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古川はる香

【ママ起業家・荻野みどりさんインタビュー前編】何をやっても続かない「こじらせママ」がココナッツオイルで年商7億円になった秘訣は?

  • 古川はる香

2018.04.02

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「ココナッツオイルの火付け役」荻野みどりさんの正体は「こじらせママ」!?

 

株式会社ブラウンシュガーファースト代表取締役・荻野みどりさん。1982年生まれ、福岡県久留米市出身。2011年第一子出産後わずか4カ月でお菓子ブランド「ブラウンシュガーファースト」を立ち上げる。 撮影:齊藤晴香

 

「ブラウンシュガーファースト」の商品のひとつ「有機エキストラバージンココナッツオイル」(画像は「ブラウンシュガーファースト」公式サイトより)

こちらのココナッツオイル、ラベルに見覚えがある方も多いのでは? リピーターとして愛用している方もいるかもしれませんね。オーガニック商品を扱うスーパーや食料品店などではおなじみの「株式会社ブラウンシュガーファースト」の商品です。

 

「ブラウンシュガーファースト」の代表を務める荻野みどりさんが、当時日本ではほとんど知られていなかったココナッツオイルと出合い、「有機エキストラバージンココナッツオイル」を売り出したのは2013年のこと。「美容と健康によい」と医師をはじめ、専門家の方々の注目を集めたココナッツオイルの魅力はあっという間に口コミが広がり、ブームが誕生。創業から4年ほどで年商7億円を売り上げるまでに成長しました。

 

でも、その始まりは2011年9月、荻野さんが産後わずか4カ月のとき。当時0歳の娘さんを抱っこしながら、ファーマーズマーケットに出店し、「わが子に食べさせたいかどうか?」を基準に食材を厳選した手作りのお菓子を売ることからでした。しかもそれまでの荻野さんは、大学を4つ中退し、履歴書に書ききれないほどの職業を転々としてきた自称「こじらせママ」だったと言います。

 

3月26日に出版された荻野さんの半生をつづった著書『こじらせママ 子育てしながらココナッツオイルで年商7億円』があまりにも興味深すぎて、ご本人にこれまでの人生や子育てについて直撃させていただきました!

 

スキルを身に着けると、すぐ次の仕事へ

自身のなんとも波乱万丈な経歴を笑いを交えながら話してくれる荻野さん。

 

福岡県久留米市に生まれ育った荻野さん。高校卒業後は地元の短大に進学しますが、ニューヨークへの短期語学留学がきっかけとなり、短大を退学して福岡のアパレル企業に就職。なんとここで担当店舗の売り上げを1年で18倍にするという偉業を成し遂げます。

 

「やれることはすべてやりつくしました。当時19歳、20歳くらいの私が実年齢を言うと、社会人のお客様は買ってくれないんですよ! 年齢で信頼感や消費行動が変わるのに気づいて、“28歳です”と年齢を偽っていたことも(笑)。同い年の子たちが大学を卒業するまでには、その3、4年先に行っていなければと思っていたんですよね。“売る”ことはすべての商売の原点になることですから、とにかく“売る”ことの実力をつけたくて」

 

荻野さんのすごいところは、アパレルに限らずどんな仕事についても平均以上の結果を出すこと。そして、実力やスキルを身に着けたところで、スパッと次の目標に移っていきます。アパレルで商売の基本を身に着けたあとは、上京してさまざまな仕事を経験しながら、あらゆるスキルを身に着けることに。「パソコンを覚えたい」と思ったときはパソコン販売員の仕事に就いていたそうです。

 

「50代、60代になったときにトレンドを追いかけるのは大変そうだし、パソコンが使えないと商売がやっていけないなと思ったんです。そこでお金を払ってパソコン教室に通うのではなく、お金をもらいながら学ぶ道を探してパソコン販売員に。最終的にパソコンを組み立てられるようになったんですけど、私はパソコンを作りたいんじゃなかった! 使いたいんだ! と思い出して、次に移りました(笑)」

 

”ワクワク”を形にする「起業」が自分に合っていた

 

数々の仕事を転々として、どの仕事に対しても「これは私がやらなくてもいい」と感じていた荻野さんですが、現在手掛けている「食」の仕事は「これは私がやらなければ!」という使命感を感じたそう。聞けば、祖父は和菓子店を営み、父は漁業関連の仕事。母はお菓子教室の講師、叔母はスパイスを使った料理教室の講師と「食」にまつわる仕事に携わる家族のもとに育った荻野さん。「食」にかかわる仕事をするのは必然のようにも感じます。

 

「おいしいものには囲まれて育ちましたし、おいしいものをたくさん食べてきたとは思います。“食べ物が作る心の幸せ”を実感してきたのはあるでしょうね。ただ職業として考えたことはなかったんです。高校時代にフランス料理店で見習いのバイトをしたことはあったんですけど、厨房でひたすら玉ねぎを刻むのは私には合ってなかったみたいで(笑)。それよりも“食べることの幸せ”を誰かと分かち合う仕事を私はやりたかった。作るのは得意な方におまかせして、私はそれを売る。根っからの商売人なんです」

 

「次」なる展開を考え、「0を1」にするまでがいちばんワクワクするという荻野さん。「起業家」という働き方が自身にとてもフィットしているようです。

 

「どんどんアイデアがわいてくるので、そこで“ああやったらこうなる!”“こんな人たちが喜んでくれる!と想像を膨らませているとワクワクが止まりません。でも、私がやるのは0から1にするまで。1を100や1000にするのは適した人にまかせていきたいんですよね。最近もフードロスに関する新規事業『♯食べ物を棄てない日本計画』を立ち上げたのですが、その事業については個人でフードロス問題に対して活動していた情熱あふれる若者を会社に招き入れて、責任者になってもらうことにしました」

 



未来の「食」のため!フードロスをなくす新規事業をスタート

 

『#食べ物を棄てない日本計画』ロゴ。大人と子供をイメージしたフォルムを描き、周囲は幸せの象徴をイメージした四つ葉の枠で囲まれています。

 

前述の『#食べ物を棄てない日本計画』は「賞味期限」に関して設けられたルールのため、まだ食べられる商品が多数店頭に並ばず、廃棄されてしまう現状を改善していこうとブラウンシュガーファーストが中心になって立ち上げたプロジェクト。さまざまな企業に賛同や協力を呼び掛けるほか、SNSを通じて情報発信を行い、アイデアも募っています。

 

「まず知っていただきたいのは“賞味期限内は問題なく食べられる”ということ。商品によっては冷凍するなど保存状態を変えることで、賞味期限を過ぎても食べることができます」

 

賞味期限が12カ月の商品は、賞味期限まで8カ月を切ると、メーカーから問屋に納品することができず、賞味期限まで4カ月を切ると問屋からスーパーなどの小売店に納品ができなくなり、廃棄するほかないのが現状です。ですが、こうして流通から外れた商品も食べられないわけではありません。例えば、スイーツや料理に加工して提供することができれば、廃棄せずにすむのです。

 

「こういった動きは、ユーザーの方から小売店などに声を上げていただくと、とても効果があるものなんです。もしこの問題に関心があり、何か行動を起こしたいと思っていただけるなら、よく利用するスーパーに“賞味期限が近い商品でも、少しお得になったら買いますよ”と意見を届けていただくのも一番身近な行動かと思います。ご自身が所属する企業や団体の中で“うちでもこんなことができるのでは?”とご提案いただくのも、ひとつの動きにつながります」

 

 

 

さまざまな経験から、自分がワクワクできる「起業」という働き方にたどりつき「こじらせママ」を卒業したという荻野さん。詳しい半生や『#食べ物を棄てない日本計画』にまつわる想いについて知りたい方は、ぜひ著書『こじらせママ 子育てしながらココナッツオイルで年商7億円』を!

 

荻野みどりさんインタビュー、後編では子育てと仕事の両立について、ママの起業についてのアドバイスをお聞きします。どうぞお楽しみに。

 

 

『こじらせママ 子育てしながらココナッツオイルで年商7億円』

荻野みどり・著  ¥1400 集英社

Amazonでの購入はこちらから

ブラウンシュガーファースト公式サイト

https://bs1stonline.com/

古川はる香 Haruka Furukawa

ライター

1976年、大阪府生まれ。雑誌・Web等でライフスタイル、カルチャー、インタビュー記事を執筆。現在のライフテーマは保活と子どもの学び、地域のネットワークづくり。家族は夫と6歳の娘。

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