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佐々木はる菜

名門幼稚園受験を“子育てと向き合い直す”きっかけに!ワーママに聞く「受験の良さ」とは?【後編】

  • 佐々木はる菜

2018.10.18

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お仕事も続けながら我が子を名門幼稚園に合格させた“働くお母さん”が、自身の体験をもとに書いた「名門幼稚園お受験はママが9割」。お受験に役立つ具体的でリアルな情報が詰まっているだけでなく、世間一般の「幼稚園受験」のイメージを覆し、改めて“子どもとの向き合い方”について考えさせられる内容は、発売以来多くのママたちから支持を集めています。

著者である岡本なな子さんへのインタビューを通し、幼稚園受験の本質や実情について伺った【前編(リンク)】に続き、【後編】では、受験までの日々の過ごし方を教えていただきました。
まだ幼いお子さんの力を最大限引き出すために、どんな働きかけをしたのか。
そして幼稚園受験を経て、家族で何を学び、どんな変化があったのでしょうか?

大切なのは、時間と手間をかけて“子どもに寄り添った暮らし”をすること

幼稚園受験の試験の内容は学校によって様々です。
子ども同士や親子で自由に遊ぶ様子を見る“遊び”主体のものや、数・積み木・パズル・一般常識などの“知育”、折り紙・のり貼りのように手先の器用さを見るもの、先生の指示通りに動けるかを見る“指示行動”、母親と共に課題に取り組ませる“母子考査”などなど。そして試験を通してお行儀や周りのお友達との関わり方などもチェックされ、「面接」もあります。小さな子どもと一緒にこれだけ多岐に渡る対策をするとなると、考えただけでも途方にくれてしまうくらい大変そうですよね…。

「準備は確かに大変でした(笑)でもこういった『考査』を通して幼稚園側が本当に見たいのは、子どもの知識量ではなく“お家での暮らしの丁寧さ”だと思います。」

例えば、試験ではよく「物の名前」を聞かれます。2年保育の試験になると、道具ならば何をするためのものか、動物ならば何を食べどこに住んでいるかなど、物についての理解度も見られるそうです。カードなどを使ってただ覚えさせるだけでは本当の意味では理解することができず、詳しく聞かれると詰まってしまうことも多いといいます。

岡本さんは、“お勉強”としてではなく、子どもと一緒に丁寧に生活することや“遊び”を通して、根気よく常識を教えていかれたそうです。
料理、掃除、洗濯など日々の家事に娘さんを参加させ、一緒に楽しみながら身の回りの物の名前や生活について教えていく。子連れだと時間がかかるスーパーなどへの買い物もなるべく同行させ、様々な食品や日用品などを見せる。季節の行事を一緒に楽しむ。海や陸にいる生き物などについても、DVDや本だけではなく、実際に動物園や水族館に連れて行って本物が動く姿を繰り返し見せる。そして、お出かけの際は公共交通機関を使い、公共の場でのマナーを教える。
また100円ショップなどを活用し、おままごとをする際も実際の台所用品を使ったり、「アリスのお茶会ごっこ」という遊びで紅茶を淹れる道具をおさらいしたり、積み木やパズルなどもなるべく“お勉強”ではなくゲーム感覚で取り入れるなど、娘さんが楽しんで学ぶことのできる環境を作るため様々な工夫をされたそうです。

子育てや”子どもと向き合うこと”に、「要領」や「効率」はない!

もちろん大変なことも多かったそうですが、「受験の準備」があったからこそ、お子さんに対する向き合い方や考え方が変化していったいいます。

「それまではつい、自分の思い通りに子どもを動かそうとしてしまう部分がありましたが、『子どもはコントロールできないもの』で、『この子にはこの子のペースがある!』と本当の意味で理解し、本気で歩み寄るようになりました。それは、幼稚園受験において大切なことの中に、“子どものコンディションの見極め”と“子どもを良い状態に導く技を学ぶこと”があったからだと思います。」

受験というものは、本番は1度きり。特にまだはっきりと物心がつくかどうかの”幼い子ども”が主役の幼稚園受験の場合、試験本番に子どもの状態をどれだけ良くしてあげられるかが、非常に大切だといいます。
お昼寝、ごはんやおやつを与えるタイミング…自分の子はどうすれば一番機嫌良く頑張れるのかを“研究”し、試行錯誤を繰り返されたという岡本さん。毎週娘さんと通われていた受験対策のお教室に行く中で、クラスの時間に娘さんの状態がベストになるよう、色々なパターンを試してみたそうです。

「うちの娘は、電車の座席で座って揺れているとよく眠り、15分くらい昼寝をするとすっきりするようでした。それに気づいてからは、お教室に通う時はできるだけ電車の始発駅まで行って座席を確保し、短いお昼寝をさせてコンディションを整えるようにしました。
寝なかった時に備えて、常に絵本、シールブック、あやとり、折り紙なども常に持ち歩き、大判ハンカチを使って色々な動物を作る方法を練習したりもしました。」

それまでも自分なりに一所懸命子どものことを考えてきたつもりだし、子育ての方針が大きく変わったわけではない。でも、娘さん自身が“お母さんの自分に対する向き合い方”の変化を感じたのか、受験に向けて共に過ごすうち、よりコミュニケーションがとりやすくなったと感じることが増えたそうです。

「ある日、娘から『また今日もママと遊ぶの~??』と言われたことがあって。それまでは、夜遅くまで仕事をすることなどもわりと多く、葛藤しながら働いていたところもあったので、『娘にとって“私と一緒にいること”が当然になっている!』と感無量でした(笑)」

受験を考えることは、子育てについて改めて考える貴重な機会にも

今回、岡本さんのお話を伺う中で感じたのは「幼稚園選びやお受験が、改めて夫婦で子育てについて考える良いきっかけになるのでは」ということでした。
幼稚園に入る前の年齢の子どもは、生活全てにおいてまだ“手がかかる”時期。仕事の有無に関わらず、目の前の家事・育児や仕事をするだけでも忙しく、飛ぶように過ぎて行く時期だと思います。
その中で一度立ち止まり、「何がこの子にとって良いか」「どんなふうに子どもを育てて行きたいか」について夫婦で考えてみることは、今後家族それぞれがどんな人生を歩んで行きたいか見つめるという意味でも、大切なきっかけになるのではと感じました。

日々丁寧な生活を送り、子どもを家庭生活に参加させること。
一緒にものを作ったり、季節の行事やおでかけを楽しんだりすることを通して、共に様々な経験をすること。
公共のマナーをきちんと教えること。
子ども自身の良いところと苦手なところを把握し、より良い方向に導いていくこと…。

岡本さんが話してくださったことは、昔から子育てで大切だとされていることばかりだと感じます。でも、それを毎日毎日続けて行くことがどれだけ大変かは、子育てをしている方が一番わかるのではないでしょうか。

「もし幼稚園受験をしていなかったら、ここまで娘と過ごす時間を大切に考えなかったかもしれません。幼稚園受験の対策は子育てそのものと同じで、“丁寧に接しながら、できるようになるのを見守る”という部分が大きいと感じています。私自身は、子育てに時間と手間を割く機会を得たことは、合否に関係なく貴重な経験になったと感謝していますし、大変ではあるけれど、必ず親子関係の構築にもプラスになると思っています!」

必ずしも「お受験が良い」とは限らず、それぞれのお子さんやご家庭によって合う道は様々だと思います。ただ、具体的な受験の情報に留まらず、“子どもとの向き合い方”について考えるきっかけにもなり得る内容は、読み応え充分。
気になった方は是非、手に取られてみてくださいね!

佐々木はる菜 Halna Sasaki

ライター

1983年東京都生まれ。小学生兄妹の母。夫の海外転勤に伴い、ブラジル生活8か月を経て現在は家族でアルゼンチン在住。暮らし・子育てや通信社での海外ルポなど幅広く執筆中。出産離職や海外転勤など自身の経験から「女性の生き方」にまつわる発信がライフワークで著書にKindle『今こそ!フリーランスママ入門』。

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