ファミリーカーというと、今はハイトワゴン軽やミニバン、SUVといったモデルが幅を利かせていますが、チャイルドシートやジュニアシートを卒業し、すっかり大人の仲間入りをした子どもと一緒なら、セダンという選択肢もアリですよね!
ホンダから新しく登場したのが、セダンスタイルを持つインサイトです。
この名前を持つクルマとしては3代目にあたり、車格としてはシビックとアコードの間に位置するモデルですね。
インサイトといえば、1999年の初代からハイブリッド専用車。
ハイブリッドカーの黎明期に登場した初代は、2人乗りの先進的なスタイルを持ったクルマでした。
2009年に登場した2代目は、ハイブリッドカーをもっと普及させたいという思いから5人乗りのハッチバック車になりました。2代目の登場が与えたインパクトは、当時とても大きなものでした。近く発売が予定されていた2代目プリウスよりも一足早く登場し、しかもそれが189万円というかなり手ごろな価格だったため、プリウスの予定販売価格が下がったと言われたほどでした。
そして3代目となる新型は、ハイブリッド専用車であることは変わらず、上質感のただようセダンに生まれ変わりました。
ハイブリッドシステムとしては、ホンダ独自の「スポーツハイブリッドi-MMD(アイ-エムエムディー)」というシステムが搭載されています。
これは、モーターによる走行を基本としながら、必要に応じてエンジンを始動するというもので、走行状況にあわせて「EVドライブモード」「ハイブリッドドライブモード」「エンジンドライブモード」の3つの走行モードを、クルマが自動的に選んでくれるようになっています。
実際に走ってみると、走行モードの変化はほとんど気がつかないレベル。メーター内のデジタル表示を見て、「そうなのか!」とわかる程度です。
どっしりとした安定感があり、しっかりと路面をとらえていながらも、ヌルヌル~と滑るような上質な乗り心地が感じられ、ほんの数百メートル走っただけで、「よくできてるな~」と実感しました。
ECONモードという燃費重視モードでは、必要以上にパワーが出ないように制御され、加速が抑えられる感覚がありますが、スポーツモードにすると、出足の軽さとともに機敏さが強調され、スイスイ走ってくれます。
モーターは発進時から地面を蹴る力(トルク)が最大になるので、とても力強い加速が感じられますよ。
インテリアはシンプルで落ち着いた雰囲気。運転席と助手席は、サイドサポートが立った形状になっていて体にフィットするほか、シートヒーターも付いているので、空調温度を控えていても体がしっかりと温まります。
運転席の位置はそのままで、後ろの席に座った状態では、足元にゆったりとした空間が広がっていました。
ハイブリッドカーではシステムの関係でラゲッジスペースが狭くなりがちですが、新型インサイトではパワーユニットを小型化して後ろの席の下に配置することによって、516リッターという広い荷室を確保しています。
先進の安全運転支援システム「ホンダセンシング」も全タイプに標準装備されています。
最後に。今回は試乗会での取材だったのですが、そういった場では開発者の皆さんとお話する時間が設けられています。
「走ってみてどうでしたか?」とか「インテリアの印象はどうですか?」と聞かれたり、逆にこちらが疑問点をぶつけたりして、新型車への理解を深めるわけです。
そこで、こちらから「一番苦労した点は?」と聞いてみると、「これまでエンジンルーム内に入れていたバッテリーを室内(シフトの真下)に入れたところです」という答えが返ってきました。
隠れていて見えない部分ですし、それがどれだけ大変なことなのか、なかなかユーザーとしてはわかりづらいのですが、クルマの開発ってそういうことの集大成といっていいものなんですよね。
そもそもハイブリッドカーは部品点数が減るということはなく、そのためのスペースが必要になってきます。技術が進歩しシステムが複雑化していくなかで、荷室容量を減らすことなく、部品の置き場所を確保するのがポイントになってくるわけです。
そこで考え出されたのが、シフトの電動化。通常AT車のシフトレバーの下には、機構が入っているんですが、それを電動化することで空間ができた。そこにバッテリーを埋め込むことができたということです。
これには、さまざまな試行錯誤があったと思いますが、2代目のインサイトでは機械式のシフトレバーでしたから、それから年月を経て、技術が向上し、ボタン式のセレクターが採用されたことによって実現できたというわけなんです。
開発者のみなさんに色々なお話を聞けるのも、試乗会の醍醐味なんですよね。
セダンというと、40代以上の方には、オーソドックスなスタイル、と感じられるかもしれませんが、ミニバンで育って来た20代や30代の人たちにとっては、目新しく感じるスタイルかもしれませんよね。
スライドドア付きの便利なクルマもいいけれど、これからは少し大人っぽく、ファミリーカーをセダンにしてみたい、という方には、インサイトもいい選択だと思いますよ!
ぜひ、実際に試乗してみてください。
スーザン史子 Fumiko Susan
カージャーナリスト
出版社にて雑誌編集に携わった後、自動車ジャーナリストに転身。女性誌や専門誌、web等で、主に車関係の記事を執筆。10年に息子を出産、ママ目線での車の使いやすさにも注目するかたわら、安全運転講習の講師を務めるなど、クルマ生活に役立つ情報を提供している。日本自動車ジャーナリスト協会会員。