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30代から知っておきたい「乳がん」のこと

【乳がん体験談】若年性乳がん・・・気になるお金のこと、仕事のこと

  • LEE編集部

2018.06.02

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女性なら誰もが気になる病気、乳がん。30代、40代の忙しいLEE世代がもし今、罹ったら、生活は、仕事はどうなるのでしょうか?
乳がんを患いながらも、たくましく日々を生きる女性たちの貴重な体験談を伺いました。

この記事は2018年2月7日発売LEE3月号の再掲載です。

 

フリーライター、医療ジャーナリスト 本荘そのこさん

PROFILE
ほんじょう・そのこ●1969年生まれ。
地方新聞社勤務などを経て、1998年よりフリーライターとして活動し、医療分野を中心に取材、執筆を行う。
2004年に乳がんが発覚し、約9カ月間治療を行う。著書に『がんに不安を感じたら読む本』(光文社)。

 

確定診断に時間がかかり、腫瘍が6㎝の大きさに。抗がん剤治療を乗り越えて、その後に結婚・出産も

「最初は、自分でしこりを見つけました。すごく小さいけれど、左胸に確実に当たるものがあって。乳腺専門医のクリニックでエコー、マンモグラフィに加えて、『穿刺吸引細胞診』という精密検査もしてもらいましたが『乳がんではない』という結果に。ホッとして、病院を後にしたんです」

フリーライター、医療ジャーナリストとして活躍する本荘さんは2004年、34歳の若さで乳がんが発覚。いわゆる「若年性乳がん」だったのですが、確定診断が出るまでに、なんと約半年間もかかったと言います。

「『乳腺線維腺腫』という良性の腫瘍だと言われたのですが、しこりは日に日に大きくなり、5㎝ほどに。外側から見てもわかるほど腫れていて、触ると小石のようにゴリゴリとしていました。さすがにおかしいなと思って同じクリニックを訪れても、やはりがんではないと……。ただ、膿がたまっているかもしれないから、念のため切開して検査を、となり、細胞を取って病理検査に出したところ、がん細胞が見つかったと言うんです。ショックなのはもちろん、『違うと言われていたのに』と驚きが隠しきれませんでした

セカンドオピニオンへ。実は難しい乳がんの確定診断

主治医への不信感が募り、セカンドオピニオンを取るために別のクリニックへ

「そちらの先生は『どうしてここまで放っておいたんですか』と。すぐに乳がんが確定されました。当時は、なぜこんなことになってしまったのだろうと思ったのですが、その後いろいろと調べるうちに、乳がんの診断は複雑で、難しいものだと知りました。非浸潤がん、特殊型、判断しづらい形状など100人いたら100通りの形状がある。それだけ、乳がんは難しい病気なのだと思います」

確定時には、腫瘍は直径約6㎝、リンパ節にも4㎝の転移が。乳がんの進行度を表すステージはⅢa期と、かなり進行していました。

「普通ならば、リンパ節まで一緒に、乳房の全摘手術を受けるところなのでしょうが、私はまだ34歳で、今の夫と婚約中。最初に診てくれた先生が責任を感じて、当時はまだ少なかった、ネオ・アジュバント(術前補助化学療法)という治療をしている大きな病院を紹介してくれました。手術前に抗がん剤治療を行い、できるだけ腫瘍を小さくしてから、様子を見て手術をするという治療方針が決まりました」

家族や婚約者へは、どのように報告したのでしょうか?

「北海道出身で母親は北海道にいたので、電話で報告はしましたが、なかなか力になってもらうのは難しかったですね。姉は乳がん経験者の友人がいて知識があったので、相談に乗ってくれました。
婚約中だった夫と夫の家族にも、すぐに話しました。夫は、どうしたらいいかわからない様子だったのですが、夫のお母さんがとても力になってくれて。一人暮らしで大変だったので、抗がん剤治療中は夫の実家から通院し、寝泊まりさせてもらいました」

確定診断が出た約1週間後には、早速抗がん剤治療を開始。まずは3週間に1回、アドリアマイシンという赤い液体の抗がん剤を投与し、4クール続けることに。

「投与してから一昼夜は吐き気と嘔吐がものすごくて。髪はどんどん抜けるし、顔のむくみ、血豆ができたように爪が黒く変色するという副作用もありました。
それでもなんとか続けると、2クール目ぐらいに腫瘍に変化が見られました。触ってみると、これまでとまったく違う感触で、小さく、柔らかくなってたんです。結果が出るとうれしくて、だんだん気持ちも前向きになりましたね

その後、別の種類の抗がん剤も4クール行い、結果的に、抗がん剤治療だけで腫瘍はほぼなくなったのだそう!

「念のため切ってがんの状態を確認する手術だけを行い、全摘はせずに済みました。命のためなら全摘も仕方ないとは思っていたけれど、これから結婚するタイミングだったので、乳房を温存できて本当によかったなと。治療後すぐに結婚して、無事に娘を授かることができたのは、とても幸運だったなと思いますね」

仕事を休んでゆっくり治療。保険に助けられた

罹患前は、フリーライターとして忙しく働いていた本荘さん。フリーランスだと仕事をしなければ収入は得られません。治療中の仕事やお金の問題は、どのように解決したのでしょうか?

「23歳と33歳のとき、それぞれ医療保険に入っていて、がん保険もつけていたので総額で1千万円ほど受け取れました。抗がん剤治療をしながらの仕事は難しいと思ったので、約1年間は休職しましたが、生活の心配はありませんでしたね。抗がん剤で髪がすべて抜けてしまったのでいいかつらを作ったり、入院時に個室に入れたりと、保険には助けられました」

「仕事は、乳がんが発覚してすぐに、担当していた週刊誌の編集者に伝えました。すごくいい方で、驚きながらも仕事を引き取って、ほかの方に振り分けてくれて。無理することなく、休職に入ることができました」

治療のために仕事を長く休むことは、勇気のいる決断のはず。ところが、本荘さんは「会社や立場によって違うとは思いますが、私は仕事を休んで治療に専念してよかった」と話します。

「抗がん剤投与から数日はつらいのですが、副作用がおさまったら時間もあるので、いろいろなことを試しました。食事を改善して、しょうがやにんじんなど体を温める食材をとったり、ヨガをしてみたり。
確証はないけれど、心穏やかに過ごしたことも治療効果に影響したのかもしれません。不安や焦りはもちろんあるのですが、乳がんになったおかげで、いい休息ができた。そう気持ちを切り替えたことで、つらい抗がん剤治療も、前向きに乗りきれた気がします

本荘さんのお金のこと、仕事のこと

お金のこと
「23歳のとき、父が大腸がんで他界。当時はいいがん保険がなく、十分な環境が得られずかわいそうだったなと思い出し、保険に加入。そのがん保険は一度受け取ると失効してしまうものだったので、33歳のときにあらためて、再発しても受け取れたり、入院してなくても通院給付金などがついているタイプに加入しました。
33歳のときのものは、がん治療を経験した今でも、脈々と受け継がれていて、もし今後再発などがあっても再度受け取ることができます」

仕事のこと
「フリーランスで約5年間働いていて、仕事を断ればもう声をかけてもらえないかもしれない、という不安はありました。でも、無理に続けて、抗がん剤の副作用などがひどくやり遂げられなければもっと迷惑がかかると思い、発覚してすぐに報告。快く引き継いでもらえました。
その後も、逐一治療の進行具合を報告したり、引き継いでくれた方にお礼をしたりと、感謝の気持ちを伝えるようにしましたね。迷惑をかけるので、フォローは大切だと思います」

 

お金のこと、仕事のこと・・・気になるQ&A

 もし罹患したら治療のお金が不安……。使える制度はある?
 保険に加入していれば使える高額療養費制度
抗がん剤治療、手術などの標準治療だけであれば「高額療養費制度」でお金が戻ってきます。医療費が一定額を超えると戻ってくる制度で、公的医療保険に加入していれば誰でも受け取ることができます。
ただ、自分で申請をしなければ支払われないので、保険の種類に合わせて、申請方法を確認しておきましょう。後からの申請だけでなく、治療費の支払いの際に、一緒に申請できる場合もあります。

 保険はどんなものに入っておくべき?
 診断給付金付きのがん保険がおすすめ
標準治療だけであれば高額療養費制度でかなり戻りますが、入院時の個室料の差額や、治療中に仕事を休んだ際の生活費の保証はありません。
できれば、30代からがん保険に入るのがおすすめ。医療保険でも、診断給付金付きのものを。罹患した際に、診断給付金が100万円でも入れば仕事を休んで一息つけます。30代であれば月々の負担は3000円程度だと思います。

 罹患していることがわかったら、会社に言わなければダメ?どのような手順を踏むべき?
 誤解のないように報告を。使える制度がある場合も
会社には言うべきだと思います。治療を始めれば、休むことも多くなると思うので、その際に伝えていないと、さぼっているなどと誤解を受けてしまいます。
最低限、直属の上司と身近な同僚に報告を。会社によっては治療中休みやすかったり、時短勤務にできたりと、サポート制度がある場合も。その手続のためにも、やはり会社への報告は必須です。

 乳がんの治療をした場合、どのぐらい仕事を休むべき?
 進行具合や治療法によって大きく異なります
病状が人によってまったく異なるように、仕事を休む期間も人によってさまざまです。抗がん剤治療を受けるならば、乳がんの広がりや再発リスクに応じて術前か術後に3カ月~半年くらいは投与を続けなければなりません。
その場合、私のように吐き気、脱毛、倦怠感といった副作用が強く、1年近く仕事をお休みすることも。
ただ、最近は抗がん剤の副作用をやわらげる対処療法がうまく行われるようになり、仕事も続けやすくなっているようです。
さらに、手術を受ける場合も、5日~1週間ほどの入院、その後少し休み、2週間ほどで復帰できるケースも。働きながらの治療がどんどん可能になっているなという印象です。

 仕事は辞めたくないけれど、仕事に関して相談できるところはある?
 がん患者のための電話相談の窓口もあるのでぜひ活用を
がん患者のための相談窓口はいくつかあって、私も治療中は電話相談を利用したことがあります。
仕事の続け方のほか、がん治療後の転職や、一度休んでからの新たな就職の相談もできます。乳がん治療に力を入れている大規模の病院で、産業カウンセラーなどの専門家が相談を受けてくれる場合もあるので、問い合わせてみましょう。


撮影/名和真紀子 ヘア&メイク/千葉智子(ロッセット) イラストレーション/macco 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
この記事は2018年2月7日発売LEE3月号『30代から知っておきたい「乳がん」のこと』の再掲載です。

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LEE編集部 LEE Editors

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