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佐々木はる菜

ママによる、ママのための、“楽しい”子育て支援!「めぐろ子育てマップ」の魅力とは?

  • 佐々木はる菜

2018.05.03

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赤ちゃんや小さなお子さんと街へおでかけする際、おむつ交換や授乳できる場所がわからず困った…という経験がある方は多いのではないでしょうか。

今回ご紹介するのは、自由が丘や中目黒を始めとした目黒区各地で子育てマップを作られている「めぐろ子育てマップ作り隊」の皆さんの活動です。

広げるとA3サイズの地図には子連れに嬉しい情報がいっぱい!一部一部、メンバーの手でてのひらに収まるサイズに折られているので、持ち運びもしやすい♪

おむつ替えができる場所や子連れに優しいスポットなどがまとめられた地図は、私自身もとても楽しく活用させていただいてきました。おでかけ前にそういった情報を集めようとしても、大きな施設以外はわかりづらいもの。また、ただでさえやることがたくさんある毎日、色々と調べるのも手間がかかってしまいますよね。
近隣に住むママさんを始め、たくさんの方に喜ばれている「子連れでおでかけマップ」ですが、地図を作っているのもまた、子育て中のお母さんたち。お話を伺う中で見えてきたのは、「ママだからこそできる」「ママにしかできない」、“楽しい”子育て支援の形があるということでした。

赤ちゃんを連れてのおでかけは大変!!ママたちを応援するツールを作りたい

始まりは、09年に目黒区の社会教育講座「自由が丘の子育てマップを作ろう!」にて、区内の子育て中のパパママ達によって作られた成果物。おしゃれなお店が多く、乳幼児連れが多い街としても知られている自由が丘ですが、子連れで出かけるのに必要な情報はなかなか手に入りません。そこで、口コミ情報をもとに実際に足を運んで確かめ、オムツ替えや授乳可能な場所、バギーで入れるトイレの他に、子連れで入りやすい飲食店、子ども服雑貨店、スーパー、小児科、公共施設などを掲載。現在はインフォメーションセンター、区役所や区内の児童館などにも置かれています。

通称「マップ隊」の皆さん。活動は毎回お子さんも一緒に和気あいあいと行っています。

活動開始時からずっと携わられている代表の山本礼子さんも、大学生と小学校5年生のお子さんを持つお母さん。このようなマップを作りたいと思われたのは、ふたりめの子育てがきっかけだったといいます。

「夫の転勤があったので、長女が小さい頃はずっと海外にいました。おむつ替えや授乳などはどこでもでき、おでかけのストレスは全くなく、とても子育てしやすい環境でした。
その後、日本に戻ってから第二子を出産したのですが、今度は地元のはずなのにそういった情報がなかなか手に入らなくて…同じように困っているママは多いはず!と、地図作りを思い立ちました。」

私自身、地元が近く、子どもの頃からよく訪れていたため馴染み深いつもりでいた自由が丘。しかし、長男が赤ちゃんの頃に初めておでかけした時は、おむつを替えるために駅周辺まで何度も戻ったり、行きたかったお店はバギーで入れず、抱っこしながらでは食事どころではなったりと、意外にも大苦戦。しばらく足が遠のいてしまったという苦い経験があります。この地図を知ったのは第二子出産後のタイミングだったのですが、ママの立場に寄り添った内容に「もっと早く出会いたかった…」と悔しくなるほどでした。

マップは全部で5編。手前から時計回りに
<都立大学・自由が丘編>2018年2月改訂、配布中(2018年4月現在)
<目黒駅周辺編>在庫なし・配布終了
<目黒区南部地域周辺編>在庫なし・配布終了
<中目黒編>2017年2月改訂、配布中(2018年4月現在)
<祐天寺・学芸大学編>2018年秋改訂発行予定

「子育てをする中で感じたのは、必ずしも『自分からどんどん情報収集し出かけていけるタイプ』ばかりではないということ。周りには、日々の忙しさに追われ自分で色々調べる余裕もなく、外出する気になれないと話してくれる人もいました。そういう時に、このマップが『おでかけしてみようかな』と一歩外に出る背中押しになってほしいと思っています。」

そして、「歩道がなく車が多い」「ベンチが多く休憩に最適」というような、ママにはありがたい一言アドバイスのほか、八百屋さんやクリーニング屋さんなど日々の生活に関わるお店が多く記載されているのも特長のひとつ。

「こういうお店は、一言会話が必要なところが良いと思うんです。赤ちゃんのお世話をしていると、気づいたら1日他の大人と誰とも話さずに終わっていた!なんてこともありますよね。大型スーパーは便利ですが、しゃべらなくても買い物が完結してしまうので、敢えて地元ならではのお店を入れて、近隣に住んでいるママさんたちが地域の人と関わるきっかけにもしたかったんです。」

「手渡し」を大切に。そこから生まれる様々な繋がり

もうひとつ、とても印象的だったのが「メンバーから子育て中の方へ、子育て中の方から仲間へと手渡し活動も大切にしています。」という言葉。区役所や児童館など区内の様々な場所や、区民祭りなどのイベントにも置いていますが、例えば育児学級、児童館の乳幼児クラブ、子連れスポットなどでたまたま隣合った親子に、ちょっと勇気を出して声をかけて「手渡し」することを大切にしているそうです。
メンバーの皆さんも、なるべくマップ持ち歩いて機会があれば渡すようにされており、赤ちゃんを産んだばかりでマップの存在を知らなかった人に「こんなものがあるんですね!産後は出歩くことがなかったけど、これを持って行ってみます」と喜ばれたり、逆にもう持っていて「いつも活用してます!」と御礼を言われたり…中には、それをきっかけにお友達になり、マップ隊の活動に参加するようになった方もいるそうです。

慣れた手つきでマップをきれいに折る、小学生のお子さんたち。お母さんと一緒に自然な形でボランティア活動に参加するなんてとても素敵ですよね!小さなお子さんは、お母さんに話しかけたり膝に乗ったり…そんな姿も可愛らしかったです。

地図自体を活用してもらうだけでなく、マップ隊の活動に参加することで、誰かと子育てについて話したり、知り合い作りのきっかけにしたりしてほしいという山本さん。誰でも気軽に参加できるよう、区役所内の子育て広場で「みんなでマップを折る」という催しを開かれたこともあるそうです。また、「マップをください」と言われた時は「お友だちの分もどうぞ」と2部以上渡すように心がけているといいます。

「そのマップを誰かにあげることが、ママ同士のつながりの一歩になるかもしれない。マップが友だち作りのツールにもなれちゃうのです。手渡しは『あなたのことを見守っているよ』という、相手のことを気にかけたサイン。地域には優しい先輩ママがたくさんいて、あなたの子育てを応援しているということが、ひとりでも多くのお母さんに伝わるといいなと思っています。」

「やれることをやれるだけ、楽しく!!」がモットー

今回取材に伺ってとても印象的だったのが、とにかく楽しそうな皆さんの様子。もう6年以上関わっているという方も、今日が初めてのご参加だと話す方もいらっしゃいましたが、まさに「和気あいあい」という言葉がぴったりの雰囲気。

当日は区の施設の会議室を借りてのミーティング。施設で借りられるものとメンバー持参のおもちゃを用意しキッズスペースを設け、小さなお子さんたちもそこで遊べるので楽しそう!「子どもとの距離が近いので、普段は和室を借りることが多い」とのこと。

参加したきっかけや、活動を続けられている理由を伺うと…

「引っ越してきて地域のことがわからなかった頃、おでかけの際に行った好きなお店などを自分でメモしていた時に出会ったのがこのマップ。まさに『私が欲しかったもの!』と感激し、内容も詳しくて面白いから一緒にやってみたいと連絡しました」
「とにかくメンバーが面白くて、みんなに会いたくて続けているところが大きいです。楽しいのはもちろんですが、活動を通して、自分たちも地域の情報交換や、その時知りたい子育ての話ができるので、自分自身のためにもなっていると思います」
「子育て初期、家で子どもとふたりだと煮詰まってしまって…常におでかけ先を探す中でマップを見つけました。裏を見るとメンバー募集の文字があり、地図を折る『折り折り隊』ならばできるかも…と連絡しました」

…などと様々。ふたり目出産後の健診でメンバー同士がばったり再会し、5~6年ぶりに参加したという方も!

「編集後記」の言葉を見て連絡する方が多数。自分でも気軽に参加できるかも…と思わせてくれる温かさがありますよね。

またパパメンバーも参加しているというマップ隊。

「ママ・パパはもちろん、孫育てのおばあちゃん・おじいちゃん、幼稚園・保育園・児童館などの先生方、商店街の店主さんはじめ地域の方などなど、みんなに活用してもらいたいと思っているので、作成メンバーも“ママ”に限ってはいません。
例えば、『マップ内に方位記号が欲しい』など、男性目線で具体的なアドバイスをくれるパパ達は、心強い仲間です。また土日の集まりでは、お子さんをパパに預けてくるメンバーもいるので、陰でも私たちの活動を支えてくれているんですよね。」



ママたちの声から生まれた「めぐろ幼稚園ガイド」

そんなメンバーたちの会話から生まれたものが、区内の幼稚園の基本情報、幼稚園選びのスケージュールなどが掲載されている「めぐろ幼稚園ガイド」です。

「メンバー内に幼稚園入園の子どもたちが多かったタイミングで感じたのが、『地域での幼稚園選びは、各自の情報収集力と行動力にかかっている状態で、情報を得られたもの勝ちみたいなところがある』ということ。例えば引っ越して来たばかりの方や、下の子が生まれてすぐなど情報収集しにくい方もいらっしゃると思うので、誰でもわかりやすいようにデータが一元化されたものがあればいいよねという話になり、ガイドを作ることにしました。」

写真は2018年度入園のもの。プチ幼稚園講座&幼稚園座談会(写真下)も開催しているそうで、在園・卒園ママを集め、幼稚園選びの体験談や質疑応答などを行っているそう。

メンバーの「こういうものがあったらいいよね」という想いが形になった、まさにママの声から生まれたガイド。毎年たくさんのお母さんたちが集まっている幼稚園講座とあわせ、多くのお母さんたちの支えになっているだろうなと感じました。

自分たち自身が楽しみながら「子育て」や「地域」を支援する素晴らしさ

子育てマップも幼稚園ガイドも、子育て真っ只中にいるメンバーそれぞれの暮らしの中から生まれたもの。年々変わりゆく街を実際に自分たち自身の足で確認し、地域とのつながりを大切にしながら形にされている…それは、ママたちにとって何より信頼でき説得力のある情報で、その活動に支えられ力づけられた方はたくさんいるのではないでしょうか。

世のお母さんたちは皆、家事に育児に仕事に毎日本当に忙しいと思います。でもその中でちょっと勇気を出して一歩踏み出し、自分と似た立場の誰かの幸せを思いながら、できる範囲で自分の時間を使うことで、新たな世界が広がり思っていた以上の充実感を味わえるかもしれません!

「自分たちの活動によって、子育てを頑張るお母さんたちの笑顔が少しでも増えたら嬉しいです。 この地図作りには、今まさに子育てマップを必要としているママさんたちの声や意見が不可欠。新発見があったら次世代へ繋げ、このマップが地域子育て情報循環の一歩になればと思っています!」

めぐろ子育てマップ

佐々木はる菜 Halna Sasaki

ライター

1983年東京都生まれ。小学生兄妹の母。夫の海外転勤に伴い、ブラジル生活8か月を経て現在は家族でアルゼンチン在住。暮らし・子育てや通信社での海外ルポなど幅広く執筆中。出産離職や海外転勤など自身の経験から「女性の生き方」にまつわる発信がライフワークで著書にKindle『今こそ!フリーランスママ入門』。

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