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佐々木はる菜

友人の利用で痛感! 産前産後ママの体と心を支える「ドゥーラ」の素晴らしさとは【前編】

  • 佐々木はる菜

2018.04.20

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産前産後の女性に寄り添い、「お母さん自身」と暮らしを支える専門家

皆さんは「産後ドゥーラ」というお仕事をご存知ですか?
妊娠中や産後間もない女性の自宅を訪れ、母親の心に寄り添いながら悩みなどに耳を傾け、家事、赤ちゃんの沐浴などの育児、上のお子さんのお世話等々くらし全般をサポートし、子育てが軌道に乗るまでの期間、日常生活とお母さんを支えてくれる専門家です。

以前、LEEでもNYで出産された里田まいさんが紹介されていたように、欧米を始め諸外国ではひとつの職業として確立され、多くの方が活躍されている「ドゥーラ」。日本では、一般社団法人ドゥーラ協会が認定する民間資格。助産師、産婦人科医、管理栄養士など専門家のもと70時間以上の実習を受け、試験に合格した方が認定されます。

出産はとても幸せなことですが、産後の体は出産という大仕事を経て大きくダメージを受けています。そこに、昼夜関係なしの2~3時間おきの授乳、慣れない赤ちゃんとの生活への戸惑いや緊張が続き、心も体も大きく揺らぎます。
現在6歳と3歳の兄妹がいる私自身は、第一子出産の際はドゥーラさんの存在すら知らず、第二子の時もサポート利用までには至りませんでしたが、夜泣きや乳腺炎などに長く苦しんだこともあり「思い切って利用すればよかった」と今でも思います。

今回、1月に第二子を出産した友人がドゥーラサポートを利用。【前編】では実際に利用してみた彼女の感想を、そして【後編】ではサポートを担当された「ドゥーラ協会認定産後ドゥーラ」の三門久美子さんへのインタビューを通し、日本ではまだまだ社会に浸透していない「産後ドゥーラ」の素晴らしさについてお伝えしていきたいと思います。

夫・5歳の長女と都内で暮らす30代半ばの友人。予定日は2月頭でしたが、10日ほど早く出産。取材時はまだ生後2か月前だった男の子の赤ちゃんは、元気でとっても可愛く、ずっと見つめていたい気持ちになりました…

「周りにサポート経験者も多く、彼女たちに背中を押されたこともあり、12月末にHPから申込み、1月上旬に一度自宅で打ち合わせをしました。『三門さんが作ってくれるごはんがとてもおいしい!』という噂を聞いていたので、料理・沐浴・簡単な掃除を依頼。退院後から週に1度、5週間来ていただきました。打ち合わせでは「産後を快適に過ごしていただくために」という産褥期(産後6~8週間にあたる、母体が回復するまでの期間)のアドバイスの紙をもらい、サポート内容の説明を受け、家の様子を見てもらいました。用意しておくと良い食材や調味料もこの紙に書かれていたので、生協で注文しておきました。」

産後の過ごし方について、プロの目線から具体的なアドバイスが。「ドアチャイムがなっても、お出になられるのはゆっくりで結構ですよ」など、ちょっとしたひとことまで温かい。

特に印象的だったのは、『出産を挟んでの前後のご報告やりとりはパートナーもしくは信頼できる方におねがいしましょう』という一言。

「この打ち合わせをきっかけに夫が、三門さん、そしてもともと上の子の送迎などをお願いする予定だったお友達数名でLINEグループを作ってくれました。産褥期はなるべく目も使わない方が良いそう。産後は夫がそこで連絡を取り、サポートのスケジュールも調整してくれました。」

産後はまず、「体を休めること」が仕事!プロだからこそお任せできる安心感

「家事は自分でもできることなので、それを他人にお任せしお金を払うことに抵抗を感じる方も多いと思います。私も正直、これが高いのか安いのか初めてのことで分からなかった。でも、自分がこの期間をゆっくり休むことは、私自身だけでなく家族にとっても必要なことだったと痛感しています」

退院してすぐの時期は、三門さんが来ている間はとにかく横になって体を休めていたという友人。その間に、ごはんを作ってくれたり、気づくとお風呂を洗ったり床を拭いたり…そして友人がちょっとでも何か手伝おうとすると、すかさず「寝てていいよ~」と声をかけてくださったそう。
家族のサポートも本当にありがたいものですが、ありがたいからこそ気を遣ったり、自分より高齢の親に掃除など負担の大きい家事をお願いすることが申し訳なかったりして、結局、ちょっと無理をして自分で動いてしまった、なんて経験のある方も多いのではないでしょうか。

「ドゥーラさんは『今が寝ていないといけない時期』だということを誰よりもよく分かっていて、そのためにプロとして全力でサポートしてくれる。気を遣わず寝ていられるし、家族には頼みづらいことも割り切ってお願いできることが、精神的にとっても楽でした。すっぴんにパジャマで、掃除もできていない家を見せるのは、最初はちょっと恥ずかしかったですが(笑)、それで当然という雰囲気にも安心させていただきました。」

「三門さんだと、安心感があるのに作業がとても速くて、見ていて楽しかった!」という沐浴。ちょっと意外に思えますが、新生児の沐浴はママが自分でやらない方が良いことのひとつ。産後で骨盤がぐらぐらしている体には、負担が大きすぎるそう。ちなみに私は毎日自分でやっていました…

また、もうひとつとても心強かったのが、始まったばかりの慣れない生活について、その都度、相談に乗ってもらえたこと。

「大抵の人は自分の子どものことしか知らないけれど、三門さんご自身も子育てされていることに加え、お仕事を通してたくさんの色々な赤ちゃんや子育て家庭を見てきている。日中は言葉の通じない赤ちゃんとずっとふたりきりでいる中で、日々のちょっとしたつまずきや疑問について、プロの『大人』にすぐに相談できるという状況は、とてもありがたかったです。」

赤ちゃんとの生活が始まってすぐは「最初はどうしてよいかわからない」ことの繰り返し。例えば、「夫も不在で、上の子と赤ちゃんと初めて3人でお風呂に入る際、他の方はどうやっている?」など、その時々の悩みにすぐ具体的なアドバイスをもらえて、とても参考になったと話していました。私自身の産後は、そういった日々の試行錯誤がうまくいかないことも多く、大人と話す機会にも飢えていたので、三門さんの存在の心強さは本当によくわかります。

「他人に委ねる」ことで、自分も家族も救われる

「ドゥーラさんをお願いしたからこそ、上の子にちゃんと向き合うことができたと思います。」

ドゥーラサポートを含め、ご家族や周囲の友人にも相談しながら、産後の準備をしっかり整えていた友人ですが、それでも想定外のことがたくさん起こったそう。

「まず、退院してすぐ長女がインフルエンザに感染。また、それまでとっても懐いており、娘のお世話をしてくださる予定だったおばあちゃんを突然嫌がりだし、お手伝いをお願いできるような状況ではなくなってしまいました。どんなに準備をしていても、予定通りに行かないことが産後なんだなと実感しました。」

そんな大変な中でも、上のお子さんにきちんと向き合えたのは、ドゥーラさんのおかげできちんと休める期間があったから。

「退院した時、娘は久々に会えた嬉しさでハイテンション。もちろん私も嬉しいけれど、産後で弱っている中、子どもの元気なパワーに負けてしまいそうだと感じました。どんなに子どもが可愛くても、ただでさえ大変な産後の時期に自分の体が回復しないままでは、家族や上の子のことを考える余裕はなかなか持てないと思います。自分にしかできない『授乳』や『上の子の気持ちを受け止めること』はしっかりやって、あとはできる限り他人に委ねる。家族を大切にするためにも、産後という特別な時期は、他の人に頼ってしっかり休んでほしいです」。

今回、サポートを利用した友人のお話を通して感じたのは、「産後ドゥーラ」にしかできないサポートがあるということでした。
産後すぐというのは、やはり非常に特別な時期。出産という大仕事を終えた達成感、待ち望んだ赤ちゃんがやってきた喜び、一方で体のダメージや独特の体の不調、慢性的な寝不足、慣れない生活への不安や気分の浮き沈み…私自身は、それを「産後の自分にしかわからない辛さ」だとひとりで抱えているつもりになり、孤独を感じて辛かったこともありました。

それぞれの女性の気持ちと生活に全面的に寄り添い、実際に日々のくらしを整え、生後間もない赤ちゃんのお世話をサポートしてくれながら、「あなたは大変な時期だから、休んでいいんだよ」と言って応援してくれる存在は、お母さんにとって何よりの支えになってくれるのではないでしょうか。

【後編】では、ご自身のお仕事を通し「安心して産み育てられる社会」を目指されている、産後ドゥーラ三門久美子さんのインタビューをお送りします!

一般社団法人ドゥーラ協会

佐々木はる菜 Halna Sasaki

ライター

1983年東京都生まれ。小学生兄妹の母。夫の海外転勤に伴い、ブラジル生活8か月を経て現在は家族でアルゼンチン在住。暮らし・子育てや通信社での海外ルポなど幅広く執筆中。出産離職や海外転勤など自身の経験から「女性の生き方」にまつわる発信がライフワークで著書にKindle『今こそ!フリーランスママ入門』。

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