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女子高生サーリャの目を通して描く、日本のクルド人難民の現実『マイスモールランド』【川和田恵真監督×嵐莉菜さんインタビュー】

  • 金原由佳

2022.05.11

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住民票もなく、自由に移動することも、働くこともできない。難民申請が驚くほど難しい日本で暮らす移民たちの現実とは。

JR品川駅と言えば東京の玄関口。一日の利用者数が多い駅としては東京では6位、全国では9位というビッグ・ターミナルです。ベイエリアに繋がる港南口から品川埠頭行きの都バスが通っており、9分ほどで東京出入国在留管理局(入管)に到着します。平日、このバス停を通りかかると、様々なルーツを持つ人々が列をなしていて、どこの国から、どういう経緯でこの日本にやってくることになったのか、それぞれの人に歩みを聞いてみたい気持ちになります。ここ数年、入管に収容される人の人権を侵害する報告もされていて、社会的な関心が高まってもいます。

日本は1981年に難民条約に加入し、難民の受け入れがはじまってから30年以上経ちます。先進国において世界でも有数の難民認定が厳しい国として知られています。法務省入国管理局「我が国における難民庇護等の状況」の資料によると、2019年の日本で難民認定申請を行った外国人は10,375人、認定を受けた人は44人で、認定率にすると0.4%といいます。

では、認定されなかった残りの99.6%の人はどのような生活をしているのでしょう。

その知られざる生活は、川和田恵真監督の劇場デビューとなる『マイスモールランド』で詳しく描かれています。去る2月のベルリン国際映画祭のジェネレーション部門に出品され、アムネスティ国際映画賞のスペシャル・メンションとなった今作は、埼玉県を舞台に、在日クルド人の一家を描いたもの。難民申請が不認定となり、数々の障壁とぶつかることになった女子高生サーリャの日常と、同じアルバイトで知り合った聡太との瑞々しい恋を描いた作品です。脚本、監督を手掛けた川和田監督と、サーリャを演じた嵐莉菜さんに話を伺いました。

(右) 監督・脚本/川和田恵真(Emma Kawawada)

1991年生まれ、千葉県出身。イギリス人の父親と日本人の母親を持つ。早稲田大学在学中に制作した映画『circle』が、東京学生映画祭で準グランプリを受賞。2014年に是枝裕和監督、西川美和監督たちが主宰する映像集団「分福」に所属。今作が商業長編映画デビューとなる。2018年の第23回釜山国際映画祭「ASIAN PROJECT MARKET (APM)」で、アルテ国際賞(ARTE International Prize)を受賞。

(左) 嵐 莉菜(Lina Arashi)
2004年生まれ、埼玉県出身。「ミスiD2020」でグランプリ&ViVi賞のW受賞。2020年よりViViで専属モデルとして活躍中。日本とドイツにルーツを持つ母親とイラン、イラク、ロシアのミックスで日本国籍を取得している父親がいる。映画初出演にして初主演となった今作での瑞々しい演技で注目を集めている。

自分と同じ年齢のクルド人の若い女性が、自分の居場所を守るために大きな銃を持っていた驚き。

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  • 『マイスモールランド』が劇場デビュー作となった川和田恵真監督。

──川和田監督が『マイスモールランド』でフォーカスしたクルド人は国を持たない世界最大の民族と言われ、現在はトルコ、イラク、イラン、シリア、アルメニアの5ヵ国に暮らしていると言います。監督がクルド人の人に興味を持ったのは、IS(イスラミックステート)と戦う若い女性兵士の写真を見たからだと伺いましたが、それは2018年制作のフランス映画『バハールの涙』のことですか?

川和田「『バハールの涙』の主人公たちと同じように、若い女性が銃を持って戦っている写真を見たのが、クルド人への関心を持った最初です。『バハールの涙』はイラクでのISによるヤズディ教徒への迫害を題材にしたものでしたが、私が見た写真は、シリアのクルド人防衛のために組織された武装部隊であるクルド人民防衛隊(YPG)のゲリラ組織に入って戦っている女性の写真でした。彼女は自分の居場所を守るために、自分よりも大きな銃を持っていた。自分の年齢と変わらない女性が戦っているという状況に驚きましたし、自分を守ってくれる国がないという状況にも興味を持ちました」

──企画が通るのは大変だったと思います。川和田監督は是枝裕和監督や西川美和監督たちによる映像制作者集団「分福」に所属されていますが、プレゼンを勝ち抜いた企画ですか?

川和田 分福の中で定期的に企画会議があって、そこに提出したんです。そのときは、ドキュメンタリーとフィクションの両方の企画を提出し、実際、日本で暮らしている在留クルド人の人に会いに行って、取材を重ねますとも伝えました。是枝監督に「これは今描くべきだ」と背中を押してもらって、企画を立ち上げたのが2017年になります。

そのとき既に、『東京クルド』(2021)で、日向史有さんが埼玉県、川口に暮らすクルド人のドキュメンタリーの撮影に取り組まれていて、共通の知り合いがいたので、日向監督に会いに行って、お話を伺ったりしました」

──私も昨年、『東京クルド』を見て、今のところ、日本で暮らすクルド人の方で難民申請を認められた人がほぼいないという現実に驚きました。入管の収容を一旦解除される「仮放免許可書」を持つものの非正規滞在者で、住民票もなく、 自由に移動することも、働くこともできないという制限のある生活を強いられている現状が記録されたドキュメンタリーでしたが、『マイスモールランド』も同じ状況が展開します。『東京クルド』は20代の二人の若い青年を被写体として追っていましたが、川和田監督は最初から女子高生を主人公にしようと?

川和田「最初からというよりは、取材をしていく中で、自分が一番共感したのがクルドの少女だったというのが大きかったです。クルドの男性たちは、建物の解体の仕事をしていたり、それが自分の希望とする職種ではないかもしれないけれど、それでも仕事に辿り着いていた。でも、クルドの女性たちは仕事にすら辿り着くことが難しい。どんなに頑張って学校を出ても、未来が見えない。凄く不安の中にいるということが、主人公にした大きな要素でした」

日本で育ってきたのに、外見で日本人として判断されない葛藤。

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  • 初演技、初出演で、ナチュラルな演技を披露した嵐莉菜さん

──嵐莉菜さんはこの映画にどうやって巡り合ったのでしょうか?

嵐「事務所から、こういうオーディションがあると連絡を受けました。元々演技には興味があって、いつかお芝居ができたらいいなと思っていたんです。サーリャの役柄の設定を知ったとき、すごく縁を感じ、『ぜひともやりたいな』とオーディションに挑みました」

──川和田監督が執筆された脚本を読んで、最も深くアクセスできたサーリャの状況は?

嵐「私は日本で育ってきて、日本人と言いたいのに、『日本人です』と言っていいのかわからないと思ってきました。外見から日本人として見てもらえない葛藤が幼少期からあったので、そういう感情が重なって、この役を演じたいと思いました」

──サーリャの親戚役でイラン出身のサヘル・ローズさんが出演されていますが、サヘルさんは私の息子が小学校の時、NHKの「課外授業 ようこそ先輩」の収録で来られて、外見が一般的な日本人と違うことから、中学時代の虐めなどの話をされて、当時消化できない感情を持ちました。おふたりは様々なルーツを持つ日本人ですが、サヘルさんと同じような体験はありましたか?

川和田「そうですね。疎外感や異物感はありましたし、日常的にそれをに気がつく、いろんな言葉に出会いました。例えば『日本語上手ですね』とか『どこから来たんですか』。そういう言葉に触れるたびに、日本で生まれ育ってきても、日本人だと思われないから、こういう質問を受けるんだなと思いますね」

嵐「私も『どこから来たの?』って言われると、日本が母国と思っているのに、そう思ってはいけない感覚になることがありました。今は地毛なんですけど、幼少期から黒髪に憧れていたり周りの子に出来るだけ合わせようとしていました。ただ、今はこの外見だからこそ頼まれる、任せてもらうお仕事があるので、『自分のアイデンティティとして大事にしよう』と思っています」



クルドの女子高生と、莉菜さん。高校生として過ごすうえでは同じ。

サーリャは成績が良く、推薦で大学進学を目指している高校生。

──川和田監督は、はじめクルド人の方をメインキャストに考えていたそうですが、難民申請者の将来の不利益になることを避けて断念されたと伺いました。主役を演じた嵐さんに託すものは大きかったのではないでしょうか?

川和田「莉菜さんには、圧はあまりかけたくなかったです。もちろん置かれている環境や、抱えている苦しさは比べようがないですけど、でも、高校生として学校で起きた出来事や好きなアイドルなど、そういうことは同じで。違うけど同じ、ということを大切にしたいと思っていました。

もちろん、当事者として何を不安に思っていて、日々どういう生活を送っているかに莉菜さんが知ることは大切だと思っていたので、クルドの高校生の女の子とお話をして、打ち解けてもいましたし、その方のお家で食事もしました。莉菜さんが演じる上で引き出しにいれてもらうようなつもりで準備しました」

サーリャの父は、子どもたちを積極的にクルドのコミュニティに参加させている。

──映画の中では、サーリャのお父さんはクルド人としてのカルチャーや因習を非常に大切にしていて、日本で過ごす中で培われた面を持つサーリャとの衝突の一因にもなっていましたが、演じる上で大切にした要素は?

嵐「私がお話を聞いたクルド人の女子高生は、すごく素敵な女の子でした。お家に行ったとき、私も普段から母親の料理を手伝いますが、それとは比べものにならないくらい料理から何から家事を手伝っていて、そこに文化の違いを感じました。お家では彼女のお父さんが楽器を弾いてくれて、みんなで一緒に盛り上がったりして。そういう姿を見て、彼女はクルドの文化と日本の文化の両方、とても上手くバランスを保っているように感じました。きっと、家と学校で使い分けているんだろうなと思います。そこに、新しい発見がありました」

煮込み料理、キョフテ、絶品クルド料理の数々が撮影を飾った理由。

──今、クルド料理のお話が出てきましたが、映画に登場するメニュー全部がおいしそうで、たまりませんでした。

川和田「クルドの方に撮影現場に来ていただいて、全ての料理を作っていただいたんですけど、それは私が取材でお家にお邪魔した時に食べた献立なんです。煮込み料理だったり、スープだったり、本当においしくて。サーリャが聡太の家に行ったときに作るキョフテというスパイスを練り込んだ俵状のハンバーグみたいな料理は、本当においしくて。これらのシーンは、サーリャの一家が日本に長年住んでいてもクルドの食文化を守っているということを表しています。日本の食材を取り入れて作ることで、その融合を表す場面にしたいと考えました」

嵐「撮影に出てきたお料理は本当にすごくおいしかった。なんで、こんなに美味しい料理を知らなかったんだろうと思ったくらい」

川和田「結構、スパイシーなメニューもあるんですけど、莉菜さんの舌にはちょうど良かったのかも。慣れていない人には辛いものもあるかも。煮込みは辛くないですよ」

嵐「この作品の撮影前にお家にお邪魔した時、撮影にはで来なかった献立があって、今でも食べたくなります(笑)。取材では必ずクルド料理の話になるんですけど、その度に、食べたいって思い出してしまいます(笑)」

なぜ、クルド人たちが分断されたのか、当事者でしかわからないこと。

サーリャはコンビニエンスのアルバイトで、店長の甥である聡太(奥平大兼)と親しくなり、 悩みなどを少しづつ、打ち明けるようになる。

──先日、サーリャの友人の聡太役を演じた奥平大兼さんに取材させていただいたとき、聡太はクルド人のことも難民のこともよくわかっていない高校生なので、無駄に予備知識を入れないようにあえて調べずに撮影に入ったと聞きましたが、一方、「莉菜さんはすごく調べていた」と話をされていました。

嵐「もちろん民族の歴史などは調べたんですけど、やっぱり実際にご家族に会ったときに、当事者でしかわからないことを聞き、メモを取らせてもらいました。お話を聞いたとき、しっくりきたのは、なぜ、クルドの人が住んでいた場所が分断されたかというと、豊かな場所だったから奪われてしまった一面もあると。それは私が調べた時には出てこなかったことなので、びっくりしました」

──嵐さんが演じる上で最も苦労した点は?

嵐「語学です。サーリャはクルド語は話せず、トルコ語のみ話せるという設定だったのですが、これまでトルコ語を全く話す機会がなかったので習得が大変でした。ただ、私の父親が高校の3年間、トルコに住んでいたことがあって、トルコ語を話せたんですね。撮影中、空き時間はトルコ語の先生のリスニングをずっと聞いていたんですけど、発音チェックは父にお願いしたので、本番でNGはなかったです」

川和田「それは本当に素晴らしくて、本番中、莉菜さんの間違いで止まるってことは一度もなかった。トルコ語の先生にも現場にずっといてもらったし、莉菜さんのお父さんも先生となり、限られた時間の中で台詞を完璧に覚えてくれてありがたかったです」

家族全員で、オーディションにチャレンジ。家族だからこそ出せた、リアルな感情。

難民申請が却下されたことで、サーリャの家族には数々の試練が。 その様子をじっと見守る聡太。

サーリャの家族を演じるのは、それぞれオーディションを受けて合格した嵐さんのご家族。息の合った会話が展開する。

──川和田監督は、サーリャの家族役のオーディションに、莉菜さんの家族が次々と現れたときに、内心『やった!』って思いませんでしたか? 結果、莉菜さんのお父さんだけでなく、実際の妹さん、弟さんも起用され、家族出演が叶いました。

川和田「莉菜さんが主役に決まった上で、こちらから、ご家族に『サーリャの家族役のオーディションがあります』と声はかけたのですが、正直、本物の家族で物語の家族を演じることはちょっと難しいのかなって思っていたんです。お父様は最初会ったとき、かなり堅めの印象があったのですが、オーディションでサーリャとお父さん役との候補の方たちとの組み合わせの中、莉菜さんのお父さんとの演技で、莉菜さんからかなり引き出されるものがあったので、『もう、これは決まりだな』と思いました。さらにご兄弟のお芝居を観させていただいたら、すごく魅力的だったので、これは家族と一緒にチャレンジしていきたいなとなりました」

嵐「でも、父はオーディションから帰ってきたとき、自信なさげだったんです(笑)。私は、自分でいうのもなんですけど、父と演技した時すごく雰囲気が良くて、これは勝手な勘だけど、合格できそうだと思っていたんです。最終的には妹も弟も役に決まって、家族で映画なんて、こんなの滅多にない機会で、誰もが経験できないことだから喜びました。父も『こんなのハリウッドの大物俳優じゃないとできないことだ』とすごく驚いていましたね」

難民申請が不認定となり在留カードが無効になってしまうサーリャの家族。これにより、数々の制約を受けることになる。

──ご家族全員演技は初めてなのに、素晴らしい表現をされていますよね。特にお父さんは、難民申請が却下されて以降の追い詰められ方がリアルで、サーリャに、聡太と会うなとぶつかり合う場面なんて芝居じゃないぐらいの軋轢が生まれていました。

川和田「そうですね。お父さん、どんどん良くなっていって。映画を観てくれた方も『お父さんが良かった!』と強く言ってくださる方が多くて。お父さんをプロの俳優だと思って見ていたという感想をもらったこともあります」

父を本気にさせた映画出演。

嵐「私が父に対して凄いなって思ったのは、映画に携わる前は、『パパ、ちょっとやせた方がいいんじゃない』って家族が何度言っても一切動かなかったのに、映画のためには頑張って、役柄的にすごく痩せたんです。撮り終わった後でも、ダイエットが続いていて、今は少しスリムになって、健康的にもなって、映画に感謝しています(笑)。こんなに本気になって、凄いなと父を見直しました」

川和田「サーリャ一家のみなさん、それぞれ素敵な演技だから、違う背景の役者さんを起用したと思われんですけど、ラストのクレジットで同じ苗字の人が並ぶことで、あれは家族なんだとわかったときに驚かれるんです」

──弟さんは小さいんですけど、お父さんが入管に収容され、家からいなくなってしまった悲しみとか実にリアルな感情を出していましたよね。

川和田「本当に、徐々に自分のお芝居がわかるようになって、カットかかった後に、『今、間違えちゃった』とか、『今の違った』とか自分で言うようになって、あるときは『NGの理由を教えてくれ』と変わっていきました。本当の家族だからこそ出た感情もすごくあります。父娘の喧嘩の場面もそうだし、入管に収容された父親との面会の場面でも、本当のお父さんが面会室のアクリル板の向こうにいるという状況が、この映画にとっては大きなものだったと思います」

インターナショナルスクールの高校生試写で思わずかかった、「聡太、いけ!」の掛け声

──余談ですが、バイトを通して親しくなった聡太に対して、サーリャが親愛の情でクルド式の挨拶として頬にチークキスをしますが、演じた奥寺さんによると、『サーリャに対しての理解はある。でも、自分が彼女のためにどうした方がいいのかっていう思いで頭がいっぱいいっぱいで、何かリアクションは出せなかったと思う』と話されていて、あの手も足も出ない感じが実に聡太らしくていいなと感じたのですが。監督は現場では、お二人の感性を優先したということですが。

嵐「あのシーンは、一度、川のところで、ハグをするパターンの芝居も一瞬、やってみるっていうサジェスチョンはあったんです」

川和田「私の中では、聡太とサーリャの関係性は、ボーダーラインを越えたいけど、今、越えることができない二人ということなので、それはないなと。『越えたい』という目線と、手のつなぎは考えていたんですけど。でも、自分の中には記憶にないくらい、ハグの可能性はなかったです。

──奥平さんも、あそこでハグは出来ないって言っていました。

嵐「手も足も出せない感じがでてましたね(笑)」

川和田「奥平くんが理解してくれていた聡太らしさがすごく出ていましたね。こないだ、インターナショナルスクールで高校生の試写をした時、私はその場に立ち会ってはいなかったんですけど、そのシーンで、『聡太、いけ!』って掛け声があがっていたそうです(笑)。

──やっぱり(笑)。それ、私の声じゃないですよ(笑)。

嵐「ええ! 高校生試写で? めっちゃ、面白いです(笑)。私もその場に参加したかったな」

──そこで、ガッチリ強烈に抱きしめるキャラクターじゃなかったから、奥平さんを起用されたんですね?

川和田「その通りです(笑)」

この映画で描いているのは、私たちのすぐそばで起きていること。無関心を関心に変える映画になれれば。

──それではラスト、在住移民の状況を知らない観客の方に、この映画を通して伝わればいいなという言葉を頂けますか?

嵐「私もこの作品と出会うまで、クルド人の状況を全然知らなかったし、そういう方も多いと思います。テーマはシリアスですが、完成した作品は青春ドラマの要素もあり、色々な感情になれる作品です。ルーツや性別、年齢に関係なく、ぞれぞれ経験したことがある壁のようなものがこの作品の中に描かれています。ひとりでもたくさんの方に見ていただけると嬉しいです」

川和田「この映画で描いていることは、私たちのすぐそばで起きていること。それをこの映画を通して知っていただけると嬉しいなと思います。現在進行形で、このような状況の人がいるということ。そのことに対して、無関心でいることが、私たちがこういう社会を作ってしまっていると思います。無関心を関心に変えていける映画になったらいいな。一人でも多くの人に見てもらえるように、そして自分事としてとらえてもらえれば嬉しいです。家族や青春の時間を描いていますので、敷居が高いものをと思わず見て欲しいです」

 

マイスモールランド

埼玉県に、2000人ほどのクルド人のコミュニティが存在する。国家を持たない世界最大の民族と呼ばれるクルド人が日本で難民認定された例は今のところないに等しい。埼玉に住む17歳のクルド人サーリャも、難民申請が不認定となったことから在留資格を失い、これまでの当たり前の生活が奪われてしまう。推薦で行けるはずだった大学進学が危うくなり、父は入管の施設に収容されてしまう。彼女が日本に居たいと望むことは“罪”なのか?

脚本・監督:川和田恵真

出演:嵐莉菜、奥平⼤兼、平泉成、藤井隆、池脇千鶴、アラシ・カーフィザデー リリ・カーフィザデー リオン・カーフィザデー、韓英恵、サヘル・ローズほか

2022年製作/114分/G/日本

 

企画:分福 制作プロダクション:AOI Pro. 共同制作:NHK  FILM-IN-EVOLUTION(日仏共同制作)

助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会

製作:「マイスモールランド」製作委員会

配給:バンダイナムコアーツ

 

東京・新宿ピカデリーほか全国ロードショー中

『マイスモールランド』公式サイト

 

©︎2022「マイスモールランド」製作委員会

撮影/菅原有希子

金原由佳 Yuka Kimbara

映画ジャーナリスト

兵庫県神戸市出身。関西学院大学卒業後、一般企業を経て映画業界に。約30年で1000人以上の映画監督や映画俳優のインタビューを実施。映画誌、劇場パンフレット、新聞などで映画評を執筆。著書に『ブロークン・ガール 美しくこわすガールたち』、共著に『伝説の映画美術監督たち×種田陽平』。映画祭の審査員、トークイベントなど講演・司会も多数。

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