【綿矢りささんの頭の中、視線の先】子育て、旅、ファッション…「しなやかに変化を受け入れながら仕事と生活をバランスよく」
2026.10.13
今、知りたい!
綿矢りささんの頭の中、視線の先

デビュー25周年を迎えた作家・綿矢りささん。執筆と子育てを両立しながら、みずみずしい感性とユーモアに満ちた作品を放ち続ける秘密と書き続ける視点の先にある未来を聞きました。連載「ま、さじ加減でしょ。」執筆にまつわるエピソードも。

しなやかに変化を受け入れながら仕事と生活をバランスよく

綿矢りささん
RISA WATAYA
小説家
1984年、京都府生まれ。2001年『インストール』で文藝賞を受賞し、’04年『蹴りたい背中』で芥川賞受賞。’12年『かわいそうだね?』で大江健三郎賞、同年に京都市芸術新人賞、’20年『生のみ生のままで』で島清恋愛文学賞受賞。他の著書に『勝手にふるえてろ』『私をくいとめて』『意識のリボン』『オーラの発表会』『嫌いなら呼ぶなよ』『パッキパキ北京』『激しく煌めく短い命』『グレタ・ニンプ』など。
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4
子育て
小学生のお子さんがいる綿矢さんですが、子育てで悩むことはあまりないそう。理由はママ友と子どものことを話すような機会が少ないおかげで「比べることがないから」かも!?と。 子育てしながら執筆をする苦労もありますが、子どもの存在に助けられています。
「ラブシーンやシリアスなシーンを書いているときに子どもに話しかけられると集中力が途切れます。一人暮らしのときは雰囲気を作りながら書けましたが、今は書いている隣でアニメが流れていたり途中で焼き飯を作ったりも(笑)。集中したい気持ちもありますが、子どもの存在がいい気分転換になっています。執筆中で外出できないとき、子どもが学校から帰ってきて話したりするだけでなごんだり疲れがやわらぐんですよ。学校のことや流行っていること、考えていることを聞くと新鮮な気持ちになります。過去や現在ばかり見ず未来を見て書きたいなあ、と。子どもが大人になった頃、どんな世の中になり何を考えて生きているんだろう。それを想像すると自分の生き方や考え方も変わっていくかもしれないです」
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5
旅
旅好きの綿矢さんは中国や台湾、イタリア、グアムなどさまざまな国や地域を訪れてきました。独身の頃は一人旅が好きでマニアックな場所に行き、予想外のハプニングに巻き込まれたことも。
「日本は個人主義が認められていて一人旅が自然にできるのがいいですね。海外に出て初めて気づきました」
家族ができてからは子どもがやりたいことや行きたい場所から旅先を決めることが増えたそうです。
「魚釣りをしたいと言えば魚釣りができる場所を探したり。子どもがキャンプのアニメにハマって、劇中に出てくる場所に行きたいと言われて訪れたこともあります。聖地巡礼ですね」
旅に出かけるのは気分転換やリフレッシュがメイン。現地で体験できることや楽しめることに集中します。
「書くために旅に行くということはあまりないですね。執筆が目的の場合は別ですが、記録やメモしたりはせず純粋に旅を楽しみます。中国に行く予定があり、今からワクワクしています」

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6
ファッション
エッセイではベージュの服をつい集めてしまうため、ベージュを“宿命色”と書いていた綿矢さん。今回の撮影時にはエッセイの表紙と同じ水玉のトップスとボトム、タートルニットにジレのスタイルに挑戦しました。
「普段あまり着ない透け感のある素材やデザインが素敵でした。気分が変わってテンションが上がります」
最近は古着に凝っていて、お気に入りのデザイナーの古着を着るのが楽しみになっているそうです。
「作品を着る感覚に近いですね。着ることでデザイナーの意思や思いを受け継ぐイメージです。宇野千代さんの着物を着るときも同じです。着てみると“こんなディテールがあったんだ”“こんな感じが好きなんだ”とデザイナーの思いに気づいて感動することも。今日のように撮影で最新の洋服を着させてもらうと洋服の生地が元気なことに驚きます。生地が若い、発色がきれい。袖を通してみると、はっとするほど印象が変わるので感動します」

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7
「ま、さじ加減でしょ。」
LEEの4年間の連載では日々のささやかな出来事やニュースにちなんだエピソードをユーモアたっぷりに綴ってくれました。エッセイを書くことが楽しくなったのはここ数年だそう。
「エッセイは自分の考えに近いことを書くので生々しい内容になることが多いんです。以前は“こんなことを書いて大丈夫かな”“炎上したらどうしよう”と不安になり自意識過剰になっていたと思います。30代後半から40代になり“本音のほうがおもしろがってもらえるかも”と気づいてからは楽しめるようになりました。エッセイは現代のことを書くので現代人が一番楽しめそうですが、意外とその後の時代、10年後20年後に読んだときに小説以上に生々しく当時のことがわかります。フィクションが入っていないものもいいなと最近思うようになりました」
「キティちゃん、リカちゃん人形、プクプクシール、レスリー・チャン、ノストラダムス。同世代ならわかるネタが多いです」と綿矢さんが言うように、同世代に刺さる懐かしのエピソードが多く登場します。仕事や家事が忙しく本を読む時間がない人、読書から離れていた人が久しぶりに読む本として、1日の終わりに1話ずつ読むのもおすすめだと言います。
「旅行について書いた話も地味な体験や旅先のささいなことを書いているので派手な告白や大事は起こりません。読んでいても疲れないので毎日のブレイクタイムのお供に、お茶をしたりおやつを食べながら読んでもらえたらうれしいです。寝る前に10分だけ、1エピソードだけ読むなどもぜひ。本の題名は“コルギ弁当”というエピソードで書いた、大好きなあるものにかけているので、そこにも気づいてくれたらうれしいです」
ON SALE
『ま、さじ加減でしょ。』発売は10/5!
全50話たっぷり収録!

『ま、さじ加減でしょ。』
綿矢りさ著
LEEで連載されていたエッセイ39タイトルに加えて、日経新聞に掲載された11タイトルの計50話を収録。旅、子ども時代、エンタメ、ファッション、メイクなど綿矢さんのユニークな視点と考察に思わず笑ってしまうエピソードがずらり。北京や上海滞在中の話も。
集英社
ま、さじ加減でしょ。
価格¥1760円
サイズ四六判/208ページ
ARCHIVES
綿矢さんと振り返る収録エピソード

「世界の歌姫レディー・ガガがライブ終了後、会場外に出てきてびっくり。雨の中、手を振る姿は忘れられない存在感を放っていました」(「Rain On ガガ」より)

「家の中で不意に現れるアノ毛(陰毛)がプレゼントに混入してしまったら……という空想話でしたが、反響が大きく年賀状に書いてきてくれた人がいました(笑)」(「旅するアノ毛」より)

「イタリアの農業体験ツアーに一人で参加したエピソードではイタリアのおばあちゃんの塩対応に一人旅を反省しました(笑)」(「アグリツーリズモ」より)
Staff Credit
撮影/浜村菜月(LOVABLE) ヘア&メイク/陶山恵実 スタイリスト/船戸 唯 イラストレーション/牛久保雅美
取材・文/武田由紀子
こちらは2026年LEE11月号(10/7発売)「綿矢りささんの頭の中、視線の先」に掲載の記事です。
※商品価格は消費税込みの総額表示(掲載当時)です。
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