FOOD

峰典子

夕方の憂鬱を救いたい。出張料理サービス「シェアダイン」ができるまで

  • 峰典子

2018.12.13

この記事をクリップする

平日、幼稚園や保育園にお迎えにいってからの食事づくりは、疲労と苦労が絶えませんよね。食材の宅配、週末の作り置き、お惣菜や冷凍食品……。皆さんはどうやって乗り切っていますか? 今年の春からサービスを開始した「シェアダイン」は、アレルギー食や好き嫌いなど、悩みに合わせた料理人が自宅にやってきて、食材の買い物と家庭料理の調理をしてくれるというもの。話題のサービスを立ち上げたのは現役のママたちでした。共同創業者の井出有希さんに話を伺いました。

LEE読者のシェアダイン体験記事はこちら

きっかけは、自分自身の悩み。
本当にこれでいいのかな、って思っていました。

「もともとはコンサルティング会社に勤務していて、二人の子どもを出産し、二回の育休と復帰を経験しました。保育園に子供を迎えに行って帰ってくると、ご飯を準備し食べさせる時間って30分くらいなんです。かといって、週末の作り置きや、朝早く起きて作るとかも、なかなかうまくできなくて。焼き魚と具沢山のお味噌汁の毎日でした」

_もっとこうしたいのに、と悩んでいらっしゃったんですね。

「二人目の産休が終わると、ボリュームも必要になってきて、さらにごまかしがきかなくなりました。このままだと、寂しい食卓の姿が、子どもたちの記憶に残ってしまうのかなって。将来、子どもたちはきっと料理を作らなくなる、とも思いました」

_一緒に立ち上げられたCEOの飯田さんとはどう知り合ったのでしょう。

「働いている友人に聞くと、みんな悪戦苦闘している。冷凍食品に頼っていたり。中には作り置きを頑張っている友達もいましたが、かといって悩みがない訳ではない。多かれ少なかれ、みんな困っている。私だけの問題じゃなかったんです。同じ部署の同僚として知り合ったのが共同CEOの飯田で、ママ友としての会話もたまにするような間柄でした。彼女は、息子が肉や魚を食べてくれず悩んでいたんです。もっと気軽に作ってくれたり、相談できる人が欲しい、そんなビジネス像を思い浮かべていました。それがシェアダインの構想の始めです。私が悩んでいたことと、彼女がやりたかったビジネス像がうまくマッチしたという感じですね」

_どのように構想からビジネスに形つくったのですか

「昨年の夏頃でしょうか。最初はfaceboookでグループを作り、出張料理に興味のある知人と、料理家さんのマッチングを始めました。実は料理教室もやってみたんです。でも、挙がった声は、子どもがいると教室はどうしても無理。それよりも必要な時にすぐ助けてほしい。そして気になることだけ教えてほしい。というもの。それで出張料理を中心にビジネスを進めようと方向性が決まりました。サービス開始は2月、テスト期間を経て、一般公開は5月中旬でした」

 

栄養士の資格を生かせていない人が多いんです

_現在は170名の料理家さんが登録しているんですね。

「東京を中心に、徐々に拡大しています。保育園で食事を作っていた人、社食やレストランで働いていた人、栄養士、管理栄養士、調理師の資格を持っている人などが多いですね。幼児インストラクターやフードコーディネーターといった民間の資格を取得された方もいます」

「自分の希望スケジュールをもとに働けるので、シェアダインで社会復帰されたママも多いんですよ。栄養士や管理栄養士は、拘束時間が長いとよく言われていて。病院だと朝早くて、長時間労働。レストランも夜が遅いとか。せっかく資格を持っているのに、出産で辞める人が多いとか。もったいないですよね」

_サービスを利用される人はどんな方が多いのですか

「幼児を抱えていらっしゃる共働きの方が多いのですが、もちろんそれに限定したサービスではないので、どなたでもご利用いただけます。例えばリピートで、週に1回頼むご夫婦がいらっしゃいます。同じ料理家さん一人ではなく、何人かを交代で頼むことで、いろんなテイストの食体験を楽しんでいらっしゃるようです」

_はじめて利用する人に、シェアダインの活用方法をアドバイスいただけますか

「もし悩みが明確であれば、#離乳食 #アレルギー食 と言った風に、ハッシュタグで検索するのがおすすめです。 #保育園経験者 は好き嫌いが多いお子さんをお持ちの方。#糖質制限 はダイエット中の方に。災害食を教えてくれる方もいらっしゃいますよ。水道やガスが止まった状況を想定し、少量の水とカセットコンロ、ポリ袋を使った調理法を紹介しています。お皿がないことを想定して、お皿も新聞紙で作るんです」

井出有希さん CEO飯田陽狩さんとシェアダインを立ち上げた

プロの手をかりて、家庭料理をつないでいくということ。

「シェアダインがサービスを通じて提供したいと考えているもう一つの価値が、食をつないでいくことです。私自身、自分の母や、義理の母からも料理を習わずにきてしまったのですが、そんな方は多いのではないでしょうか」

「ユーザーの方にアンケートをとってみると、食に関する悩みはさまざま。ただし、一つだけ共通点があって、それは栄養バランスへの不安でした。例えば、ビタミンやカルシウムなんかを重視しがちな幼児食ですが、実はたんぱく質をしっかりとることも大切なんですよね。お惣菜をつくってもらおう。ついでに作り方や栄養バランスについても聞いちゃおう。そんな気軽な楽しみ方をしてもらえたら理想。シェアダインが、家庭料理の味を伝えるきっかけになったら嬉しいです」

 

シェアダイン公式サイトはこちらからhttps://sharedine.me/

峰典子 Noriko Mine

ライター/コピーライター

1984年、神奈川県生まれ。映画や音楽レビュー、企業のブランディングなどを手がける。子どもとの休日は、書店か映画館のインドアコースが定番。フードユニットrakkoとしての活動も。夫、5歳の息子との3人家族。

LEE公式SNSをフォローする

閉じる

閉じる