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産前・産後の暮らしの些細な変化

夫に理解されづらい妊婦時代のプレッシャー3選

  • 高見澤恵美

2019.03.08

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妊娠し、ひとりの体ではなくなった瞬間から、母体にはさまざまなプレッシャーがのしかかるもの。

産前・産後の些細な変化シリーズ」、今回は、このプレッシャーについての夫婦間共有について取材を敢行。

「悪阻を乗り越えなきゃいけないプレッシャー」「気分の浮き沈みが押し寄せるプレッシャー」「陣痛へのプレッシャー」等は、夫側も想像しやすいのか、「理解してくれた」と感じる妻が多かったものの、「悪阻や陣痛に比べると些細なことかもしれないけど、実はこんなしんどいことも抱えてたんだよなぁ……」と妻たちが振り返るプレッシャーも存在。

「夫に妊娠を交代してもらえるわけがないので、本当の意味で分かってもらえるとは思っていない。自分で乗り越えるしかないプレッシャーもある」と捉える人が多いものの、「もうちょっと理解してもらいたかった」と感じたママが多かった3種類のプレッシャーについて取り上げます。

1:行動制限系プレッシャー

まず多かったのは、「転べない」、「やたらと走れない」ことへのプレッシャー。夫から「そんなの理解してるけど?」との声が聞こえてきそうですが、「こればっかりは身重にならないと分からないプレッシャー」と断言する妻が目立ちました。

イラストレーション/烏山ミライ

・「妊娠前は遅刻しそうになると早歩きしたりダッシュして間に合っていたけど、妊娠後はそうはいかなくなり、何度も遅刻を。駅から会社までの道での猛ダッシュができなくなったせいか、通勤時間がプラス12分ほどかかるように! 移動時間は長めに見積もらないといけないのが地味に大変で。夫とのおでかけでも、『電車行っちゃうよ!』とホームで駆け込まれたりすると、『あ~、転べないプレッシャーへの無理解ってつらいわ』と思ってました(苦笑)」

・「妊娠中は転ぶべからず、なんて当たり前のこと過ぎて、妊婦はあえて語らないけど、自分にとっては結構大変だった。妊娠前、何もないところでつまづいたり、ゴミ箱に激突してコケていた私。『天然?』『癒し系だね』なんて独身時代は結構評価されたけど(笑)、妊婦が派手に転んだらシャレにならない! 常に足元に目をやって、一歩一歩慎重に歩くように。前かがみ姿勢が身について、肩凝りがつらかった。夫からは『なんかキャラ変わった? しっかりしたね』と、何度も残念そうに言われてました……」

・「通勤中にターミナル駅で乗り換える際、階段を使用するのですが、足元に気をつけなくてはならない妊娠中は“恐怖の階段”と化した。妊娠前は、宝塚の大階段で踊れるんじゃないかというくらい、足元を見ずにダダダダダッと階段をのぼりおりできていたのですが、必ず手すりにつかまるように。雨や雪の日の階段や道も、おそるおそる歩いてました! 産後はもう身軽! 転ぶ自由あり! と一瞬解放感を味わいましたが、今度は抱っこ紐で赤子を抱えるようになり、転べない日々、継続中。休みの日、夫は抱っこ紐装着をいやがるのですが、変わってほしい気持ちも理解してよ……」

2:食事制限系プレッシャー

続いては、食事について。時にはそばにいる夫が自由に飲み食いしている姿もイライラの対象になるようで……。

・「妊娠前は、オメデタ判明後はカフェインやアルコールがNGなんて当然だし、さほど大変ではなかろうと思っていたのですが、仕事中にコーヒーや栄養ドリンクをガブガブ飲んで眠気を飛ばすのが習慣になっていた私は、カフェイン断ちがとてつもなくしんどかった! もう、半分中毒の域だったのでしょうか、休日の朝、夫が豆をひいて丁寧にいれるコーヒーの香りがどれだけうらめしかったことか……。妊活中からタンポポコーヒーなどノンカフェインの飲み物にシフトするのは正解! 授乳中まで楽だと思いますよ」

・「妊娠中、夫の実家に遊びに行くと、『ヘルシーだから』と毎回お寿司をとってくれたのですが、もともとお腹を壊しやすい私、妊娠中の生ものが怖くて……。でも毎回卵やボイルのえびばかりじゃ気まずいし……。ある日、意を決して『産まれるまで生ものは控えようと思いまして』と呟くも、『最近の人は気にし過ぎ! 私の頃はなんでも食べてたわよ!』と怒られ、妊娠中のナーバスな時期だったこともあり、大喧嘩&号泣(産後も関係は最悪)。夫も、姑ともめる私を見て無言に……。肩を持ってくれてもいいのに!」

・「妊娠中は、健診の体重測定がプレッシャーに……。1人目のときは厳しい産婦人科に通っていたので、6カ月で『おやつは芋だけにするように!』と言われ、節制の日々を。傍らでシュークリームなどをむさぼる甘党の夫には本気でイライラしました。水でも体重が増える妊婦だったもので、産む直前まで体重のことで頭がいっぱい……。産院で入院中のお祝い膳で、久しぶりに高カロリーのものを食べられた時は感激のあまり涙が止まらなかった。今振り返ると、健康で平和だったな……とも思えますが、私にとって、妊婦生活=体重制限プレッシャーとの闘いの日々でした」

・「12週頃、食べ悪阻が終わった段階で6キロ増。残りの期間で6キロしか増やしちゃいけないと産院で指導され、食事制限……。生きてきた中で一番過酷なダイエット生活を経験している感覚でした。『お腹に赤ちゃんいるんだから、2人分食べなよ。おふくろは20kg増えたけど、オレを無事産めたらしいよ』と時代遅れな主張をしてきた夫とは、本気で離婚を考えた瞬間も……」

3:人混み系プレッシャー

ラストは、妊婦にとって人混みがどれだけ怖い存在か……について。

・「お腹を押されたりする恐れのある、朝晩の満員電車が怖かった。夫に相談すると、『一番混雑する時間帯は避ける。マタニティマークをつけて、優先席の車両に乗る。これで母体を守るしかないだろ。お腹を守れるのは母親の君しかいないんだから。できないなら、通勤をあきらめることも視野に入れるべき』と返され、他人事な言い草にムカッときた。正論かもしれないけど、『マタニティマークをつけても、おされるときはおされる! 妊婦の大変さを分かってない!』と泣けてきました……」

・「妊娠前はめったに風邪をひかない体質だったのに、妊娠後は、咳やくしゃみをしている人と会話するだけで風邪をもらう体質に……。しかも一回風邪をひくと、強い薬は飲めない時期なので、治りも遅く、しんどさMAX! 人混みに買い物に出るのが怖くなり、買い物はひたすらネット。夫は『産まれたら忙しくなるんだから、今のうちにイベントとか旅行に行こうよ』と色々提案してくれたけど、行って体調不良に陥ったら……と思うと、断るしかなかった」

・「上の子が通う保育園のイベントが恐怖だった。インフルエンザやら、りんご病やら、常に病気が流行ってるし、相手は子どもだけに、よだれ等の飛び散りは回避しがたく……。常にマスクしてたけど、できれば夫に変わってほしかった!」

・「風疹の抗体がないまま妊娠。医者に『人混みに行かないでね』と言われ、中期が終わる頃までは引きこもり生活を。男友達とのフットサルやらBBQやらで出かけていく夫に『男は身軽なまま親になれていいよね!』と内心ブチ切れ、実家に戻ったりしてましたね」


今回の3選については、中には「プレッシャーはまったく感じなかった」「気にせず過ごしてた」といった声も一定数寄せられ、個人差がある内容ではあるものの、日々重荷に感じる妊婦が多いのも事実。

とはいえ、「産んでしまえば、このプレッシャーすらなつかしく思えてくるから大丈夫」、「産後はめまぐるしい毎日で、妊娠中のしんどさはすぐ忘れる。些細な悩みをいくつも抱えていたな……くらいの、よき思い出に」、「絶対安心な出産なんてない。プレッシャーを感じ、慎重に行動することは悪いことではない」といった振り返りコメントも。

そして、「夫に完全に理解してもらうのは難しいと思う。ただ夫が分かろうとしてくれるだけでも、プレッシャーが半分になる気がして」という声も。些細なプレッシャーと思わず、「こんな大変さもあるんだよ」と伝えてみるのも、健やかな妊婦生活には大切なことなのかもしれません。

高見澤恵美 Emi Takamizawa

LEEwebエディター・ライター

1978年、埼玉県生まれ。女性誌を中心に女性の性質や人間関係の悩みに迫り、有名無名千人超を取材。関心あるキーワードは「育児」「健康」「DIY」「観劇」など。家族は夫と4歳の息子。

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