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川村エミコさんインタビュー「暗いけど前向きに生きてきた、私のストーリーです」

2020.11.18

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初のエッセイ集を発表した、芸人の川村さん。「短いコラムを書いた経験はありましたが、一冊にまとめるほどの量の文章を書いたのは、これが初めて」とのことですが、きっかけは小説家の石田衣良さんのひと言だったそう。

川村エミコさん
「暗いけど前向きに生きてきた、私のストーリーです」

「“こじらせ女子”をキーワードに紫式部の作品を読み解く番組でご一緒したんです。そこで今までもテレビで披露していた幼少期の体験を話したら、石田さんが『川村さん、おもしろいよ』『本にしたら』とおっしゃってくださって。本当か?と。私は根がまじめなので収録が終わった後、先ほどの発言が番組用のリップサービスではないか、確認に行ったんです。勇気がいりましたね。『あの、石田さん、私、川村と申します……』『うん。知ってる』と、人気作家からすれば完全に挙動不審な女(笑)。それでも背中を押してくださり、これも何かのご縁&タイミングかなと、思いきって書くことに」

無口な自分を幼稚園の先生が扱いにくいと捉えているのに気づいた瞬間、同世代のいとこに触発され“世の中には意見をはっきり言う人がいる”と感じた体験など、エッセイには川村さんが心にためてきた思いの丈が詰まっています。

「もともと私、“思い出で生きている”部分があって。数少ない過去の楽しかった経験をちまちまと大切にしながら、40歳の今まで時間を重ねてきたんですね。暗いでしょう(笑)。でもそれが悪いとは思わないです。ただ握りしめていたすべてを、書いて一度手放したら、ぱんぱんだった心に空き容量ができてスッキリ。これから先の体験も楽しんでいけそうです」

エッセイの中で大きな存在感を醸し出しているのがご両親。

「母は本当に前向きな人。大学を卒業したのちには芸人になると報告した際も『おとなしかったエミちゃんに目標ができた!』と大喜びしてくれました。本人もやりたいことにまっしぐら。趣味でエジプトの絵を描き、個展も開いているんですよ。でもエジプトに行ったことはないんです(笑)。公務員だった父は、私が30歳になるまで、自分と同じ職種である公務員試験の、応募要項を送り続けてくれました。『まだ間に合うから』という手紙とともに(笑)。角度は違えど両親の愛には感謝です」

30歳で『めちゃイケ!』に出演し、ブレイクを果たした川村さん。40代の今、こんな気持ちだそう。

「『明日どこ行きたい?』と聞かれたら『嫁に行きたい!』と即答しますし、そのうえでより心が自由になってもいます。風呂なしアパートに住んで夢を追うも、生活に必死だった20代。芸人として前のめりに働きつつ『孤独死はイヤ』と悶々とした夜もあった30代を過ぎて。39と40。9と0の違いでしょうか(笑)。よっしゃ、またゼロからいくぜええ!と新たな底力がふつふつと湧いてきていて」

自宅の棚には約70体のこけしがあり、趣味の充実ぶりも有名。最近は、こんなおうち生活も満喫中とか。

「自家製ジンジャーエールと、ネットでポチッた機械で作ったポップコーンをお供に映画を観てます。着ているのはジェラート ピケのもこもこルームウェア。これ、20代の子に話すと『見せる用ですか?』と聞かれるんですが……違うから!肌触り重視。食も趣味も着るものも、“自分が居心地よく”。そんな日日も味わえるのが、40代の醍醐味かなと思います」

PROFILE

かわむら・えみこ●1979年神奈川県生まれ。お笑いコンビ「たんぽぽ」のボケ担当。主な出演番組に『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)など。ブログ「川村エミコのカエルが寄ってきます…。」のほか、YouTube「おかっぱちゃんねる」も好評配信中。

『わたしもかわいく生まれたかったな』

自宅の階段を初めて一人で上れるようになった3歳の日から、無口でおとなしかった小・中学生時代、浪人時代に感じたことなど、自身の記憶の中から紡ぎ出されたストーリーが詰まったエッセイ。鋭い視点と、そしてどこかほっこりする世界観が魅力の一冊。「テレビでは見せていない、音楽でいえばAメロ、Bメロの自分を表現しました」¥1200/集英社


撮影/名和真紀子 取材・文/石井絵里

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