実はるいさん、朝ドラには珍しく、母親に対してネガティブな感情を持っていたり、少し内向きな性格です。
「みんなに愛される、上手に笑えるヒロインではないところがとても新鮮です。幼い頃の体験から屈折したところがあって、成熟している部分と欠落している部分が共存していて、脚本家の藤本（有紀）さんが描くヒロイン像は、とても重層的。それを表現するのは難しいですけれど、魅力的なキャラクターだと感じています」
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るいの姿と自分自身が重なるところもあるようです。
「岡山育ちのるいは、自分らしく自由に生きたくて、18歳で故郷を飛び出して大阪に行きますが、私もずっと『自分がいる場所はここじゃない』と漠然とですが感じていたんですね。それで10代で東京へ出てきたので、るいの気持ちがわかる気がします。
また、この作品では音楽がひとつのテーマになっていて、るいの人生にとって音楽はとても大きな影響を与えるものなんです。実は私の父もジャズがすごく好きで、いつかの誕生日に『真夏の夜のジャズ』という、50年代のジャズフェスティバルを収録したドキュメンタリー映画のレーザーディスクをプレゼントしてくれたことがありました。
往年のアーティストたちの名演が収められている素敵な映画なんです。「絵里」という名前をつけてくれたのも父ですが、それもるいと同じ。偶然ですけれど、脚本を読み進めるうちに、役柄との共通点に驚いています」
本作品は、意外にも深津さんにとって初めての朝ドラ。「15分という放送時間とか、撮影のリズムとか、まったく初めてで戸惑いもあります」と言いますが、刺激の多い時間を過ごしているようです。
「スタッフのみなさんは朝ドラのプロ。朝ドラをずっと守って支え続けていて、女性の人生を描くということにずっとこだわって作り続けている。本当にかっこいいですよね。
また、それを受け取る視聴者の皆さんも成熟していて、朝ドラでは作る側と観る側に、ある種の共犯関係みたいなものが成立している。そこが舞台のようだなと思います。
たとえば舞台では、私が『15歳の少女』と言えば、観客はそう思って観てくださる。歌舞伎も年齢や性別に関係なく、役を演じますよね。それは舞台ならではですし、大きな嘘を大胆につくことができる。嘘とわかっていて、お客さんはそれを楽しむ。
朝ドラにもそういう魅力がありますよね。それは朝ドラという『型』があって、そしてその型がとても素敵で、心に響くものだから、105回も続いているのだと思います」
貧しいながらも勢いがあった昭和30年代。当時の暮らしぶりが緻密に再現されているのもこのドラマの見どころのひとつです。
「お台所ひとつとっても、器、ざる、手ぬぐいと細かいところまで丁寧に時代を再現していて、『わあ、かわいい！』『素敵！』と思うものがたくさん。食卓に出てくるお料理もすごく考えられていて、スイカの皮の白い部分で作ったお漬物だったり、時代や季節を感じるものばかりで、いちいちうれしくなります（笑）。まさに昭和の中で暮らしている感じで、その空間にいられることがすごく幸せです」
ノスタルジックな空気に包まれて、深津さんは、今まさにるいの人生を生きています。
「ドラマは過去のことを描いていますが、その15分、登場人物は今を生きているし、15分の中に、彼らの一生のうちの一瞬が映し出されています。もし毎朝の15分を楽しみにしてくださるならば、『よし！ また明日！』と思ってもらえる何かになっていたらいいなと思います」
これは毎朝が楽しみになりそうです！ さて、これから季節は秋へ。実りの時期を迎えます。自分の居場所を探していた10代を経て充実の時を過ごす今、深津さんが感じている人生の実りとは？
「今この年齢で、朝ドラのヒロインを任されるなんて想像もしていなかったことですが、これまで私がかかわってきた作品やたくさんの大切な方たちとの出会いーーそういうものすべてが積み重なったからこそ、今その役割を私に、と言っていただけているんだと思います。これまでのことすべてに導かれて、今この役と出会えていると感じています」
『カムカムエヴリバディ』
和菓子屋の娘・安子（上白石萌音）、その娘で岡山から大阪へと羽ばたくるい（深津絵里）、令和を生きるひなた（川栄李奈）。戦前・戦後、現在と、ラジオ英語講座と共に歩んだ三人のヒロインが紡ぐ100年のファミリーストーリー。るいに影響を与える謎の男、ジョー役にオダギリジョーが決定するなど、個性あふれるキャストも楽しみのひとつ。（11月1日〜放映、NHK総合月～土曜 8:00～8:15）
女優
深津絵里さん／Eri Fukatsu
ふかつ・えり●1973年、大分県生まれ。1988年に映画デビュー。以降、数多くの映画やドラマ、舞台に出演。2010年、映画『悪人』で第34回モントリオール世界映画祭最優秀女優賞、第34回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。 2021年度後期のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」に2代目ヒロイン役・るいとして出演。
深津絵里さんが表紙の「LEE DAYS vol.2」好評発売中！
LEEとともに歩んできた世代。LEE+αを求めている、お姉さん世代に向けて発信している「LEE DAYS」。
これからは“ほんとうに好きなものと心ときめく時間”を大切に気持ちよくいられるモノやコトに囲まれ、時間や空間に身を置き、自分との向き合い方や暮らしを考えていきます。
２号めとなる秋冬号のテーマは「自分をもてなし、機嫌よく暮らす」。
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【深津絵里さんインタビュー】「今懐かしいときを生きています」【LEE DAYS】
撮影／守本勝英 ヘア／NORI TAKABAYASHI（YARD） メイク／UDA（mekashi project） スタイリスト／白山春久 取材・原文／佐藤裕美
※商品価格は消費税込みの総額表示（2021年10/20発売LEE DAYS VOL.2現在）です。
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