LIFE

できることから「社会貢献」

こんなにあります! 「子供の貧困支援」の形

  • LEE編集部

2016.11.29

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LEE世代は社会問題への関心も高くなってくる半面、自由に動けなかったり、寄付先などの情報を探す時間がなかったり。何かしたくてもなかなか……という人も多いのでは?
実は今、いろいろな問題を解決するための団体や活動はたくさんあって、それを応援する方法もさまざま、情報にアクセスするのもすごく簡単に。
忙しくてもできること、実はこんなにあるんです!

撮影/亀田 亮 イラストレーション/船越谷 香 取材・原文/中沢明子
この記事は2016年9月7日発売LEE10月号の再掲載です。


PART 3 子供の貧困支援

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社会貢献についてLEE100人隊に実施したアンケートにて、災害支援とともに関心が高かったのが、子供たちのこと。子育て世代ということもあり、

「子供の貧困問題に取り組んでいきたい」(№072 ayucoさん)
「子供のホスピスをもっと作ろうという活動を何かの形で支援できたら」(TB yuki*さん)

などの声が聞こえてきました。

大きなことが起きたときだけでなく、普段からできることは?
食べきれない食料を役立ててもらう、スキルを提供する・・・子供たちのことを応援するために、できることは必ずあります!


「無料の学習会」で支援
特定非営利活動法人キッズドア

お話をうかがったのは・・・

渡辺由美子さん
キッズドア理事長。百貨店、出版社を経てマーケティングプランナーに。夫の仕事の関係でイギリスで経験した「社会全体で子供を育てる」体制を日本でも整えたいと2007年にキッズドアを立ち上げる。

 

無料の学習支援を通して、貧困の負の連鎖を止める!

一見豊かな日本にもある貧困。問題解決には教育の向上と負の連鎖を断ち切る構造の改善が大事です。

子供の貧困率が高いひとり親家庭の8割以上が母子家庭。非正規雇用で働く女性が多いうえ、離婚後、決められた養育費を別れた相手が支払わないケースも多い。ある調査によると養育費を支払っているのは2割以下という数字もあります。

となると、教育費にお金をかけられません。仕事を複数掛け持ちしても、子供が2人以上いれば賄いきれず、母子ともに心身が疲弊します。

 

日本の「子供の貧困」の現状

貧困とは……
1人あたり122万円/年 未満※1で暮らす生活のこと

●2012年の日本の子供の貧困率は16.3%※1
(前調査から+0.6%。2010年のOECD34カ国の平均は13.3%※2

●2012年のひとり親家庭の子供の貧困率は54.6%※3

※1  厚生労働省「平成25年 国民生活基礎調査の概況」より
※2  内閣府「平成26年度版 子ども・若者白書」より
※3  厚生労働省「平成25年 国民生活基礎調査の概況」より

DV離婚などのケースでは、逃げるように引っ越して身をひそめ、慣れ親しんだコミュニティから切り離された母親自身が孤立する環境に陥りやすい。

そして子供もそんな親への遠慮や勉強する環境が整わないため、進学率が下がって、アルバイトや非正規雇用で親と同じように働くようになります。

日本の生涯賃金と失業率

〈生涯賃金〉
フルタイムの正社員を続けた男性の場合(60歳まで)
中卒…1.9億円 大学・大学院卒…2.6億円

〈失業率〉
小・中・高卒…4.1% 大学・大学院卒…2.8%
独立行政法人労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2015」より

私は夫の仕事の関係で一時期イギリスに暮らしましたが、教育に費用がほとんどかからないことに驚きました。地域企業からの寄付やバザーの収益が学校の運営に使用されるからです。公立の学校に通う限り、ほぼ無料で教育を受けられる「機会の平等」という考え方が徹底されていると感じました。

ところが帰国すると日本の学校では、いろいろとお金がかかり、このことにもあらためて驚いたんです。

日本の教育費の現状

・すべて公立でも高校卒業までに約523万円が必要
文部科学省「平成26年度 子供の学習費調査」より

・さらに大学、専門学校に行くのにお金がかかる
(私費負担の割合が高い)

<高等教育機関(大学、大学院、専門学校など)に対する
支出の私費負担割合(2012年)>

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日本は「負担の平等」に重きが置かれています。これでは経済的負担が重いご家庭が少なくないはず。まして塾に通わせる余裕はないでしょう。

そこで、無料の高校受験対策講座「タダゼミ」や大学受験講座の「ガチゼミ」といったプログラムを提供するキッズドアを立ち上げました。

子供たちの勉強をみるのは大学生や社会人のボランティア。社会との接点が極端に少なくなりがちなひとり親世帯や低所得者世帯の小中高生に、マンツーマンでしっかりと寄り添いながら学習支援するプログラムを用意しています。

生まれてきた環境や災害などによって子供たちに機会の不平等が生じ、将来を夢見るチャンスを奪う社会であってはなりません。教育格差をなくすことが貧困の負の連鎖を断ち切る道と信じて取り組んでいます。

 

私たちにできること

 

ボランティア講師や教室マネジメントの仕事をする
教えられる科目があれば、ボランティア講師として登録を。人材が多ければマンツーマンでみる子供の数を増やせるうえ、きめ細かな支援が実現できる。また講師や生徒とのスケジュール調整を担当する教室マネジメントは月2 回から参加可能。

活動資金を寄付する
企業の寄付や助成金のほか、月1000円からコースがある「マンスリーサポーター」も大きな財源。また、キッズドアと提携するリサイクルショップに子供服や貴金属、不要な贈答品などを送ると、売上金がキッズドアに届くシステムもあり。

スタッフボランティア
東京・八丁堀の本部事務所では電話対応やチラシの仕分け作業など、事務的な仕事がたくさん!こうした地味な作業の積み重ねこそが、支援活動の質を高めるパワーとなる。週に一度、自分の都合に合わせて参加できるので、まずは連絡を!


特定非営利活動法人キッズドア
TEL: 03・5244・9990
www.kidsdoor.net

 

「フードバンク」で支援
セカンドハーベスト・ジャパン

お話をうかがったのは・・・

西岡真菜さん
学生時代は国際協力に興味があり、カンボジアやベトナムを訪れるが、「外」を知るたびに国内の貧困や社会問題に関心を持つようになり、一般企業から転職。フードバンク事業の政策提言と発展を担う。

 

余った食料を必要な人へ。ムダと貧困の根絶を目指します

余剰食品を集めて支援に回す活動をフードバンクといいます。セカンドハーベスト・ジャパン(2HJ)は2002年に活動を開始した日本初のフードバンク団体です。私たちの志をシンプルに表現すると「すべての人に、食べ物を。」。さまざまな背景から生活に困窮している人々に食料支援しています。

企業サポーターから余剰食品や賞味期限が迫ってそのままでは廃棄される食品をちょうだいし、福祉施設や個人に配布したり、毎週上野公園で行っている炊き出しの食材として使わせていただいたりしています。

また行政と協働して地域にひそんでいる各家庭やお店の余剰食品という「もったない」を一カ所に集める「フードドライブ」を促進させる活動も行っています。

フードバンクの仕組み

企業・個人 余った食材を寄付→ セカンドハーベスト・ジャパン 保管。バランスよく配分→  児童養護施設、ひとり親世帯、女性シェルター、炊き出しなど

今、日本では約6人に1人が月10万円以下で生活しており、約230万人が栄養のある食事を十分にとれないという。一方で、まだ食べられる食料が使いきれずに大量に捨てられる現実もある。不要な食料を必要な人へ届けるフードバンクは、食のムダをなくす策でもあり、地球にも優しい。

私たちは子供に限らず、困っている「すべての人」に食べ物を届けたいと考えていますが、特に個人の被支援者に母子家庭も多く、子供の貧困支援策にもなっているといえるでしょう。フードバンクが認知され始めたこともありますが、年々、支援を求める方が増えている現状があります。

支援先に送るパッケージには必ずお米を入れ、その他は家族構成に適した缶詰やレトルトなどのおかずをボランティアスタッフが考えながら詰め込んでいます。お菓子の寄付があったときは、子供のいる家庭のパッケージに添える、といったようにです。直接事務所まで受け取りに来られた方のパッケージには、消費期限が短い野菜などを加えています。

私たちは支援を求めてきた方には最初は全員に食料をお渡しします。しかし、2回目以降は行政に生活相談に来た方を対象にそれぞれの相談窓口が必要と判断した場合に、窓口やNPOと連携して、回数を決めて支援します。それは無制限にサポートしてしまうと、かえって自立を妨げる危険があるからです。

個人の皆様からの活動資金や食料の寄付も大切に使わせていただきます。家に「もったいない」食料があったら、ぜひ送ってください。

 

私たちにできること
フードドライブを企画する
余っている食料を集めるイベント「フードドライブ」はボランティア活動で地域貢献にもなる。フードドライブを通して貧困や食品ロス問題について、みんなが考えるきっかけにも。開催方法を一度2HJに教えてもらえば定期的にイベントを行えるはず。

環境イベントなどに合わせた行政主体のフードドライブのほかに、地域コミュニティで集まって行うフードドライブも増加中。2HJではイベントで使用するのぼりなどのキットを貸し出しているので、PTAや会社で声をかけあい、みんなで集めてもよし。フードバンクを広める活動にもなる。

調理や配送作業を手伝う
届いた食料を被支援者の家族構成に合わせて段ボールに詰める作業や配送、炊き出しや今後予定しているお弁当の配布の際に必要な調理を手伝う「時間の寄付」のボランティアも随時募集中。継続的に手伝える人を特に求めているそう。

食料や活動資金を寄付する
個人の余剰食品も大歓迎。缶詰や加工食品、防災備蓄品、米、パン、冷凍食品など。ただし、送料は必ず負担すること。また、1000円の寄付金で1 万円相当分の食料を届けられるそう。ソフトバンクが運営する「かざして募金」でも受け付けている。


セカンドハーベスト・ジャパン
TEL:03・5822・5371
www.2hj.org

 

まだまだあります! こんな支援の形

「ひとり親世帯」をさまざまに支援
しんぐるまざあず・ふぉーらむ
TEL: 03・3263・1519
www.single-mama.com

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シングルマザー家庭の平均就労年収は約181万円。子供の貧困に結びつきやすいシングルマザー家庭を、行政の福祉手当についての相談や、企業と提携してのキャリア支援などさまざまな形で支援するNPO団体。

入学時の制服代などのために3万円を援助する「入学お祝い金事業」も実施予定。

写真は、無料配布される教育費準備のためのガイドブック。通常の寄付のほか、支援サイト「gooddo」からいいね!するだけでも寄付できます。

 

「あたたかな食卓」を提供して支援
こども食堂ネットワーク
kodomoshokudou-network.com

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親が多忙でコンビニでパンを買ったり、何も食べなかったり。そんな子供たちに温かく、栄養のある食事と楽しい食卓を提供する活動が「こども食堂」。

こちらは一定条件を満たしたこども食堂同士の輪を広め、つなげるサイト。ここをチェックすれば、こども食堂がいつどこで開催されていて、活動資金や食材など、どんな寄付が必要とされているかがわかります。

写真は東京・板橋区の「イタリアンフェリチータことぶき子ども食堂」。

 


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LEE編集部 LEE Editors

1983年の創刊以来、「心地よいおしゃれと暮らし」を提案してきたLEE。
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