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佐々木はる菜

「防災ガール」が目指すもの。日常と共存する“新しい防災のカタチ”って?

  • 佐々木はる菜

2018.11.29

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突然ですが、こちらのお料理、なんのために開発されたものだと思いますか?

“インスタ映え”もしそうな、おしゃれな雰囲気。

実はこれ「非常食」なんです!
熊本地震で被災された方々のリアルな意見をもとに作られた「potayu」という玄米のおかゆです。

このような、これまでにない視点で開発された防災グッズのプロデュースや、Webメディアでの発信などを通して「新しい防災」のスタイルを提案しているのが、今回取り上げさせていただく「防災ガール」の皆さんです。

「防災があたりまえの世の中」をつくりたい!

代表理事の田中美咲さん(左から2番目)

「防災をこれまでにないフェーズへ」という想いの元もと、従来の防災に対するイメージや概念を覆し、今の世の中に合った新しい形を模索しながら、さまざまな提案を続けている「一般社団法人防災ガール」。
代表理事を務める田中美咲さんは1988年生まれ。東日本大震災をきっかけに「防災」への道を歩むことを決断し、2013年に3月11日、震災から2年経った日に同団体を設立されました。今年は「世界の国際的なメディア20社が選ぶ女性社会起業家」に日本人として唯一ノミネートされ、その後の一般投票で世界一に選出されるなど、活躍の場を拡げられています。

自然や災害と共に活きる日本に必要な「防災」とは

私にとって特に心に響いたのが、「“普段の生活に防災が入っている”という状態こそが防災のあるべき姿」というメッセージでした。

「地震、火山、大雨、台風など、日本で暮らすということは、自然や災害と共に暮らすこと。避難訓練の実施や、防災グッズや非常食を備えるなど従来の対策も大切ですが、普段の生活と離れた“非日常”の準備ではなく、今の日常の中にあるものを創意工夫し活用していく“人間の知恵”こそ『私たちの考える防災』です。」

私自身も、できる範囲で非常用の備えをしてはいますが、忙しい毎日の中で色々と揃えること自体を負担に感じることもありました。自然災害の多い国に住んでいるからこそ、その対策を日常生活の中に無理のない形で溶け込ませるという考えは、とても心に残りました。

そして、防災ガールがプロデュースする防災グッズは、そんな想いが強く感じとれるものばかり!

日常的に楽しく食べられる、ヘルシーでおしゃれな非常食「potayu」

例えば冒頭でご紹介した、新しい非常食「potayu(ぽたーゆ)」は、「イシイのおべんとクン ミートボール」をはじめ、無添加調理で注目される石井食品株式会社と共に開発した玄米を使ったおかゆです。製造過程において食品添加物を使用しない「無添加調理」に加え、健康にも美容にも良い玄米をおかゆにすることで胃腸にも優しいという点も魅力です。

「potayu」の良さは、非常時はもちろん、日常生活の中でも支えになってくれる食事だというところだと思います。その開発のきっかけは大きくふたつあり、ひとつは熊本地震で被災された方の声、そしてもうひとつは「防災とは生き抜くこと」という防災ガールならではの視点でした。

「野菜を食べることができない」「カップラーメンなどが多く体調を崩してしまった」「普段食べなれているものを食べたい」など、「避難生活中の栄養の偏りやストレスによる不健康」という問題が浮き彫りになった熊本地震。
また従来の非常食が抱える課題として、保存期間が長い分その存在を忘れてしまう、買ったことに満足してそのまま放置してしまいがち、といった問題もあります。

「potayu」は、味や素材にこだわると共に賞味期限を敢えて必要最低限とし、さらに中医学の視点から心身をリラックスさせられる食材や色合いをとりいれることで、現代人に多いストレスや冷え性・疲れといった健康上の問題を和らげることを目指したそうです。
非常時の支えになると同時に、日々の生活の中で自分を辛くする“災い”からの回復も手伝ってくれる、日常的に備えておきたいヘルシーなごはん。見た目も美しく、体だけではなく心も前向きにしてくれる、そんな商品だと感じました。



普段はファッションアイテムとして使える防災グッズ

次にご紹介するのは、#beORANGEミサンガとブレスレットです。

※現在、たくさんのお問合せをいただき在庫が少ない状態だそうです。

軽く耐久性と強度に優れた「パラシュートコード」で作られており、緊急時にはミサンガを解き、様々なシーンで使うことができます。

この商品の名前でもある「#beORANGE」とは、2016年に日本財団と共同で立ち上げた津波防災の普及啓発プロジェクトで、津波防災の新しい合図としてオレンジ色のフラッグを掲げる活動を全国に広めています。「高い防波堤を作る」などハード面の整備だけではなく、海と人が共に生き続けて行く社会を創るため、その特性をきちんと理解し正しい非難を迅速に行うことができるよう様々な形で啓発しており、このミサンガもその一環として開発されました。

「誰かの力になりたい」という想いを応援する防災ブーツ

災害ボランティア活動用 防災ブーツ

こちらは、普段はレインブーツとして使うことができる災害用のブーツ。
“誰かの力になりたい”という気持ちを後押ししたいという想いのもと、大正12年創業で消防用長靴などの専門的なアイテムを作り続けている「シバタ工業株式会社」と共に開発されました。

東日本大震災がきっかけに日本全体でボランティアに対する意識が高まり、活動への参加者数は年々増加しています。一方「初めて参加する時に何を持っていけば良いかわからない」「経験者でも、現地入りするための荷物が非常に大量となりかさばる」など、意志はあっても参加への壁となる課題に直面し躊躇してしまう人も多いそう。

そこで、災害ボランティアの際に必ず必要となる「長靴」を開発。安全面など機能にはこだわりながら普段使いもできるデザインを目指し「災害ボランティアに必要な装備は、普段は使えないものが多い」という問題にも向き合いました。またこれまでは女性向けの商品などが少なく、合わないサイズを無理やり履いた方も多くいたそうで、23~30cmまで1cm刻みとサイズも豊富に取り揃えたそうです。

常に「変化していく」ことが防災ガールの強み

これまでご紹介してきたグッズ、そしてその背景にある想いから伝わってくるように、常に時代・環境・地域・人の変化に向き合い、そこに合った防災をしていく必要があると考えている防災ガールの皆さん。

「おしゃれさやわかりやすさ“だけ”を求めたり、単発的に実施するのではなく、より継続的でより本質的なものを目指したい。」
「これまで培われてきた経験と知恵を尊敬しながら、それらを時代に合わせて翻訳していきたい。」
「いつ何が起きてもおかしくない時代であり国だからこそ、みんなが自分とみんなを助け合う社会にしたい。」

自分たちだからこそできる新しい防災の価値提案をしてきたいというメッセージとその行動力に、「私も何かできることをしたい」と、強く心を動かされました。

ついに今年も最後のひと月を迎えますが、12月1日は「防災用品点検の日」でもあります。年末の忙しい時期だからこそ改めて、自分と自分の大切な人を守るためにも「防災」について考えてみてはいかがでしょうか?

防災ガール: あたらしい防災を提案するWebメディア

佐々木はる菜 Halna Sasaki

ライター

1983年東京都生まれ。小学生兄妹の母。夫の海外転勤に伴い、ブラジル生活8か月を経て現在は家族でアルゼンチン在住。暮らし・子育てや通信社での海外ルポなど幅広く執筆中。出産離職や海外転勤など自身の経験から「女性の生き方」にまつわる発信がライフワークで著書にKindle『今こそ!フリーランスママ入門』。

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