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折田千鶴子

中川大志さん「“俺の前だけで見せてくれる顔”に、やっぱり弱い」と映画『ジョゼと虎と魚たち』を語る

  • 折田千鶴子

2020.12.18

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ニュートラルな部分で演じた等身大な役

美少年時代から注目していた方も多いでしょうが、いつしか年上女性の胸を焦がす、こんな美青年に! 特に19年のドラマ「G線上のあなたと私」では、ファンの年齢層をかなり上の方までググ~っと広げた印象です。今回は、アニメーション映画『ジョゼと虎と魚たち』で、今をときめく中川大志さんにご登場いただきました。

最後にはLEE読者を意識していただき、年上の女性についても語っていただいたので、是非、お楽しみに!!

実は私、『ジョゼと虎と魚たち』というと実写版 (03)がとても好きだったので、「え!?アニメ―ションを作る必要ある!? あれを超えるとかないから!」なんて最初は思っていたんです。だから正直、観るのが怖かった。でもそんな心配、杞憂に終わりました!!

中川大志さん

中川大志
1998年6月14日、東京都出身。09年、俳優デビュー。映画『半次郎』(10)で映画初出演。ドラマ「家政婦のミタ」(11)の一家の長男役で注目を集める。近年は『きょうのキラ君』(17)、『ReLIFEリライフ』(17)、『虹色デイズ』(18)、『覚悟はいいかそこの女子。』(18)など、多数の映画で主演を務める。声の出演作に『ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』(15)の他、日本語吹き替えを務めた『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』(17)、『ソニック・ザ・ムービー』(20)がある。『砕け散るところを見せてあげる』(21)、『犬部!』(21)が公開待機中。NHK正月時代劇「ライジング若冲 天才 かく覚醒せり」が2021年1月2日に放映予定。

本作はまた違う世界観やテイストになっていて、どこか優しく心がフワっと広がっていく感じ。実写版のちょっと胸を抉るようなリアルも良かったですが、こちらもアニメーションにしか表現し得ないこともちゃんと追及されていて、とってもステキ。

ジョゼ役の清川果耶さんと共にW主演を務められた中川さんは、既に何度かアフレコを経験されてきましたが、『ジョゼ虎』で演じた恒夫くんは、これまで以上に難しかったと語ります。

──何度か声のお仕事をされてきたので、あまり苦労はされませんでしたか。

「これまでは、洋画の吹き替えやキャラクターものなど、作り込んだ役をやらせていただくことが多かったです。でも今回の恒夫は、自分に近い等身大の役柄なので、自分の中では初めての経験という意識で、自分に出来るかな、と不安な思いもありました。ただ、作品の世界観やストーリーにとても惹かれたので、是非やりたい、と。また、ジョゼを清原果耶さんが演じられると聞いて、それもすごく楽しみでした。監督は、芝居をしている僕ではなく、こういうインタビューに答えている僕の声を聞いて恒夫役にオファーして下さったそうなんです。監督が思い描いている恒夫をそこに感じた、と。それを聞いて、すごく嬉しかったです」

──普段のお芝居とは、また全く違う筋肉を使う感覚ですか。

「まったく違うものですね。もちろん、演技ですから感情が乗ってこないと何も出来ないので、感情の作り方までは同じなんです。でも、感情が乗っていても、それが声や音に乗っていかないと意味がない。例えば、マイクの前でメチャクチャ涙が流れていても、声として乗らないと表現として成り立たない。だからといって頑張って声だけで作ろうとしても、何も伝わらない。等身大なだけに、恒夫という役は、これまでで一番、心の部分を大切にしないと出来ないけれど、それだけでも伝わらない、という葛藤を感じましたし、すごく繊細なお芝居を求められたな、と思いました」

いろんなバランスを要した表現力

アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』

『ジョゼと虎と魚たち』
©2020 Seiko Tanabe/ KADOKAWA/ Josee Project
2020年/日本/1時間38分/配給:松竹/KADOKAWA
監督:タムラコータロー 原作:田辺聖子「ジョゼと虎と魚たち」(角川文庫刊)
出演:中川大志、清原果耶、宮本侑芽、興津和幸、Lynn、松寺千恵美、盛山晋太郎(見取り図)、リリー(見取り図)
12月 25日(金)全国ロードショー

『ジョゼと虎と魚たち』はこんな映画

大学で海洋生物学を専攻する恒夫は、ある日、いきなり坂道から転げ落ちて来た車椅子に乗ったジョゼを助けます。幼い頃から車椅子で生活してきたジョゼは、祖母と2人暮らしで、ほとんど外出をしたことがありませんでした。祖母のチヅは恒夫に、ジョゼの注文を聞いて相手をする、というバイトの話を持ち掛けます。何となく引き受けた恒夫は、口の悪いジョゼとぶつかり合いながらも、彼女を外の世界に連れ出すのですが。

──実際に演じる際に気を付けたこと、意識されたことは何でしょう?

ジョゼとの関係値や力関係です。ジョゼはすごく強くて奔放なキャラクターで、恒夫はジョゼに振り回されますが、そうかと思うとやり返したりもする。やられ、やり返し、という2人のパワーバランスをすごく大事にしましたし、そこは監督ともかなり話しました。同時に監督からは、人間っぽい生々しさ、リアリアティも欲しいけれど、アニメ的な表現も欲しい、と言われたんです。そのバランスも、本作はとても難しかったです。リアルとアニメ的な世界、そのどちらも存在している世界観なので、色んなバランスを、やりながら探り、監督と話して探り、という感じで作っていきました」

──恒夫君は優しく好ましい男子で、とても魅力的です。中川さんが感じた恒夫君の魅力はどこでしょう?

「メキシコにしか生息しない幻の魚の群れを見るという夢を叶えるため、日々すごく努力しているんですよね。とても強い意志を持って、夢に向かっている。大学生の若さで、そんな強い意志で進むというのは、カッコいいなぁ、と思いました」

2人の関係性が変わるシーンが肝だった

── “ジョゼと出会って、それまで見ていた景色もカラフルになった”と中川さんがコメントされていましたが、どんな風に変わったのでしょう。

「ジョゼには、車椅子なので一人では行けない場所があり、ゆえに一人では見られない景色がありますよね。最初、恒夫は“お世話係の管理人”という立ち位置でジョゼと接していますが、段々と恒夫もジョゼと一緒だからそれまで気づけなかったことに気付けたり、いつも見ている景色がまた違う景色に見えたりしてくる――いつもより世界がカラフルに見える経験をするわけです。ジョゼと一緒だから築ける世界がある、ということに気付く。そんな2人の関係性が素敵だな、と思いました」

アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』場面写真

── 観ていてグッと来たシーンや箇所はたくさんありましたが、演じていてグッと来たところや、演じながら“これが肝だな”と感じたのはどんなところでしたか。

「今の話と重なりますが、やっぱり初めて2人で外出する――海が見たいというジョゼの夢を、恒夫が叶えてあげるシーンですね。それまでジョゼは家の中で好き勝手を言ったり好き放題やったりしていて、恒夫はジョゼの尻に敷かれている状態というか、常にマウントを取られていました。でも初めて外に出る瞬間、ジョゼはとても不安で怖くて、初めて自分の内側の部分を恒夫に見せ、話すんです。それによって2人の距離感がグッと縮まり、2人の関係性が転換するシーンとして、非常に肝に感じました。演じながら自分の中でも、スイッチが変わった瞬間でした」

── もちろんジョゼの中でも、恒夫に対する気持ちや考えが変わりましたよね。

「隣に恒夫が立った瞬間、周りの見方などもすごく変わったと思います。恒夫が引っ張っていってくれることに安心感を覚え、恒夫に頼り甲斐のある男らしさなども感じたからだと思います」



身体的に接触するシーンの難しさ

── 観ていても楽しいのが、やっぱり恒夫とジョゼの掛け合いの妙です。清川果耶さんとは、どのようにアフレコされたのでしょう?

「ずっと一緒に(アフレコを)していました。ジョゼという役は、先ほどお話した“ナチュラルな演技とアニメっぽい表現”のバランスを成立させるのが、恒夫よりさらに難しい役だったと思います。清原さんは以前からストイックな俳優さんという印象がありましたが、今回も本当に、それこそ千本ノックくらいの勢いでストイックに追及されていました。朝から晩まで2人でブースに入って、納得いくまでやり続けるという感じでした」

── 2人で演じていて楽しかったシーン、または最も大変だったシーンを教えてください。

「恒夫がジョゼと出会ったばかりの頃、ジョゼにとんでもない指令を出されて、すごく振り回されていたシーンの数々は、一緒にやっていて面白かったです(笑)。難しかったのは、ジョゼと恒夫が画の中で接触しているシーンです。例えば恒夫がジョゼを抱きかかえて動いているシーンなどは、呼吸をどう合わせるかが難しくて。普段のお芝居であれば物理的に一緒に動いているので自然と呼吸が生まれますが、横に立って声を出しているだけなので、一緒に動いているようにどう笑いや息遣いを入れるか、2人の息を合わせて演じるのが非常に難しかったです」

  • 中川大志さん

  • 中川大志さん

  • 中川大志さん

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── 何か面白失敗談はありましたか?

「初めて声のお仕事をした頃は、マイクとの距離感が分からず、つい感情を込めるとマイクから遠く離れていて声が入らない、という失敗は数知れずありました。さすがに今回は、そういう初歩的な失敗はありませんでした。ただ面白かったのが、海の中のシーンを演じる際、スタジオの中で、実際にシュノーケルを付けて声や音を発して録ったことですね。またモグモグするのも、実写なら本当に食べながら喋ればいいのですが、音でそれを出すとなると難しいんです。改めて声優の方々の技術ってすごいなぁ、と尊敬しました」

ジョゼに対してギャップ萌え

──観ていて絵に“うわ~っ”と感嘆するシーンも多々ありました。中川さんが映像的に、好きなおススメのシーンを教えてください。

「ジョゼの夢の中の幻想的なシーンは、やっぱりアニメーションならではの映像の力だと思いました。ジョゼの感性だからこそ、こういう夢の世界になるんだな、と納得させられて。アニメーターさんたちの細かい絵の表現、色の付け方など、本当にきれいで感動しました」

──中川さん自身は、恒夫がジョゼに惹かれた理由、ジョゼを好きになる気持ちに共感できましたか!?

「できますね。ジョゼのように普段、周りにバリアを張っているような女の子であればあるほど、その人のパーソナルな部分や、弱い部分が一瞬でも見えてしまうと、もうグッと来てしまう(笑)。気になっちゃうし、もっと知りたいと思ってしまう。ジョゼに対して“あ、こんな子供みたいに素直に笑えるんだ”とか、辛いときに涙を出して泣く姿とか、自分の前で泣いてくれたとか、弱いところを見せてくれたとか……。 “俺の前だけで見せてくれる顔”みたいなものに、やっぱり弱いです」

アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』ジョゼの家の台所

実写版ともイメージがかなり重なる、ジョゼの家の台所は、どこかほっこりする懐かしいような空間。家の中では、恒夫は完全にジョゼに頭が上がらず、やりこめられてしまう、そんな2人の様子が面白くてクスクス笑ってしまいます!

──同時に恒夫は、天然というか“鈍感!?”みたいなところもあったりしますが……。

「2人で出かけた先で、ジョゼが急に機嫌が悪くなって、“帰る!”と言い出すシーンがありますよね。あれはもう恒夫と一緒で、そういう時って男はどうすればいいんだろう、分からないなぁ、と僕も思います。本当に放っておかれるのも嫌だろうし、追いかけても“本当にもういい!”みたいなことになるだろうし。男にとって女の子のそういう裏腹な言動は、永遠の課題だと思います。恒夫に、そこも共感しましたね(笑)」

中川さんにとって年上の女性って!?

──LEE読者は30代~40代の女性が中心ですが、年上の女性に対して中川さんはどんなことを感じていますか?

「話をしていても、年上の女性は経験値が違うので、10言わなくても分かってくれることが多く、すごく安心感がありますね。例えばちょっとした悩みというか、相談事を話してみても、全部言わなくても分かってくれたり、自分の経験をさりげなく言ってくれたりする方は、すごく素敵だなと思いますし、やっぱり安心できます」

──年上の女性には、“こうあって欲しい”という理想ってありますか?

「ん? そんなボンヤリした聞き方じゃ答えにくいですよ、もっと具体的に(笑)! つまり恋愛対象としての関係性で、ということを聞きたい!?」

──ハイ、恐れ入ります、その通りです(笑)。

「恋愛関係になったとしたら、恒夫がジョゼのギャップに惹かれたように、僕もギャップに惹かれると思います。年上の女性が甘えてくれたり……完璧じゃない方がいい。ちょっとユルい部分を見たいですね」

  • 中川大志さん

  • 中川大志さん

  • 中川大志さん

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──最後に、今年は“おうち時間”がとても増えたと思いますが、どんなことをしていますか? ドラムにバイオリンにギターやサックスなど、中川さんが演奏できる楽器も多いですよね!?

「家では、ギターをよく弾いています。小さな頃からずっとギターを弾いていて、昔から大好きなゆずさんの曲を弾くことが多いかな。僕はすごく趣味が多いので、よく道具の手入れもしています。ゴルフのクラブを磨いたり、釣りの道具の手入れをしたりしていますね」

多趣味な中川さんは、長いおうち時間も充実している様子ですね。写真撮影に入ると、カメラマンとカメラ談義に花を咲かせていました。

中川さんは、「世界中がこんな状況になっている今だからこそ、せめて映画を観ている間だけでも色んなことを忘れて欲しい」と語ります。「この『ジョゼと虎と魚たち』は、独自の世界観が出来上がっている作品。現実世界との境界線を越え、あったかくて優しい色に染まったこの作品の世界に浸って、観ている時間はホッとしてもらいたいです。皆さんが優しい気持ちになれる時間になったらいいな、と思ってます」とメッセージを残してくれました。

アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』は、12月25日(金)より全国公開。なんとクリスマスロードショーですね。是非、劇場で2人の“個性のぶつかり合いと心の繋がり”を感じて、温かな気持ちになってください! 素敵なクリスマスを!!

アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』

  • 2020年/日本/1時間38分/配給:松竹/KADOKAWA
  • 監督:タムラコータロー 原作:田辺聖子「ジョゼと虎と魚たち」(角川文庫刊)
  • 出演:中川大志、清原果耶、宮本侑芽、興津和幸、Lynn、松寺千恵美、盛山晋太郎(見取り図)、リリー(見取り図)
  • 12月25日(金)全国ロードショー
  • アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』公式サイト

撮影/平郡政宏 ヘア&メイク/池上豪(NICOLASHKA) スタイリスト/山本隆司

折田千鶴子 Chizuko Orita

映画ライター/映画評論家

LEE本誌でCULTURE NAVIの映画コーナー、人物インタビューを担当。Webでは「カルチャーナビアネックス」としてディープな映画人へのインタビューや対談、おススメ偏愛映画を発信中。他に雑誌、週刊誌、新聞、映画パンフレット、映画サイトなどで、作品レビューやインタビュー記事も執筆。夫、能天気な双子の息子たち(’08年生まれ)、2匹の黒猫(兄妹)と暮らす。

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