河崎環

イクメンの、向こう側——「夫婦役割4.0」へ【ママの詫び状 第11回】

「イクメンじゃなくて、父になろう」

というステージへ男たちが上ったのは、この2年くらいのことだ。「ことさらイクメンなんて言ったりちやほやされたりするの、やめようよ。変だよ。男が自分の子供を育てるのなんて、当たり前じゃん?」。

育児するメン、イクメンという言葉は、時代の徒花(あだばな)。そんな言葉がなくなることこそが、イクメン文化の目指す地点だ。イクメン文化が成熟し、そうしてイクメンの終わりが始まった。育児家事に関して、口じゃなくて手や体を実際に動かしている男たちが増えてきた。

言葉はもう、いい。JUST DO IT.

育児や家事は「手を動かしている人が圧倒的にえらい」分野だ。

「家族とは〜」「夫婦とは〜」「人生とは〜」「子育てとは〜」と大上段から立派なことを言ってみたり、家事育児で自分の時間も体力も削っている人の苦労を「理解」したり「共感」したり「前向きに応援」してみたりしたところで、

「で、あなた、何ができるの。具体的に何を助けてくれるの。お腹空かせた子供たちに冷蔵庫の中のものだけで30分以内に食事提供できるの。家族数人が汚したトイレや排水溝掃除のヘドロ触れるの。家族数人分のゴミを家中集めて分別してまとめて捨てに行けるの。山盛りの洗濯物を洗って干して畳んで全部あるべき場所へしまえるの。季節に応じて出現する害虫を大騒ぎせずに退治できるの。子供のウンチオムツ替えられるの。泣き止まない子供をあやせるの。ベビーカーに乗らないと泣きわめく子供を片手で抱っこして、片手で荷物満載のベビーカー押して家へ、あるいは保育園へたどり着けるの?」

との問いにその人がウッと詰まった瞬間、いまこの瞬間に家事育児に従事し手も体も動かし疲れ切っている人たちは、プイと耳を貸さなくなる。他の誰が代わってくれるわけでもない、自分が手を動かしてやらねばならないことが目の前に山積みで、忙しいからだ。

だから「イクメンとは〜」「父とは〜」と、自身の子育て経験も大してない人々の大層なイクメン論を聞くたびに、当のイクメンは「うーん、どうでもいい」と思うらしい。やっぱり、自分が手を動かしてやらねばならないことが目の前に山積みで、忙しいからだ。それが当事者の感想だ。言葉はもう、いいのだ。直接手を貸してほしいのだ。この労働を楽にできる方法を教えてほしい。それができないんならホントすみません、ちょっと黙っててくれます?

日本のイクメンは実践重視へシフトした

イクメン企業アワード2018 理解促進部門賞 表彰式(主催:厚生労働省)にて。左から2番目がCaSy代表取締役 CEO 加茂雄一さん

だから、クラウド家事代行のCaSy(カジー)が「イクメン企業アワード2018」(主催:厚生労働省)にて、今年初めて創設された「理解促進部門賞」を受賞したとのニュースを耳にしたとき、

「日本のイクメンは実践重視へシフトした!」

と膝を打った。

CaSyとは、2014年創業の家事代行ベンチャー企業。「大切なことを、大切にできる時間を創る。」「笑顔の暮らしを、あたりまえにする。」を理念として、それまでの業界平均だった家事代行料1時間4000円を、約半値の2190円にした。それぞれの家庭の「おうちルール」を踏まえて暮らしをサポートするという考え方や、子育てや仕事で忙しい人でもスマホから申し込みができ、各利用者の異なるニーズにきめ細かく応じるサービス設計が人気だ。

そして出色なのは、CaSy独自の「パパへの『ひと手間』アドバイス」。家庭に訪問しない間もキレイを維持できるメンテナンスアドバイスとして、時短になる掃除方法や、ついでの1分でできる簡単なひと手間を、「パパに」伝えるという発想が素敵。パパという人たちは、科学的なメカニズムで伝え、プロの技術でやって見せるととっても素直に吸収

家事代行ベンチャーCaSy(カジー)による、パパへの「ひと手間」アドバイス。「男性の家事に対する当事者意識を醸成」するものとして、高く評価されている。

し、めきめき腕を上げるのだそう。「(妻からだと色々あるけど)プロからなら素直に聞ける、ということなのね……(苦笑)」という感想がつい小声で出てしまうけれど、それが「パパに効く」なら大歓迎じゃない?

「イクメン企業アワード2018」表彰式で、CaSyが「男性の家事に対する当事者意識を醸成する」と言ったのは印象的だった。代表取締役 CEO 加茂雄一さんは、創設されたばかりのイクメン「理解促進部門」で受賞したことについての思いを、こう語っている。

「ママ、パパ、子ども、状況に応じて家事代行とが家事をシェアすれば、家族みんなが不満なく、疲弊せず、笑顔で暮らしていけると思います。私が考えるイクメン=自分たちだけで家事を頑張るだけでなく、家事代行を活用するなど社会とシェアすることが当たり前にできるパパを増やすべく、サービスの提供と啓発活動を続けていきます」

イクメンとは、自分たちだけで家事や育児を頑張るんじゃない、家事育児含めた暮らしを「社会とシェアする」ことを当たり前にできるパパのことだ、との考え方には、新鮮な感動があった。「自分!」とか「家族!」「(ウチの)会社!」というクローズドな単位に固執しない。広く社会とつながるチャンネルを、「組織に所属する」以外にもちゃんと持っているパパ。どうやら、日本のパパたちは居場所をどんどん広げて、経験値を稼いで、かなりイケてる男へと成長を遂げようとしてるように思えるのだけれど、どうだろう?

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Writer Profile

河崎環

フリーライター/コラムニスト

Tamaki Kawasaki

慶應義塾大学在学中に子供を授かり学生結婚後、子育てに従事。夫の海外駐在による欧州暮らしを経て帰国後、Webメディア、新聞雑誌、テレビ・ラジオなどに寄稿・出演多数。政府広報誌や行政白書にも参加する。子どもは、21歳の長女、11歳の長男の2人。著書に『女子の生き様は顔に出る』。

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