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佐々木はる菜

出産離職組の私が見つけた“ここちよい働き方”・地域女性を応援する会社「ポラリス」の取り組みとは?【前編】

  • 佐々木はる菜

2019.01.17

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現在ライターとしてお仕事をさせていただいている私ですが、いわゆる「出産離職組」で、現在の働き方に行きつくまで、様々な模索と試行錯誤を5年ほど続けてきました。

再び仕事をしたいという思いは持ちながらも、「一度会社勤めを離れてしまった上に“子育て中”の自分に選択肢はあるのか」「まだ小さな子どもを育てる中で、家族と仕事のバランスをどう取って行くのか」などの現実的な問題から、今後の自分の生き方に関わることまで、多岐に渡る悩み。そんな中、自分なりの答えを見つけるきっかけとなったのが、今回ご紹介する「非営利型株式会社Polaris」(以下、ポラリス)の皆さんとの出会いでした。

地域で子育て中の女性たちが立ち上げた会社

ポラリスのメンバーは皆、子育て中の女性です。私は、住んでいる区の子育てサイトを運営するボランティア活動を通して、ご縁をいただきました。

「働くママ」が増え、昔以上に女性の活躍を期待する流れとなっている現代ですが、日本では今でも結婚や出産・育児をきっかけに離職する女性も少なくありません。そしてそこから「再就職」しようとすると、様々な壁が立ちはだかり、仕方なく働くこと自体を諦めてしまっている方もまだまだ多いという現状があります。

そのような中、「はたらき方は自分たちで創ることができる」と地域で子育て中の女性たちが2012年に設立したのがポラリスです。「誰もが暮らしやすく、はたらきやすい社会の実現」を目指し、特に、仕事をしたいという思いを持ちながらも、様々な制約からそれが叶わない育児中の女性に、身近な地域でできる多様な働き方を提案しています。

私が長男長女を出産した2012~15年頃は、今ほどは「働き方改革」などに象徴される考えが浸透しておらず、子どもと一所懸命向き合う一方で“もうこのまま子育て以外はできないのかも…”という焦りや不安でモヤモヤすることも多い日々を過ごしていました。

また、働き口や預け先などの具体的な問題に加え、一度離職した状況からの再就職に対して色々と心理的なハードルも感じていました。
当時の主な引っ掛かりは、家庭との両立に加え“子どもが病気になった時に預けられるだろうか…”という不安。また周りのママに聞くと、「子どもが少し大きくなってから働こうと思っていたけれど、成長すると今度は、『長期休みだけ対応してくれる預け先が見つけづらい』『既にできている子どもの生活ペースを崩したくない』など新たに問題が出てきて踏み切れない」と、その年齢なりのネックが出てくるようです。

子育てをしながら「仕事をするかしないか」という狭間で悩んでいた当時の私にとって、ポラリスの皆さんが発信する「柔軟な働き方」、そして実際にそれを実践されている様子を目の当たりにしたことは、大きな衝撃でした。

子育て中の女性たちの手で作る、もっと多様で柔軟な働き方とは?

ひとりひとりにとって「暮らすとはたらく」が分断されず共存できる形を目指し、自分らしい働き方を実践しているポラリス。

「『フルタイム』か『はたらけない』の0か100かのはたらき方ではなく、自分の暮らしやここちよさに合わせてはたらき方を選んでいくことは、最初は難しくても、仲間と共有しながら仕事をすることで徐々にできるようになります。」

たとえば、チームでワークシェアしながら仕事をする「セタガヤ庶務部」、その街で生活しているからこそ伝えられる地域情報の提供などを行う「ロコワーク」事業、また、お子さん連れで仕事ができるワークスペースなど「場の運営」も行っています。

チームで仕事を受けることで、メンバーの誰かが子どもの病気などで欠けても無理なく対応できたり、遠隔地からでも参画できたりするフレキシブルな仕組みづくり。その地域で暮らす経験が価値となるような仕事の創造や、小さな子どもと一緒に安心して仕事ができる場所の運営…6~7年前から、子育て中の女性が安心してはたらくことのできる形を具体的に作り、実際に仕事の選択肢を増やされてきたところは本当に素晴らしく、先進的でもあると感じています。

 

「セタガヤ庶務部」の説明会の様子。“空いている時間に少しだけ仕事をしたい”、“どうせ働くならば、ガッツリと関わって様々な挑戦をしたい”…それぞれのペースや希望に合わせて仕事ができる点も、「再就職」を目指すママにとって大きな魅力となるのではないでしょうか。

自分たちの目指す社会に向けて真剣に、でも軽やかに、協力しながらはたらくママたちの姿を通して、「こんなはたらき方もあるんだ」という気づきと共に、悩みながらも模索を続けている自分を肯定してもらったようにも感じた私。そして、今すぐに何かが大きく変わらなかったとしても、その時々の自分にできる範囲で、興味のあることへの挑戦を続けようと思うことができました。

ポラリスと出会った区のボランティアを始め、子育てをきっかけに興味を持った地域活動や、子連れワークショップへの参加、ママ目線を活かした子どもとのおでかけ記事やブログ記事の作成など、始めは「仕事」とは関係ないものばかりでしたが、結果的にはそれらの行動が、今の働き方や「好きな仕事」に携わるきっかけへと繋がって行くことになりました。

また、その頃一緒にボランティア活動に携わっていた友人は、その後「セタガヤ庶務部」に登録。ふたりの子育てをしながら在宅メインでの業務の他、ポラリス主催のイベントにファシリテーター(進行役のような存在)として参加するなど活躍の場を広げているそうです。久々に会った彼女の以前にも増して生き生きとした姿が印象的でした!

“今ある常識”にとらわれない新しいはたらき方を模索したり、それぞれが自分自身と向き合ったりするため、様々な講演やワークショップなども行っているポラリス。こちらは、「子どものいる暮らしの中ではたらくことを考える座談会」の様子。

続く【後編】では、ポラリスとの出会いを通して、実際に地域での子育て経験を活かした仕事で輝くママたちの姿や、復職のヒントを得た私自身のその後についてお伝えしながら、それぞれの女性にとっての“ここちよい働き方”とは何か、見つめて行きたいと思います!

非営利型株式会社Polaris

佐々木はる菜 Halna Sasaki

ライター

1983年東京都生まれ。小学生兄妹の母。夫の海外転勤に伴い、ブラジル生活8か月を経て現在は家族でアルゼンチン在住。暮らし・子育てや通信社での海外ルポなど幅広く執筆中。出産離職や海外転勤など自身の経験から「女性の生き方」にまつわる発信がライフワークで著書にKindle『今こそ!フリーランスママ入門』。

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