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藤原千秋

家事をする主婦が抱く、「ラクすることへの罪悪感」を、ちょっと紐解いてみた。

  • 藤原千秋

2018.07.08

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家事は『「面倒臭い」「でも、ちゃんとしたい」』

先日、といっても、もう先月になってしまいましたがLEE本誌7月号の『LEE読者1076人の「今どき家事白書」』という特集で、コメントや対談をさせていただきました。もう記事はご覧いただいているでしょうか(まだ電子版は売っています *編集部注)。盛りだくさんなアンケート内容、その結果には、皆さん共感しきりだったのでは。

特集の「まとめ」として、アンケート結果を受け、ジャーナリストの治部れんげさんと、フリーライター、コラムニストの河崎環さんと3人でお話をさせていただくなかで、「家事」に対して多くの方が『「面倒臭い」「でも、ちゃんとしたい」』という辛い、相反する思いを抱いていらっしゃるらしいことが大きなテーマとなりました。

3人で話した化学反応込みの着地点については本誌をご覧いただくとして、お話しているなかでも、個人的にここが鍵だなあと思っていたのが「罪悪感」というワードでした。家事を、子育てを、主婦業を「ラク」するということに対しての「罪悪感」です。

「ラク家事」なんて言葉は流行っていても

でもちょっと不思議だなあとも思うんですよね……。雑誌や書籍、ウェブメディアでも企画立ての時に必ずと言っていいほど「ラク」とか「ゆる」とかいう接頭辞を「家事」に付けたがられる(!)傾向は、ここ10年ぐらいずっとなんです。ニーズはある。ラクにやりたい、家事を。ゆるく取り組みたい、家事を。

でも「ちゃんとしたい」思いも、捨てがたい。が、ために、「ラクしてもちゃんと」「ゆるくてもちゃんと」みたいなことになり、書いてあることは「ちゃんとする方法」でしかなく、「私、ゆる家事してます!」という方のお宅は「ここはモデルルームかな?」くらいの美しさだったりする。

「ゆる? 嘘こけ!」と、読者の方も心のなかで思ったりしているのではないでしょうか……。あるいは「あれでゆるいなら、この自分がやってる家事は何?」と子どものおもちゃが撒き散らされ、ホコリが溜まった部屋、洗い終わってないお皿が載ったままのテーブルで缶ビールを開けながら自嘲してしまったり……。

私、本当は、ラク家事とか、ゆる家事とか、誰しも好んで「したい」わけじゃないんじゃないかな、と思ったりしてしまったり、して、しまうんですよね……。違うな。うーん、家事「負担」はもっと減らしたい。実際大変だから。時間もないから、賢い時短家事なんかも、したい。すべき。

でも「ラク家事してるでしょ?」とか「ゆる家事してるんだよね」と、ゆめゆめ他人から言われたくはない!

ラクしてると思われたくない!
「ラク?! そんなわけない! 家事は大変なんだから!」とは、(対外的に)やっぱり言いたい。

(本音で)もっとラクにはなりたいけど、大変だねと労られたい。

人は人、と思えなくなったら

とはいえ、相当、家事における「ラク」の基準や、「べき」の線引き、「大変」度合いには個人差があるものだなあと感じています。というか、見えていないんです。他人の家事の内容なんて、滅多に。

さらには、新しい、若い世代の主婦化(?)にあたっても感じ方や基準がだいぶ変わってきているのを感じます。それでも大概は表立った問題にならないのは、やはり家事というものが、閉ざされた「家の内側」で主に行われているものだからでしょう。良きにつけ悪しきにつけ、すさまじく「個人的」なものごとなのです。

そうして、私個人的には、そんなごくごく個人的な「他人のラク」しているさまが、たまさか目に入った時その「ラク」の内容が気に入らないと感じたり、「それって、どうなの?!」と断罪したくなりだしたら、ちょっと心がマズい兆しなのではないかと思っています。

「私、おかしいぞ」と思う。(例えば、ママ友が「家事代行を入れたの〜!」と言っていた時いっしゅんイラっとした、など。)

そんな他人のことが気になってしまう時期って、寝不足が重なっていたり、PMSだったり、風邪のひきかけだったりと体調面での不穏さに引きずられていることもあるものですが、これが結構自覚しにくいものなんです。

私は今年の初頭から、ちょっと思うところがあって毎日食べたものの記録と、その日主に身につけていた衣類、靴と鞄、気象情報(天気や、最高気温と最低気温など)と体調面での特記事項(頭痛など)。それから行った家事、できなかった家事、等々の情報をGoogleカレンダーの中に仕事や家庭内の予定と一緒に記録するようにしています。あまりに細かすぎて無茶かなと思っていたのですが案外、半年続きました。

なんで続いたのかな、と思うと、これが単純に面白かったからなんですね。天気(気圧の変動)や気温とか、食べたものによって機嫌や、仕事の進み具合までもが変動してしまうことが分かりました。履いていた靴によって翌日のコンディションがあからさまにおかしくなることや、着ている服によってすら疲労の度合いが違ってきたりすることもわかりました。

さらに、細かな記録は「普段これだけやってるんだから多少ラクして何が悪い」という開き直りにも役立ちました。「罪悪感」なんて、ポイポーイ!!! ですからぜひ、皆さんもくどくど記録して勘定しておきましょう。

全部書き出すと、私たち、生きてるだけで、とんでもないタスク量なんですから!!!

藤原千秋 Chiaki Fujiwara

住宅アドバイザー・コラムニスト

掃除、暮らしまわりの記事を執筆。企業のアドバイザー、広告などにも携わる。3女の母。著監修書に『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)など多数。LEEweb「暮らしのヒント」でも育児や趣味のコラムを公開。

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