映画ライター折田千鶴子のカルチャーナビアネックス

クセになる“ダラダラ恋話”映画! 韓国の鬼才ホン・サンスの“人生の機微を味わう”4作品連続上映中

韓国のゴダール?!ロメール!?いやトリュフォー!?

みなさんはホン・サンスという監督をご存知ですか? 絶対、知らなきゃ損ですヨ~!

韓国映画って、少しギラッと濃かったり、ベタだったりするイメージが強いのですが、そんな中、異色というか、なんとも軽やかな作風の監督さんなんです。軽やかで、でも別段お洒落ではなく(笑)、たまらなく面白くて人間臭くて、自由で、とにかくユニーク!

その作風は、フランスの名匠エリック・ロメールに喩えられることも多いのですが(監督自身、影響を受けた1本にロメールの『緑の光線』(85)を挙げるくらいですが、“韓国のゴダール”と評されることも)、私の中ではどちらかと言うと大好きなフランソワ・トリュフォー作品の楽しさに通じている気がするのですよね。

というのも、登場する男たちがみな女好きでグダグダで、かなりダメな奴らなのに、どうにも憎めずに惹かれてしまうから! そして現在、連続上映中の4作品に登場する男たちも、みな例に漏れずグダグダでダメな奴らです。でも、言葉を交わしたら思わず惹かれずにいられない…かもしれない……なんて思わせる、すっとぼけ具合をしています。

そう、新たなミューズ、キム・ミニ(パク・チャヌク監督の『お嬢さん』でセンセーションを起こした女優さん)を迎え、創作意欲が刺激されたのか、次々と作品を作り続けるホン・サンスの最新の4作品、『正しい日 間違えた日』(15)、『夜の浜辺でひとり』(17)、『クレアのカメラ』(17)、『それから』(17)が連続上映されています。

どの作品も面白いので、いっそ4作品、通しで行っちゃってください!! とにかく後を引く、クセになる4作品です。

これまでの最高傑作と評される『それから』

 まずは、多作のサンス作品の中でも“最高傑作”と誉れ高い『それから』から。昨年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品された作品です。

『それから』
© 2017 Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved.
6月9日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国順次ロードショー
監督・脚本:ホン・サンス
出演:クォン・ヘヒョ、キム・ミニ、キム・セビョク、チョ・ユニ、キ・ジュボン、パク・イェジュ、カン・テウ
2017年/韓国/91分/モノクロ/ビスタ 原題:그 후 英題:The Day After
配給:クレストインターナショナル
公式サイト:crest-inter.co.jp/sorekara

「何のために生きるの?」

<こんなお話>

若い女性アルム(キム・ミニ)が、大学教授の紹介で、小さな出版社にやって来ます。著名な評論家でもある社長のボンワン(クォン・ヘヒョ)と昼食を食べに出たアルムは、小説を書いていると打ち明けます。優秀だと持ち上げられたアルムは、気分良く「生きる理由は?」とボンワンに質問をぶつけ、意気揚々と持論を披露します。その午後、事務所にやって来たボンワンの妻に、浮気相手だと思われたアルムは、いきなりビンタを喰らってしまいます。夜、辞めると言い出すアルムをボンワンは必死で引き留めるのですが、そこへひょっこり数か月ぶりに元社員の愛人が現れ……。すると一転、ボンワン社長は、「やっぱり辞めて欲しい」とアルムに頼むのでした。

<ズバリ、ココが面白い!>

ストーリーを聞いただけで、「まぁ、なんてコトでしょ!?」と思わず噴き出してしまいますよね!? たった登場人物4人の、微妙な距離感や、微妙な力学が働く会話の妙が最高です。

最初、社長のボンワンは初対面のアルムに対して、必要以上に好意的にも見え、可愛い彼女を前に「泡よくば…」なんて思っている?と時々思えたりもするのです。それに対して、アルムの方も、得意げに議論を吹っ掛けたりする、その姿を見ていて何となくバツが悪いというか、変にドキドキしてしまいます。きっと自分(観客)の姿を、そこに見るからなんでしょうね。

そして妻、最後に愛人が登場し、社長ボンワンの身勝手さ、その言い訳やグダグダ欲望に流される姿に、思わず「おいおい」とツッコミつつ、噴き出してしまうのです。でも不思議と怒りが沸かない、いや、沸けない感じ。「しょうがないなぁ、もう」、と。何だろう、この不思議な愛嬌……。

被害者とも言えるアルムも、どことなくしたたかで、図々しく、ちゃっかりしていたりもするんです。そこもまた、チャーミングなんですよね! 人間の弱さとズルさ、したたかさ、それがシャッフルされてみんな妙に人間臭い。モノクロームの映像から浮かび上がる陰影に縁どられた世界に、「これが人生よね」とフムフムしたくなる、不思議な空気に包まれた一作です。

 

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Writer Profile

折田千鶴子

映画ライター/映画評論家

Chizuko Orita

1968年、栃木県生まれ。LEE本誌で映画&DVD紹介頁やインタビューを担当。その他、新聞・週刊誌・雑誌などで映画コラムや批評、取材記事を執筆。夫と8歳の双子男子と愛犬の、4人1匹暮らし。

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