館「くらしの陶・無自性館」があります。こちらを訪れれば、豊富なラインナップから、好きなだけ(!)出西窯の器を購入できます。ずっしりとした重みが特徴なので、たくさん買い物をしたら、その場で郵送をお願いしたほうがいいかもしれません。

 

休憩スペースもあり。店頭で購入したピリッとした味の柚子ジンジャーエールがおいしかった!

 

出西窯の裏手にあるのは、ベーカリーカフェ「ル コションドール出西」。40~50種類のパンが並びますが、日によって午後の早い時間に完売になります。運よく滑り込みセーフで購入できたパンは、めちゃうまでした。イートインスペースがあり、パンだけではなく、カレーも人気。スパイスが効いた本格派でした。

 

カレーとオープンサンドは味はもちろん、”映え”も抜群。

 

出西窯、無自性館を中心にビショップ、、ル コションドールが集まった「出西くらしのvillage」。島根の“観光名所”としてさらに注目されるのは間違いないですが、地元に住む方々の「くらし」の中に溶け込む存在になることが、ビショップ出西店の本来のあり方だろうと思います。翌日のオープン日にも足を運んでみたら、地元の方々がたくさん来店し、大賑わいでした。なぜか自分の店のような気分で「おお、まずはよかった、よかった」と私も笑顔になりました。

 

出雲に行くなら、出雲大社はマストってことで。

夜は出雲大社前にある老舗「竹野屋旅館」に宿泊。竹内まりやさんのご実家としても有名です。地元の食材を使った豪華な夕食タイムには、竹内さんと夫の山下達郎さんの曲がBGMで流れていました。ちなみに、売店には出西窯の器から夫妻のツアーグッズなど、レアなアイテムが並んでいて、そちらも見どころです。

 

竹内まりやさんの名盤『TRAD』のアルバムジャケットが撮影された階段も。

 

翌朝は早起きし、朝食前に出雲大社へ。さすがに早朝は人影も少なく、空気も澄んでいて、境内を歩いていると、バタバタした日常と離れ、心が鎮まります。朝食をいただいてから、もう一度、出雲大社に向かうと、今度はたくさんの人で賑やかになっていました。ぐるりと一周し、ご朱印をいただいて、出雲大社を後にしました。大社前の通りで、ぷっくりふくらんだお餅が浮かぶ出雲ぜんざいを食して、一泊二日出雲ぶらり旅はおしまい。たった一泊でしたが、充実した時間を過ごせました。出雲、また行こうっと。

 

「因幡の白うさぎ」神話から、境内には白うさぎの像がたくさん。うさぎ好きなら、全白うさぎを制覇してくださいね。

 

取材・文・写真/中沢明子

 

 

「ビショップ 出西店」

島根県出雲市斐川町出西字高林 1358-3

TEL 0853 25 7332

10時〜18時 火曜休

「出西窯」

「くらしの陶・無自性館」

島根県出雲市斐川町出西3368

TEL 0853 72 0239

9時30分〜18時 火曜休

「ル コションドール 出西」

島根県出雲市斐川町出西3368

TEL 0853 27 9123

9時30分〜18時 火曜休、第2・4水曜休

ビショップ公式サイト

出西くらしのvillage公式サイト

中沢明子 Akiko Nakazawa

ライター・出版ディレクター

1969年、東京都生まれ。女性誌からビジネス誌まで幅広い媒体で執筆。LEE本誌では主にインタビュー記事を担当。著書に『埼玉化する日本』(イースト・プレス)『遠足型消費の時代』(朝日新聞出版)など。

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